青樹句会

主宰:高橋信之(花冠名誉主宰)

第8回句会入賞発表

2012-03-17 09:14:46 | 日記
◆入賞発表/2012年3月18日◆

【最優秀/2句】
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒と早桜の取り合わせがさっぱりとして清々しい。季節に先駆けた「早桜」でありが。さりげなく風雅を楽しむ心意気が好もしい。(高橋正子)

★棲めるもの皆が現れ水温む/高橋秀之
水温むころ。池や川を覗くと、棲んでいるものたちがみんな現れてくる。水に深く潜っていたものたちが、水面に浮いて、春が来たぞと喜んでいる。鯉だの、鮒だの、亀だのと。生きものたちの喜びは、とりもなおさず人間たちの喜びにもなる。「棲めるもの皆が現れ」は堂々としている。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★校門のつぼみ艶めく桜芽木/桑本栄太郎
桜芽木に「校門」を配して、句に物語性がある。卒業式を控え、そして新入生を迎える準備も進んでいるであろう学校。別れと希望が入り混じって校門の桜芽木は蕾をつややかに膨らませつつある。(高橋正子)

★水温む鍬先光るまで洗う/古田敬二
冷たい冬の水と違い、春になり水も温かく、時間をかけてゆっくり洗うことができるようになりました。鍬の先が光るまで丹念に洗う様子に、これから耕すであろう畑への思い入れを感じます。(高橋秀之)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

★日の庭に鳥の集まりクロッカス/小口泰與
「クロッカス」という言葉の音の響きがこの句を生きいきとさせている。うららかな日差しに地にはクロッカスと小鳥が遊ぶ。明るく穏やかな光景を見る。(高橋正子)

★古木より幹を貫く芽吹きかな/河野啓一
「幹を貫く芽吹き」が、力強く、芽吹きの色の優しさが視覚的によい。古木がその歳月を貫き、己自身の幹を貫く力強さを感じる。(高橋正子)

【黒谷光子特選/5句】
★スキップができて春から幼稚園/小西 宏
四月からは幼稚園、スキップもできるようになりました。幼子の嬉しさいっぱいの様子がかわいいです。(黒谷光子)

★雛飾る年に一度の客のごと/小川和子
雛飾りは、3月の節句の時期だけですが、年に一度の客という例えが、この時期を待ち侘び、雛を飾る楽しみの気持ちの表れなのでしょう。(高橋秀之)

★今宵より淡く灯され雛の間に/藤田洋子
雛飾りのぼんぼりが灯されたのでしょう。ほのかな明かりにお雛様が浮かび春の夜が華やぎます。 (黒谷光子)

★鉄塔を気高く浮かせ春三日月/藤田裕子
三日月に高々と浮く鉄塔が絵のようで春の夜ならではの情景と思います。 (黒谷光子)

★受験子や社の絵馬の太き文字/佃 康水
絵馬の太き文字に充分に頑張ってきた自信を感じます。合格されたことでしょう。 (黒谷光子)

【祝 恵子特選/5句】
★梅東風や往来誰も優しくて/藤田裕子
春の風や梅の開くのをみれば道行く人たちは自然と優しい気持ちになれるのでしょうね。(祝 恵子)

★山影に残雪ありて夕焼けに/迫田和代
雪残る山影、そこに夕焼けがさしてきている。綺麗な春寒むの夕景です。 (祝恵子)

★触れてみるものの芽いまだ尖りおり/井上治代
いとおしくあふれくる芽を、自然を見ておられます。 (祝恵子)

★喜びの姿して地に蕗の薹/高橋信之
「 喜びの姿して」いる「蕗の薹」であり、作者の見つけた喜びでもあるのでしょう。また春を見つけた喜びでしょうか。 (祝恵子)

★スキップができて春から幼稚園/小西 宏 
お子さんの姿が浮かんできます。周囲の人を巻き込む喜びですね。 (祝恵子)
 
【迫田和代特選/5句】
★幼子の吹き出す虹色シャボン玉/祝恵子
幼いお子様が吹かれたシャボン玉ですもの。屹度喜ばれて歓声をおあげになったでしょう。それにシャボン玉の虹色は春らしい淡い虹色です。楽しい春の感じです。(迫田和代)

★晴れていて風吹き風の光る丘/高橋信之
丘を拭く風ってとても美しい風だと思います。おまけに晴れでしょう。風で光る丘 素敵でしょうね。 (迫田和代)

★受験子や社の絵馬の太き文字/佃 康水
願いが大きかったのでしょう。希望の学校に合格されたと思いますよ。あまりのお喜びに絵馬のことお忘れかも知れませんね。 (迫田和代)
子供のために何度絵馬を掲げたことでしょう。受験子の必勝の思いが太き文字に表れていることをうまくとらえています。(古田敬二)

