① 諏訪神社 ー6 太田健次郎様著
第六話 善蔵行燈製作
ある時、殿様より行燈製作の依頼を受けましたが、名人気質なうえ丁寧なので、なかなか製作が捗らず、出来上がらない内に、殿様より催促がきてしまいました。催促がきたときは、行燈の四角の立木のうち、3本は出来ていたが、残りの一本はこれからのときであった。
催促が来て急いで作ったせいか、精魂が籠められてなく雑なのか、出来上がった行燈に火を灯しても、3本の角木の影がでなかったが急いで作った一本の角木は影が映ったという。それまでは善蔵行燈として世間に知られ有名で、善蔵の作った行燈は火を灯しても、全く影が出ないと言われていた。
第七話 桁に晒布を巻き長くする
善蔵棟梁となり所々神社造営に当たっている時、日もよく、建前の当日の事であった。作業も進み、組木をしてみると大事な処の桁が何者かによって短く切り離されていたので、善蔵は町より、晒布の反物を二反を買い求めさせ、それを短くなっている桁に巻付けた。両端の晒布を縒りをかけ、多数で引くのによい位に長くした。上棟式の当日の事だから賄の手伝いに多数女の人達が集まって居た。女の人達の手伝いを受け、桁をのばす為に縒りを掛けた晒布の両端で持ってもらい、それ引けとかけ声をかけ、音頭を取り、何回となく引っ張ってもらい長く使用したと言う逸話あります、いかに佐藤善蔵が名人であったかということが伺える。
第八話 金槌で梁を叩き長くする。
次のような話も伝えられている。建前の当日、柱も立て順調に作業も進み、梁組作業へと移った。とある一本の梁がどうした事か、短くて使用出来なくなっていた。
善蔵は、それでは長くしてやるからと言って、金槌で長くなれ、長くなれととなえ幾回となく梁の先端をとんとん叩いたところ、今度は叩き過ぎたので、長くなった分を切り直して使用したと言う。