ハシちゃんの詩(うた)日記!

山郷の散策つれずれを
ペットのハシちゃんとつぶやきます。

母の背なで

2012年07月21日 20時58分06秒 | 日記 


 遠い昔の母との思い出が、ムクゲの花の咲く時期が来る度に思い出す。私が小学生になる前の年齢だったと記憶する。目を患って母の背に負われ隣町の病院えと向かっていた。山を越え谷を下り川を渡り随分長い時間背負われていた気がする。やがて母の「さあ着いたよ」の声を母の背中で夢うつつ聞いていた。ほんわかと温もりの伝う母の背中に負われると、いつもまどろんでいた。「さあ目を開けてムクゲの花が咲いてるよ」と、また母の声がする。「ムクゲ?」と頬を母の背から放し花を探すが見えない。いくら目を凝らしても見えないのだ。母は黙ってしまい歩き出した。それからは、しばらく医者通いが続いた。はっきり視力が戻った時はもうムクゲの花の時期は終わっていた。
 小学4年生の時、母は当時の医学では死を待つしかない病に取り付かれた。いつどや母が私を背負い医者通いしてくれた路を、今度は私が母に付き添うことになった。
 目的地に近づくと満開のムクゲの生け垣の民家が現れた。母は独り言のように「ムクゲの花が」とつぶやいた。
その時やっとムクゲの花と呼び名が一致したのだ。
 薄桃色の和紙の造花のようなムクゲの花が、ぽかりぽかり咲き始めた。
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