① 諏訪神社 ー5 太田健次郎様著
第四話 善蔵の弁当
当時の事とて、山野で立木を切倒し、其の場で墨付け製材する時代なのである。善蔵は朝家を出て、現場に着くと持参していった昼の弁当をそばの杉の枝にひょいと高い所に投げてやり、枝に引っ掛けて置くのであった。その高さは地上20尺も30尺もあった。(高い所に掛けることは、野犬、野猫から防ぐため)そして仕事をしていたと言う。
昼食時になると、弁当の方を向き手招きをすると腰を下ろしている善蔵の膝元に落ちてきたと言う。 こう話しをする人もいます。
第五話 善蔵独特の斧使い
善蔵がある建築工事で職人として働いている頃、大きな建設のため、材料が所せましと積んであることもあった。その合間で職人達と並んで木材を手斧で削るのである。隣の大工も同じ仕事をするため、斧屑が善蔵の仕事をしているところに故意か自然か飛んできて迷惑すること度々でした。
再三、再四注意しても改めずにいるので善蔵も相手がその気ならばと意地を出し、斧屑を隣の方に飛ばし始めた。すると、その斧屑は隣の大工の斧先に、からみ付き、払っても払っても、後から後から飛んできて、斧にからみ付くので、彼らは仕事も出来ず悲鳴をあげ閉口したという。
善蔵の斧の使い方は、誰にも真似の出来ない独特の技があったと言われている。