★放射線科の窓の囀り吾がものに/川名ますみ
些か緊張なさっていらっしゃる放射線科の人と窓辺で吾がもの顔で囀っている小鳥との対比 素晴らしいドラマを見ているような気分になりました。 (迫田和代)

★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒と早桜の取り合わせがさっぱりとして清々しい。季節に先駆けた「早桜」でありが。さりげなく風雅を楽しむ心意気が好もしい。(高橋正子)

【佃 康水特選/5句】
★日の当たる庭にものの芽確かめる/黒谷光子
ぽかぽかとした陽気に庭先の草の芽や木の芽が萌え出でて来ました。春の息吹を感じつつものの芽を嬉々として確かめていらっしゃる作者のお姿が目に浮かびます。(佃 康水)

★歌いつつ通る土手道春よ来い/迫田和代
美しい長い川土手を通るとあちこちから春の息吹を感じられる様になりました。嬉しくてついつい歌いたくなりますね。春よ来いです。 (佃 康水)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿を切り取り手に持っても華瓶に活けても葉も花びらも活き活きとし「ちから」を感じます。その辺りが一段と引き締まります。 (佃 康水)

★スキップができて春から幼稚園/小西 宏
お孫さんがこの春からご入園でしょうか。おめでとうございます。スキップが上手に出来るようになれば一先ずは安心。温かく見守っていらっしゃるご家族の不安と嬉しさ緊張感が伝わって参ります。 (佃 康水)

★玄関を開けて吾が家の梅の香に/川名ますみ
玄関を開ければ開花した梅の明るさと香りが仄かに漂って来ます。穏やかな春の日差しを受け吾が家の梅の花で有れば尚のこと嬉しさと幸せが身に沁みて参ります。読み手もそのお零れを頂きました。 (佃 康水)

【井上治代特選/5句】
★歌いつつ通る土手道春よ来い/迫田和代
「春よ来い、早く来い」と歌いながら歩く土手道。その道端にはたんぽぽやすみれ。その他小さくかわいい花がたくさん咲いているのでしょう。春が来るのを待ちわびていた作者の心情がよく伝わってきます。(井上治代)

★ものの芽を音なく濡らす夜の雨/黒谷光子
春の雨は音もなくしっとりと降り続きます。降り注ぐ雨に少しずつほぐれていくものの芽。あと少しで花も咲くのでしょう。楽しみです。(井上治代)

★活けられしままに芽吹いて桃の花/藤田洋子
姿もすっきりと活けられた桃の花の芽吹き。ほんのりと紅い桃の花色は心を和ませてくれます。(井上治代)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の一枝を切り花瓶に活けよく見ると、その椿からあふれる生命力を感じとることができた作者。語調からも力強さが伝わってきます。(井上治代)

★梅白し母とおしゃべり遠き日へ/藤田裕子
長閑な春の一日。穢れない梅の白色に心が癒されます。お母様とおしゃべりをしているうちに、遠い日の思い出の中へ引き込まれ、懐かしさが胸にしみます。(井上治代) ★ものの芽を音なく濡らす夜の雨/黒谷光子

【小西 宏特選/5句】
★梢よりゆらめき出ずる春の雲/多田有花
やわらかな雲が、木々を越えてゆっくりと流れて来る。しばらくは枝々の間に見え隠れする時もあるのかもしれない。その枝先には木の芽や花芽が膨らんできているに違いない。雲はゆっくりと、少しずつ形を変えながら現れ、木々を離れ空に浮かぶ。「ゆらめき出ずる」とはそのような情景であろうと思う。地にあるものと空のものとの響き合いを感じさせる、大らかな春の句です。(小西 宏)

★一椀の花麩のひらく春の日に/藤田洋子
お祝いのお膳でしょうか。お椀の蓋をあけると桃色や薄緑色などの可憐な形と色が花開く。まことによい春の日和です。 (小西 宏)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
厚く重い花をきっぱりと支え続ける枝の力を称えておられるのだと思いますが、「一枝にあるちから」の措辞は艶やかな椿の葉の張り具合や、むろん花の力強い明るさをも表現しています。 (小西 宏)

★京菜摘む畦の十字の日のぬくみ/小口泰與
「畦の十字」の表現が絵画的であり、「京菜」の響きとあいまって暖かで伸びやかな春の風景を伝えてくれています。 (小西 宏)

★枯れしものまず伏してから葦芽ぐむ/古田敬二
昨年の枯れ葦がまだ残るそばに新しい葦の芽が顔を覗かせ始めたのでしょう。「まず伏してから」の表現が決して否定的にではなく、新しい希望に繋がるものとして芽ぐみを支えてくれています。 (小西 宏)

【古田敬二特選/5句】
★抱くごとに重くなる子よたんぽぽ黄/今村征一
お孫さんでしょうか。タンポポの咲く野原で空高くだきあげる。この前抱きあげたときより重くなっている。新しい後に対する喜びを感じました。(古田敬二)

