合衆国の片隅で新館 2006~

5人と4頭プラスαと2羽と1匹とその他大勢だったアメリカ暮らしは2人と1頭と1匹になりました。

サバイバルコース2週間を終えて(後編)

2006-04-18 | 日本語教師の日々
上の記事「サバイバルコース2週間を終えて(前編)」の続きです)

さて、このあたりまで来ると自分に当てはめた簡単な作文ができるようになります。1人の生徒さんをつきっきりで毎日教えるのは初めてのこと。ここまで来ると感動的でした。簡単な、とは言え、自分が全く新しい言語を勉強し始めてわずか1週間でここまでできるだろうか、と思うと、笑ってごまかすしかない感じ。努力とやる気に脱帽です。

難しい位置詞も導入した翌日にはほぼ完璧に覚えてくるのです。準備するこちらの自転車操業にも力が入るではないですか(笑)。

「○○ます」という、ますフォームでの基本動詞が一通り使えるようになった頃、形容詞へ。「い形容詞」(日本人が国語で教わる形容詞)と「な形容詞」(形容動詞)に分けてそれぞれの活用が使えるようにします。
「この本は難しいです。」「このリンゴは赤くないです」
「コンビニは便利です。」「○○空港はあまり便利ではありません」

そして、2つの文に矛盾がないときは「そして」でつなぎ、矛盾があるときは「が」でつなぐ。こんな複雑なことも拍子抜けするくらいにすぐに飲み込んで(天才かも)、

「日本語の勉強はむずかしいです[が]とてもおもしろいです。」
なんて言ってくれちゃうのです(涙)。

形容詞の肯定文と否定文が使えるようになって嬉しそうな生徒さんを「実は、日本語の形容詞には過去形もあるのよん」と突き落とすのは本当に気の毒なんですが、仕方ないです。覚えておくれ~。


ここまで来ると覚えるものが本当に多すぎて、完璧というわけにはいかなくなります。「昨日は寒かったですか?」「いいえ、寒いではありませんでした、Oops!寒くないです、Ah~!寒かったです、No!No!!寒くなかったです!」
というふうになってきました。

いくら覚えようとしても量が多すぎて追いつかない。それでも今は詰め込むしかない!覚えきるのは無理でも、耳と口が慣れていれば応用が効くはず。生徒さんもそれがよくわかっているのでとにかく一生懸命。

そして、できる作文の幅もぐっと広がってきました。なんたって形容詞が使えるんですから。習った範囲の動詞や形容詞を使って、旅行の経験を話したりもできるようになります。「○年の○月に、コスタリカに、誰々と飛行機で行きました。コスタリカは暑かったです。○月でしたがぜんぜん寒くなかったです。人は親切でした。食べ物はとても美味しかったです。そして安かったです。高くなかったです・・・etc.」この段階で習った範囲なので不自然なところもありますが、立派ではないですか!

この頃、覚えるべき言葉が多すぎて、単語がスッと出てこない自分にいらだち気味だった生徒さん、そう言うと「そう言えば先週の月曜日まで(日本語で)「ハロー」も言えなかったのに、今はコスタリカ旅行のdescribe(描写)が出来るようになっている!」と感動していました。教える方はもっと感動ですヨ!

最終的に動詞のフォームの基本形を全部入れてあげられれば…と思ってはいたのですが、ちょっと時間が足りませんでした。でもなんとか動詞の活用のためのグループ分けをして(五段活用動詞と下一段?かな?そして不規則動詞の3つのグループに分けるのです)「てフォーム」の作り方だけは勉強ができました。

例えば、
[食べます]→食べて
[行きます]→行って
[来ます]→来て

のような、日本人が全く意識せずに使っている動詞の活用。これゼロから習う場合はきちんとグループ分けして法則を理解させた方が覚えやすいのですが、この導入の仕方は難しくもあり、またとても楽しいところでもあります。この方法についてはまた機会があれば♪


今回は本当に生徒さんに恵まれて超ラッキーだったのですが、毎回こんなにすんなりといくわけではないでしょうね。でも本当に楽しくて、充実した2週間でした。生徒さんの方からも

「今までの人生でこんなに2週間が短く感じたことはたぶんなかった。素晴らしい2週間だった。」

と言ってもらえて、こんなに嬉しいことはなかったです。

私にもっと実力があったらこの短い期間を更に充実したものにできたかも、もっと多くを身に着けられたのかもと申し訳ない思いもあります。日本に行ったらきっと習ったことと実際の生活に出てくる日本語のギャップにめげることでしょう。だけど出来る範囲で精一杯のことをしたつもり。そういうギャップについても一応説明したつもり。あの生徒さんなら日本での1年間をきっと積極的に楽しんで納得のいくものにしてくれると思います。日本語の勉強、続けてくれるといいな。

こうして私もなんとか一歩を踏み出しました。日本での日本語教師初級養成講座以来ずっと面倒を見てくださった先輩方に感謝です。

そして、この生徒さん「アメリカ人は世界中で英語を押し通そうとする、と思われているようだけど、そういうふうに思われたくない、だからそうでないところを見せるためにも自分はがんばって日本語を勉強します。」と言っていたらしい。ああ、アメリカ人もえらい!こんな生徒さんに恵まれて私は本当にラッキーでした!



