岐阜県美濃市は岐阜の真ん中にあり、ハートの形をしています。
東西南は関市で包まれ、北は郡上市。
寒い所でしょ?とか、雪が沢山降るんでしょ?と言われますが、雪国ではありません。
シーズンに数回がっつり降るのでスタッドレス履かなきゃいけないけれど、すぐ雪がとけるのでタイヤが悪くなってしまう、中途半端な所です。
でも雪が降ると明るいので、ちり取りには最適。
ちり取りとは、和紙の原料である木の皮(靱皮繊維)をアルカリで煮て柔らくした後、樹皮の黒い皮や硬い変色した繊維を手作業で取り除くことです。
美濃では流水の中で行いますが、産地によっては溜まり水の中で行ったり、そもそも水の中ではなくテーブルの上で行う「おかより」など方法は様々。
この違いは紙の質感に大きく関わってきます。
話は戻りますが、流水の中で一本ずつ表と裏、たぐり寄せながら全体を目と指先でチェックします。
和紙作りの仕事とか、和紙職人というと、紙を漉いている写真を良く見ると思います。やはり紙を漉いている時は格好良いし華やかなので、そこを撮りたいという撮影希望の方が多いし、私もやはり撮ってほしいなと思います。
撮ってほしいと思いつつも、誰もいないところで集中して漉きたいとも思うのですが。。
で、あれが主な仕事ではないのです。
紙の善し悪しを決める重要な工程ではあるけれども、主な仕事は「ちり取り」なのです。
全工程半分以上の時間を費やしています。
勿論、時間をかけすぎては生産性が落ちるので「早く綺麗に」が大事です。
それで撮影希望の方に、ちり取り作業を撮ってはどうかと聞いたことがありましたが、あっさりやんわりお断りされました。地味すぎるらしいです。ダメかー。
見習いの時、大正生まれの師匠とその娘さん(と言っても60過ぎ)からちり取りの仕方を教わりました。
二人の指は冷たい水の中でも止まることなく良く動き、次々と仕上げていきます。
そんな二人の技を腕にしたいと、
動きや目線などをよく観察したものです。
今では、私のちり取りが手本と言っていただけるほどになりました。
昔は見て学べ、見て盗めなどと言って教えてくれなかったものだと良く聞く話。
それを今は一から十まで教える傾向にありますね。
しかし、力のいれ具合、スピード、タイミング等々言葉で伝えるのが難しいこともあります。
そこはやはり「見て学ぶ」ことが大事だと思っています。
そしてちり取りに欠かせない大切なもの、
それは「太陽」です。
晴れた日と曇りの日では見えるものが全く違うので、品質に影響します。
照明は水面で反射したり明かりの色で見にくく目がとても疲れます。
(今度偏光レンズ試してみようかな?)
よどんだ空の雨の日なんて、仕事を休みにしたいくらい。
でも雪の日はとても明るくて、ちり取りには最適なのです。そんな日に家に居るのは勿体ないと、慣れない雪道を頑張って仕事場に通います。
案の定誰も居らず、一人貸し切り状態。
こんな日はとても気分が良いのです。
何故って?ラジオを大音量で聞けるから♪
広い部屋に響くラジオは、下を向いて淡々とする仕事を少し明るくしてくれます。
地味な作業を飽きずに続けて出来るのも、
“コツ”がいるのです。