桑原名誉顧問からの投稿
経営危機に喘ぐシャープの現状を憂慮する (2015年7月13日)
今年の株主総会の集中日は6月26日で、3月期決算上場企業の約4割、1000社が総会を開いた。政府や東証による企業統治(コーポレートガバナンス)強化の方針を受け、稼ぐ力や株主還元を巡る質疑が活発だったようだ。決算取締役会から株主総会まで、企業の役職員はリハーサルを含めて総会の準備に多忙な時間を過ごしたことであろう。
グランドプリンスホテル高輪で開催したNTTの株主総会には過去最高の6000人近い株主が集まったが、急激に伸びた理由を「新中期経営計画の発表に加え、増配・自己株取得といった株主還元策が評価された」と説明している。冒頭、鵜浦社長は「グローバルを成長の柱とし、併せて国内の競争力も強化して持続的に成長させる」と述べたという。
円安に伴う景気浮揚を背景に好調な決算報告を行った企業が多い中で、構造不況に悩む数社の家電メーカーが苦しい決算を余儀なくされた。中でも経営再建中のシャープは、6月23日に開いた株主総会を過去最長の3時間余をかけ乗り切った。同日、経済産業省はシャープが産業競争力強化法に基づき申請した「事業再編計画」を認定したと発表した。
シャープの経営危機については6月の経済紙はもとより一般紙、週刊朝日などにも取り上げられた。特に文芸春秋には2カ月連続して舞台裏が詳述され、大凡の経過を承知していた筆者も初めて知る内容が多かった。
特に、創業者の早川徳次氏が関東大震災により工場と妻子を失い、シャープペンシルの特許を大阪の文具店に売却した関係から、大阪で早川金属工業を立ち上げた。それ以降、佐伯、辻社長と代わり、液晶テレビの全盛時代を築いた町田社長に至る迄の話は興味深かった。
筆者は2000年代に入って毎年秋に開催されるシーテックジャパンを見学するのを例としていた。シーテックジャパンというのは通信機械工業会が主催するコミュニケーション東京と電子機械工業会が主催するエレクトロニクスショーを統合したもので、千葉の幕張メッセで開催された。通信機器だけの展示よりもテレビをはじめとする家電機器の複合展示会の方が身近で楽しかったのである。
シャープの亀山第1工場
03年のシーテックジャパンでは、04年のアテネオリンピックのハイビジョン映像が見られるというので液晶テレビが爆発的な人気を呼んでいた。この特需を制覇したのがシャープの45型テレビであった。
シャープが亀山第一工場を着工したのは02年、稼働を開始したのが04年1月である。同工場は世界初の液晶テレビ一貫生産工場として識者の注目を集めていた。筆者は知人を通して亀山第一工場の見学を依頼した。しかし審査のためと称して、しばらく待たされた。大仰なことだと思ったが、知人は「小泉首相も視察したぐらいなので」と言い訳をしていた。
シャープは06年に亀山第二工場を竣工し、09年には堺工場を建設、稼働させた。ところが、液晶テレビの世界市場は韓国サムスン電子やLG電子、さらには中国メーカーに奪われ、シャープの液晶工場は閑古鳥が鳴く状態になってしまった。
シャープ亀山工場は、今ではアイフォン用小型ディスプレイの専用工場に変わっている。今年に入って出荷は好調だという。しかし往年の活力は見当たらない。筆者は、各種技術の最先端を歩んできたシャープが順調に再建を果たすよう、切に期待している。