経営危機に喘ぐシャープの現状を憂慮する(2015年7月13日)

2015年07月13日 | 随筆

桑原名誉顧問からの投稿

経営危機に喘ぐシャープの現状を憂慮する (2015年7月13日)

 
 今年の株主総会の集中日は6月26日で、3月期決算上場企業の約4割、1000社が総会を開いた。政府や東証による企業統治(コーポレートガバナンス)強化の方針を受け、稼ぐ力や株主還元を巡る質疑が活発だったようだ。決算取締役会から株主総会まで、企業の役職員はリハーサルを含めて総会の準備に多忙な時間を過ごしたことであろう。

 
 グランドプリンスホテル高輪で開催したNTTの株主総会には過去最高の6000人近い株主が集まったが、急激に伸びた理由を「新中期経営計画の発表に加え、増配・自己株取得といった株主還元策が評価された」と説明している。冒頭、鵜浦社長は「グローバルを成長の柱とし、併せて国内の競争力も強化して持続的に成長させる」と述べたという。

 
 円安に伴う景気浮揚を背景に好調な決算報告を行った企業が多い中で、構造不況に悩む数社の家電メーカーが苦しい決算を余儀なくされた。中でも経営再建中のシャープは、6月23日に開いた株主総会を過去最長の3時間余をかけ乗り切った。同日、経済産業省はシャープが産業競争力強化法に基づき申請した「事業再編計画」を認定したと発表した。

 
 シャープの経営危機については6月の経済紙はもとより一般紙、週刊朝日などにも取り上げられた。特に文芸春秋には2カ月連続して舞台裏が詳述され、大凡の経過を承知していた筆者も初めて知る内容が多かった。

 
 特に、創業者の早川徳次氏が関東大震災により工場と妻子を失い、シャープペンシルの特許を大阪の文具店に売却した関係から、大阪で早川金属工業を立ち上げた。それ以降、佐伯、辻社長と代わり、液晶テレビの全盛時代を築いた町田社長に至る迄の話は興味深かった。

 
 筆者は2000年代に入って毎年秋に開催されるシーテックジャパンを見学するのを例としていた。シーテックジャパンというのは通信機械工業会が主催するコミュニケーション東京と電子機械工業会が主催するエレクトロニクスショーを統合したもので、千葉の幕張メッセで開催された。通信機器だけの展示よりもテレビをはじめとする家電機器の複合展示会の方が身近で楽しかったのである。
SHARP_KAMEYAMA_Plant_No1_jpeg シャープの亀山第1工場

 
 03年のシーテックジャパンでは、04年のアテネオリンピックのハイビジョン映像が見られるというので液晶テレビが爆発的な人気を呼んでいた。この特需を制覇したのがシャープの45型テレビであった。

 
 シャープが亀山第一工場を着工したのは02年、稼働を開始したのが04年1月である。同工場は世界初の液晶テレビ一貫生産工場として識者の注目を集めていた。筆者は知人を通して亀山第一工場の見学を依頼した。しかし審査のためと称して、しばらく待たされた。大仰なことだと思ったが、知人は「小泉首相も視察したぐらいなので」と言い訳をしていた。

 
 シャープは06年に亀山第二工場を竣工し、09年には堺工場を建設、稼働させた。ところが、液晶テレビの世界市場は韓国サムスン電子やLG電子、さらには中国メーカーに奪われ、シャープの液晶工場は閑古鳥が鳴く状態になってしまった。

 
 シャープ亀山工場は、今ではアイフォン用小型ディスプレイの専用工場に変わっている。今年に入って出荷は好調だという。しかし往年の活力は見当たらない。筆者は、各種技術の最先端を歩んできたシャープが順調に再建を果たすよう、切に期待している。

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台湾第一の企業、鴻海精密工業(2015年7月13日)

2015年07月13日 | 随筆

桑原名誉顧問からの投稿

台湾第一の企業、鴻海精密工業 (2015年7月13日)

