桑原名誉顧問からの投稿
今年は仮想通貨元年? (2016年6月28日)
NTTデータの岩本社長も講演で話しておられたが、今年はVR(バーチャルリアリティ・仮想現実)元年だという人が多い。VRとはコンピューターにより合成した映像や音響などを用いて、仮想的な世界を現実のように感じさせる技術である。
VRには頭部に装着してすっぽりと視界を覆う「ヘッドマウントディスプレイ」を利用することが多い。VRを紹介するテレビ番組で、床の上に居るのに100m以上の高さに渡された幅50センチもない一本橋の上に立っているように錯覚させ、怖くて1歩も踏み出せない様子を面白おかしく紹介していた。
韓国サムスン電子が昨年末に最新型スマホを発売したのを記念して、東京大手町の商業施設「KITTE」の1階で5月からギャラクシースタジオをオープンさせ、同じく昨年末に発売したヘッドマウントディスプレイ「GearVR」を装着してVRを体験できるイベントを催し人気を呼んだ。
会場では上下左右に動き背中も振動する椅子に座らせ、シートベルトを締めさせてジェットコースターに乗るVRを体験させた。相当な現実感であったらしい。またサーフィンボードの体験もあったという。
VR端末についてはサムスンのほか米グーグルも5月に「デイドリーム」と名付けたVR向けのプラットフォーム(開発基盤)を発表した。また米マイクロソフトは6月1日、自社で開発した端末のプラットフォームを公開し、インテルやデルなど半導体大手やパソコン大手など10社以上と提携すると発表した。VR端末は20年までに8000万台以上普及するといわれる。 VRを活用するとゲームも格段と面白くなるようだ。運転席の前にVRの画面を映し、模擬ハンドルの操作と連動させると、実際にカーレースに参加している実感が得られるとのことだ。
ところで、同じバーチャルでも筆者は仮想通貨の方により高い関心を持っている。VRは60年代後半から開発が始まっているが、仮想通貨はたかだか7年の歴史しかない。仮想通貨にも数百種類あるそうだが、有名なのがビットコインである。仮想通貨時価総額の9割がビットコインだ。
円やドルが国によって価値が保証されているのに対して、仮想通貨は利用者が信用することで価値が保証される。価値の変動を主導するのも利用者である。11年には1ビットコインが1ドルだったが現在は450ドルにまで値上がりした。
米国ではビットコインで売り手と買い手が直接取引できる市場も始まっており、手数料が安いことで人気がある。ドイツにはビットコインで寄付を受け付けるNGOがあり、またスイスの地方自治体が住民登録の支払いに仮想通貨を使える実験を始めたという報道があるが、日本での仮想通貨の流通は欧米より大きく遅れている。
しかし日本政府もようやく仮想通貨を公的な決済手段の一つとして位置付けるよう法規制案の審議をするという。フィンテックが注目されている中で、遅きに失しないよう願いたい。一方で、仮想通貨はテロの資金源に利用され易い面もあるので注意が肝要である。
注「バーチャル」の日本語は「仮想」であり、「現実には存在しない」の意味が強いが、英語では「実際上の」というニュアンスで用いられるという。事実、仮想通貨はこれで買物ができるから実際上の通貨だ。本件に関しては筆者が2年前にバーチャルを「リアル」の対義語という表現をしたところ、信澤健夫先輩からご注意を頂いたことがあった。