桑原名誉顧問からの投稿
リアルとバーチャル (2014年6月5日)
出版大手のKADOKAWA(角川)と動画サービス「ニコニコ動画」のドワンゴが10月に統合すると発表された。角川が出版社を立ち上げたのが1945年、対してドワンゴの創業は97年であるから、実に半世紀の差がある。ネットに迎合しなければ経営が難しい実店舗の悩みを改めて感じさせる出来事であった。
インターネットで安い商品を探す消費者が増えて、実店舗はショールーミング化する。かかる傾向に抗しきれず店頭にスマホを置いてネットで検索をさせ、その場でネット販売を自店に誘導する家電量販店が出てきた時と同じ感慨を与える。
リアルの対義語は少し前までバーチャル(仮想)であった。現世には存在しない天上の世界であり、そこで動き回るのはアバター(化身)であった。しかしリアルに対するのは、いつしかネット世界になりつつある。実店舗を最初に凌駕したのはネット証券であった。それが銀行や不動産店舗など、あらゆる商売に飛び火した。表と裏とが逆転してしまった感がある。
ネットで知り合った仲間が実際に顔を合わせるのをオフ会という。ネットでゴルフゲームを対戦する仲間が集まる「オフゴルフコンペ」まである。若者の用語だと思っていたら、会話の中で「オフ会」が出てくるテレビドラマを見た。ネットに馴染んでいない老人には難しい時代になってきたようだ。