紙を作る工程に、「ちり取り」というものがあります。和紙は靱皮繊維という木の皮が原料で、その皮は大きく分けて一番外側の木肌部分の黒皮、その下にある緑色の甘皮(なぜ皮とも)、芯に一番近い白皮の三層になっています。
木と言っても、株で育てて毎年収穫されるので、枝かな。春芽吹き冬前の収穫までに三メートルほど伸びます。
多くは、黒皮甘皮を剥いだ白皮を乾燥させたものを買い付けます。でもやっぱり自然のものなので、硬い筋や変色した繊維などがあり、黒皮や甘皮が残ってたりします。
煮熟し柔らかくした後に、それらを除く「ちり取り」を行います。水の中で楮を一本ずつとり、根元の方からたぐり寄せながら表、裏とチェック。
全工程の中で一番時間がかかるし、品質にかかわる重要な仕事です。
でもね、ずっとしてると集中力が途切れることがあるのです。
そんな時、
ふうっと手を止めた水面に映った空が綺麗で。
思わず外に出て写真を撮る
秋の空は一番すき。
澄んだ青い空に真っ白なふわふわ雲が浮かび、少し橙がかった陽があたり、キラキラと輝いて。
時間が経ち、陽が沈みかけて夜が降りてくるのもいい。昼と夜の交替の時間、誰そ彼時。
君の名はでは「かたわれ時」と表現してましたね。
ふと見入ってしまい、時が止まる一瞬。
自然の美しさを感じられる、
この季節が大好きです。
美濃に来て、四季の移ろい美しさを感じながら仕事が出来ることが、とても心を満たしてくれる幸せなことだと知りました。
この大きな流れのなか、自分はとても小さな存在であることを感じるけれど、でもまたその大きな流れの一つなのだとしみじみ思いながら、またちり取りをするのでした。