日本公認会計士協会は、2013年11月8日付で会員の懲戒処分を公表しました。
処分を受けたのは、監査法人ウイングパートナーズ(平成21年9月16日解散)と2名の公認会計士です。
処分内容は、監査法人が会則によって会員に与えられた権利の停止2か月、会計士が同じく6カ月と4カ月となっています。
「創薬系バイオベンチャーとして名古屋証券取引所セントレックスに上場していた会社・・・の平成19年11月中間期及び平成20年5月期の監査」について、「監査意見を形成するに足る基礎を得られなかったにもかかわらず、 監査意見を表明した」と指摘されています。
「会社は、 平成16年4月に開発中の癌治療薬の30%持分権利及び一部地域販売権を、株主である韓国A社に300百万円で売却していたが、平成19年9月27 日に同権利を総額608百万円で買い戻す譲渡契約を締結した。 そして、当該契約に基づき、平成19年9月に330百万円、平成20年1月に140百万円を支払い、平成20年6月13 日には残額の138百万円を支払って、同日に当該権利は移転した。 会社は、当該権利の取得日である平成20年6月13 日より前の支払分について、平成19年11月中間期末及び平成20年5月期末において前渡金として計上した。 さらに、支払総額608百万円を平成21年5月期の第1四半期において特別損失として計上する旨を平成20年5月期末の後発事象として開示した。 関係会員は、譲渡契約書による支払対価の資産計上及び開示後発事象とすることを容認していた。」
このような状況で、監査人は「会計処理が取引実態を反映したものか否か検討するために必要な情報や事実関係資料を入手し、 具体的に検討・ 吟味した監査調書を作成しておらず、 会社の会計処理の妥当性についての検討が不十分であった」とされています。
「3億円で権利の売却→6億円で買い戻し契約締結→代金支払い・前渡金計上→支払い完了→支払い総額6億円を特別損失」というのは、たしかにわけのわからない取引(相手側に資金を提供しているだけの取引?)です。ベテランの会計士のようですから、あやしい取引だということは当然気付いていたはずですが、どうして見逃してしまったのでしょうか。
そのほか、審査体制の不十分さや規律調査会の調査への非協力が指摘されています。
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