 
 サムスン電子が韓国を代表する企業であるように、台湾を代表するのは鴻海精密工業である。鴻海は05年に台湾中油を抜いて台湾第1の企業となり、その後9年間続けて台湾で最高の売上高を誇っている。

 
 フォーチュン・グローバル500(2014年)によると世界第1はウォルマート・ストアーズで売上高は58兆円である。トヨタが9位で31兆円、サムスンが13位で25兆円、鴻海が32位で16兆円とある。NTTが53位で13兆円だから、鴻海の大きさが知れよう。

 
 鴻海はEMS(電子機器の受託生産サービス)の会社で自社ブランドの製品を持たないから、日本の一般消費者には名前を知られていなかった。ところがシャープの経営危機に際し、出資を行うとか堺工場を買収するなどの報道があって、話題にされるようになった。

 
 その鴻海が、今度はロボット事業に乗り出すという。EMSとはいえ、鴻海は研究開発も熱心である。ソフトバンクのヒト型ロボット、ペッパーの改良と年内に1万台規模の量産を行う。

 
 ヒト型ロボットの次は産業用ロボットだ。鴻海は、14年のピーク時には中国で150万人の作業員を雇用していた。しかし最近の中国の人件費上昇に対処するため、生産自動化を推進せざるを得ない。産業用ロボットの開発はこうした自社工場に役立てるのみでなく、今後世界的に拡大が予想されるロボット市場を睨んでのことである。

 
追記
  ヒト型ロボットの活用例が拡大してきた。 横浜の老人ホームではレクリエーションの時間に富士ソフトが開発したロボット「パルロ」を使う。神奈川県の介護ロボット普及事業のモデルとして、無料で借用。
 三越日本橋本店は東芝製の「地平(チヒラ)アイこ」を起用。古風な顔立ちと、浴衣に合わせて髪を結いあげた若い女性のいでたち。
 西武池袋本店は「ペッパー」のアルバイト派遣サービスを採用。開店時の来客出迎えと中元売り場でチラシ配り。自給1500円(1体)で7月5日まで2体借用。

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「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録(2015年7月13日)

2015年07月13日 | 随筆

桑原名誉顧問からの投稿

「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録 (2015年7月13日)

 
 「明治日本の産業革命遺産」がユネスコの世界文化遺産へ登録されることが決まった。8県にまたがる23施設に新たな勲章がつけられる。中には八幡製鉄所のように今日も稼働中の施設もある。韮山製鉄所の近くに住み伊豆の歴史に造詣の深い筆者の友人、稲村隆弘氏もさぞ喜んでいることであろう。今後は訪れる見学者に的確な情報を伝えるよう努力が求められる。

 
 これに引き換えISによるパルミラ遺跡の破壊には心が痛む。筆者は電経新聞社企画の電気通信視察団団長として2000年にシリアを訪問した。パルミラは首都ダマスカスから約230km離れており、ここはバスで行くしか方法がない。しかし、約2kmにわたって続く巨大な世界遺産の観光は、苦労に十分値した。遺跡の1つである円形劇場の舞台にも立って観客席を見渡したが、その舞台で25名のシリア軍兵士を処刑する映像を見せられたときは悲しかった。

 
 古きものを尊び、保存して後の世代に引き継ぐのは民族の良き伝統である。鳥羽日和山には「無線電話発祥記念碑」が建てられている。昭和36年、東海通信局が盛大に除幕式を行った。南相馬市原町には対米通信に用いられた高さ200mの「無線塔」の1/10の記念塔が残されている。無線塔は長く市民に親しまれていたという。また刈谷市のフローラルガーデンには依佐美長波送信所の送信機類の一部と高さ250mの鉄塔の1/10の模型が展示されている。NTTの先輩田中浩太郎氏の努力の結晶である。遺品を残す地方自治体を持つ日本の将来は明るい。

 toukou-20150713001 原町市のシンボルとして「無線塔」の愛称で親しまれたコンクリート塔

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