我が家では10年以上同じ調律師の方にお世話になっていて
娘がピアノを止めてしまってからは、2年に一度のお付き合いになっていました
調律師らしからぬ大柄な体格と、柔らかな物腰
かなり年配の御老人なのだけれど
上質なスーツを着こなし、いつもイブサンローランの靴を玄関で綺麗に揃えて
ニコニコしながら入ってくる紳士でした
社交辞令のような会話の苦手な私は、「珈琲もお茶もいりません」と言う
彼の仕事の姿勢にとても好感を持っていました
2~3年前に体調を崩し倒れた・・と言う話を聞いて
もう調律は彼じゃない始めての人になるのかと思うと
ちょっとブルーな気持ちになっていました
そんな時その方から電話があり
「お客様は〇〇様だけにしておりますので、ご要望があればいつでも伺えます」
そんな電話を頂いて、ありがたくお願いしたのです
ピアノの前に座った彼は、ちょっと言葉が不自由で、片方の指先も
少し硬直していました・・。
それでも明るく「大丈夫ですよ。耳は確かですから^^」・・と一言。
私には何の不満も感じる事の無い、いつもと変わらない淡々とした時間
それでも2時間弱の時間は結構ハードだったに違いない
外では、奥様が車の中でずっと待っていました・・。
そんな付き合いを4~5年続け、この春彼がついに仕事をおやめになったと
会社の方から電話がありました
自分の仕事に誇りを持ち、自分の仕事をこよなく愛していた
プライベートな話は決してせず、
ただ自分の健康だけを、自嘲気味に話す方でした
今頃は、お孫さんに囲まれて、ゆったりと毎日を過ごされているのでしょうか
どうか幸せな毎日をお過ごしください
そう願わずにはいられない、長い長い時間のお付き合いでした
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