桑原名誉顧問からの投稿
日本の携帯電話がガラパゴス化だというのは間違いだ (2015年10月20日)
あらゆる「モノ」がインターネットでつながる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」が世間の注目を集めているが、総務省は来年度からIoTに用いる通信規格の開発を進めるという。NTTなど通信や自動車などの有力企業200社あまりに参加を呼びかけ、欧州委員会や米政府とも早い段階から連携して国際標準を生み出す考えのようだ。
大いに結構なのであるが、それについての報道記事が気に入らない。「早めに連携すれば、携帯電話のように日本国内での規格や技術が諸外国の潮流から離れて独自に進歩し、市場を広げられなくなる“ガラパゴス化”を防げる」と解説するが、これは読者に誤解を与える。第3世代移動無線方式は国際会議の初期段階から日本が議論をリードし、ドコモのフォーマ―は世界に先駆けて第3世代サービスを開始した。
世界に広げることができなかったのは、高機能の携帯電話(フィーチャーフォン)である。通信事業者とメーカーが協力して、世界中が真似のできない高度な性能の電話を作り上げた。しかし2007年にアップルがアイフォーンを発表して以降は世界がスマホ一色となり、高機能携帯電話の出番は消えた。これは携帯電話がスティーブ・ジョブスの革新的なアイディアに負けたのであって、移動無線標準規格の問題ではないのである。