★三月の丘よ晴れの陽をぞんぶんに/高橋信之
よく晴れた3月の日の吟行でしょうか。丘を上りり切るとそこには穏やかな春の風と温かな春の日差し。きっといい句に会えたことでしょう。(古田敬二)

★食卓の色とりどりに春めきぬ/井上治代
食卓に載せるものも菜の緑も色鮮やかに、そのほかも彩りどりに揃えられ春めく食卓となった。(高橋正子)

★近づいて離れて日永美術展/藤田裕子
日も永くなって、仕事や家事をするにも余裕ができるようになった。美術館では近づいてよく見たり、離れて鑑賞したり、ゆっくりと楽しめる。これも日が永くなればこそ。(高橋正子)

★遥かには純白の嶺々猫やなぎ/今村征一
遠くには雪嶺が見え、こちらには猫柳が芽吹く。早春の景色がうれしい。(高橋正子)

【津本けい特選/5句】
★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
切り取られてから別の輝きを見せる小枝の花。白く根を出して新しく命を宿す木もあり、細い枝に潜む生命力の不思議さが、素晴らしく感じました。(津本けい)

★淡雪に水の重みよ雪を掻く/小川和子
淡雪はずっしりと水っぽく重みがあります。春の到来に重みもまた嬉しく雪掻きに勤しまれたことでしょう。 (津本けい)

★山並みの軽み帯びつつ遠霞/藤田裕子
山に霞がかかるとふんわりと浮いているように見えます。「軽み帯びつつ」と表現されて、春霞は軽みであると感じ入りました。 (津本けい)

★喜びの姿して地に蕗の薹/高橋信之
凍土の中に小さな芽や蕾を育んできた蕗の薹。今春となり地上に生まれ、日を浴びて喜びそのものの姿を見せます。 (津本けい)

★抱くごとに重くなる子よたんぽぽ黄/今村征一
久しぶりにお孫さんを抱くとずっしりと重くなっています。嬉しくて愛しくて、たんぽぽの道を行ったり来たりするお姿を思い浮かべています。 (津本けい)

【川名ますみ特選/5句】
★祝膳の大皿すすぐ春の水/藤田洋子
大皿をたっぷりの水で洗う快さ。それが祝いの膳であり、さらに春の水であれば、さぞ明るい厨房となったことでしょう。皆の幸福な顔を映した皿を、軽やかな水音にすすぐ、その眩い一時が記念の日に刻まれました。(川名ますみ)

★古木より幹を貫く芽吹きかな/河野啓一
枯れたように見える古木、その幹から直接に春の芽が吹き出している。「幹を貫く」に老木の力強さが感じられます。 (小西 宏)

★スートピー活け婚約の君ら待つ/高橋信之
色も形も、それに香りも優美なスイートピーに託して若い婚約者の来訪を待たれる作者のお気持ちがあふれた御句かと思いました。 (河野啓一)

★肥料袋土に置かれて春の畑/祝恵子
暖くなって園芸の準備にかかる時期です。肥料袋が土の上に置かれていて、まず土づくりから、畑仕事の始まりです。きっと素晴らしい花が咲くでしょう。それとも美味しい新鮮野菜かもしれませんね。 (河野啓一)
畑に詰まれた肥料袋は、正にこれから肥料をこれから撒くためなのでしょう。いよいよ春の作付けの季節到来で気持ちが弾みます。(高橋秀之)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

【入選/5句】
★谷からの風梅が香を運ぶ/多田有花
谷から吹き上げる風は、爽やかな気持ちにさせてくれる涼風です。この季節は、その風に梅の香りも一緒に運んできて爽やかさも一層引き立つことでしょう。(高橋秀之)

★雲去れば真っ先に陽を金盞花/津本けい
春は空模様がはっきりしない日が続きます。それでも日差しが戻ればそれを受けるように金盞花の花が輝きます。あの色も太陽らしい色です。(多田有花)
陽光を反射して耀く金盞花の鮮やかな色が目に浮かびます。 (河野啓一)

★赤土を押し上げ青々下萌ゆる/井上治代
春はやさしいだけでなく、力強さ、躍動感、生命力にも満ちています。押し上げる草の力にそれがあります。(多田有花)

★春月や桧の匂ふ露天風呂/今村征一
ヒノキの露天風呂にゆったりつかっておられます。見上げればほどよい春の月、心地よいぬくもりとヒノキの香りと月、至福ですね。(多田有花)

★瀬の音へ紅のまんさく咲き満ちる/佃 康水
黄色いまんさくが満開になりました。春、まず咲くからマンサクと聞いたことがあります。海の音も春の音に変わっているのでしょう。絵になりそうです。(多田有花)

※下の<コメント欄>には、<コメント>と<お礼>以外はご遠慮ください。<コメント>と<お礼>以外は削除されます。