会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日医工、債務免除985億円 私的整理成立、ファンド傘下へ(時事より)

日医工、債務免除985億円 私的整理成立、ファンド傘下へ

経営再建中の日医工(東証プライムですが来年上場廃止予定)の事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)が成立したという記事。

「取引金融機関15社から最大で985億円の債務免除を受ける。併せて、来年3月にも200億円の第三者割当増資を実施し、投資ファンド傘下で再建を図る。」

「28日に開催した債権者会議で、債務免除などを盛り込んだ事業再生計画が承認された。」

社長は責任を取って退任です。

会社のプレスリリース。

事業再生 ADR 手続における事業再生計画案の決議のための債権者会議の開催並びに事業再生 ADR 手続の成立及び債務免除等の金融支援に関するお知らせ (日医工)(PDFファイル)

「(1)経営が困難になった原因

当社は、2021 年3月に富山県より、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく業務停止処分を受けました。また、業務停止処分を受けた富山第一工場において、製造する全製品について、厳しい品質評価等を行いながら、順次、生産・出荷を再開してはおりますが、同工場ではいまだ一部の製造予定品目については出荷再開には至っておりません。また、2020 年12 月、小林化工株式会社(以下「小林化工」といいます。)における生産・出荷停止の影響により、当社の連結子会社であるエルメッド株式会社(以下「エルメッド」といいます。)が同社に製造委託していた製品の販売が中止となりました。その結果、富山第一工場及び小林化工における品質問題に起因して当社の売上高が減少しております。また、毎年実施される薬価引き下げにより、収益構造の悪化が発生しております。

さらに、2022 年3月期において、北米事業にて投資を継続してきた、バイオシミラー(バイオ医薬品の後続品)、オーファンドラッグ製剤(希少疾病治療薬)の開発計画全体を見直したことに起因して、北米事業における投資に伴い計上していたのれん、バイオシミラー・オーファンドラッグ製剤等の開発に係る無形資産を中心に 84,130 百万円の減損損失を 2022 年3月期連結決算において計上することとなり、104,984 百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失を計上した結果、親会社所有者帰属持分比率は 2021 年3月期の 30.6%から 2022 年3月期は 5.1%まで低下いたしました。その結果、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在するとして、2022 年3月期の当社の連結財務諸表及び財務諸表の注記において、「継続企業の前提に関する注記」を記載することとなりました。また、2022 年 11 月8日付「減損損失の計上に関するお知らせ」、2022 年 11 月 14 日付「(開示事項の経過)減損損失の計上に関するお知らせ」及び 2022 年 11 月 14 日付「第 59 期第2四半期報告書」にて公表のとおり、Sagent グループは、2022 年3月期及び 2023 年3月期第1四半期において継続して営業損失を計上していることや(2022 年3月期は 38,998 百万円、2023 年3月期第1四半期は1,805 百万円の営業損失)、今後の米国市場における事業展開を踏まえて、国際会計基準(IFRS)に基づき減損テストを実施した結果、当社は、2023 年3月期第2四半期連結決算において、Sagent グループに係るのれんを含む固定資産についての減損損失を計上し、親会社の所有者に帰属する四半期損失54,817 百万円を計上した結果、35,626 百万円の債務超過となりました。

当社は、このような厳しい経営状況及び財務体質を踏まえ、今後の再成長に向けた強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的な改善を目指すため、本事業再生 ADR 手続を利用するに至りました。」

会社のプレスリリースでは、2021年以降の経緯しか書かれていませんが、当然、それ以前の経営にも、破綻の原因はあるのでしょう。

“ジェネリック医薬品大手”が債務超過356億円で「上場廃止」に。崩壊の背景にあったもの(SPA)

この記事によると、「日医工は厚生労働省に翻弄され続けた会社」なのだそうです。

1990年ごろから業績が低迷し、新薬開発から撤退、後発医薬品事業へ進出したそうです。厚生労働省の後発医薬品推進の波に乗って急拡大しますが、そこに無理が生じたようです。

「日医工大躍進のきっかけとなった「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」において、厚生労働省は後発医薬品のメーカーに対し、2015年度中に品切れ品目をゼロにすることを求めました。

これが日医工の不適正な製造に繋がります。日医工の不正を調査した報告書によると、2014年から2016年にかけて生産数量・生産品目数が急増。これに対応できる人員、設備が整っておらず、製造部、品質管理部のいずれもひっ迫した製造スケジュール、試験スケジュールの中で業務に追われていたとあります。」

「厚生労働省が後発医薬品の品切れ品目をゼロにしろと言っている以上、無理をしてでも供給を続けなければなりません。品質管理や製造体制が崩壊していたことは、管理職や一部の役員も把握していたといいます。日医工は期待に応えるべく、暴走していました。」

さらに、薬価の改定(これは会社の上記リリースでもふれています)で、粗利率が大幅に下落します。

会社は、「エルメッドエーザイ」という会社の買収や、米国での工場取得など、拡大路線で乗り切ろうとしました。

そういう状況の中で、品質問題が発生し、問題点が一挙に表面化してしまったということのようです。

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