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15 コメント

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Unknown (TAMA)
2006-04-19 02:16:38
★リジィ子さん、
今日は久しぶりのネット三昧で浮かれている私です♪しかしいい加減PCに張りつきすぎ(笑)。
最後に数行書き足したのですが、この生徒さん、本当に偉かった。良い勉強させていただきました。

そうそう、形容詞にまで過去形があるのよ、日本語って。美しい言語だと思いますわ。
でもこういうことは日本人は学生時代に勉強しないですよ、専門でない限りする必要も特にないだろうし。私も専門はまるっきり(でもないかな?)ほとんど関係ないので、日本語教授法は市の養成講座からぼちぼちと始めたんですよー。
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Unknown (虹のパパ黒山羊@出張中)
2006-04-19 07:06:37
3げとー
ちゃんと「暑くてアイスクリームだらだらだらぁ~」を教えてあげ……てないな……(汗

ん?形容詞の過去形…あぁ『花は「白かった」』かな?
…うん、確かに形容詞の過去形って無いなぁ>他の言語
そのかわりと言ってはなんなのですが、女性形と男性形がありますけどねぇ。(名詞にあるので形容詞にもある)
名詞を「女性・男性」と分ける習慣のない言語から来た人にとっては苦痛というか理解できないです。
それと同じなんだろうなぁ>形容詞の過去形に出会ったひと


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Unknown (づみ)
2006-04-19 07:16:13
素晴らしい生徒さんに恵まれましたね

日本語は難しいときいていましたが
読んで日本語はやはり難しいんだと実感しましたよ
難しい日本語になれているから他国語がさらに難しいんだろうな~
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Unknown (RYO)
2006-04-19 07:36:55
すごいですねぇ~。 どうもお疲れさまでした。
TAMAさんの奮闘ぶりがガツンガツンと伝わってまいりましたよ。
全く日本語を知らない人に、日本語を教えるって難しそうですねぇ。
日本語で教えられないんですもんね。当たり前ですけど。
そういえば、私も昔インドで元言語学者というイギリス人の老紳士に、日本語の「ん(n)」と「ん(ng)」の使い分けを訊かれて、「なんですか?それ」という状態になってしまったことがあります。
自分の国の言葉のこと、意外と知らないもんですね。

でも、いい仕事をしましたね。
「人から何か仕事を依頼されるときは、あなたにその能力があると思ったから依頼するんです。それを実力不足ですと断るのは逆に失礼です。ある種の驕りです。ですからそのときの実力で全力をもって応えればいいんです。」
というある人の言葉を思い出しました。
やっぱり、依頼を受けて良かったのだと思います。
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Unknown (TAMA)
2006-04-19 11:31:53
★虹のパパ黒山羊@出張中さん、
「アイスクリームがダラダラだらぁ」そしてやかんがチ…(ry)
女性名詞・男性名詞がほとんどない(でも船や飛行機はsheとか言うけど)英語でも、たかだか複数形に苦悩している私なのでやっぱりどの言語も難しいですぅ。
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Unknown (TAMA)
2006-04-19 11:33:06
★づみさん、
日本語「も」難しい。でもきっと他言語も難しいんでしょう。私は一生そこまで深く英語を理解することはできないんだわ、しくしくしく。と時々絶望感に襲われます。
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Unknown (TAMA)
2006-04-19 11:40:02
★RYOさん、
ガツンガツンですか、なんだか力強くて嬉しいです。ありがとうございます。
実は「n」と「ng」の違い、今回直前に復習した中に入っていなかったら完全に忘れていました。
実は「ん」には3種類(n,m,そしてgみたいな記号)あるんですよね。
nは、「はんたい」「うんどう」「せんろ」「みんな」などのた行、だ行、ら行に続く「ん」
mは、「しんぶん」「えんぴつ」「うんめい」といった、ば行、ぱ行、ま行に続く「ん」
そしてngは「てんき」「けんがく」などの、か行、が行に続く「ん」
はぁ、今ここで復習させてもらわなかったらまた忘れるところでした。危ない危ない。

あ、でも日本語教授法って基本的には直接法と言って、日本語だけで教えるのがたぶん主流だと思います。私も日本で所属していたグループではそうでした。ここではそうもいかないのですけれども。

RYOさんのお話し、確かにそうかもしれません。依頼する側が信頼できる筋であれば…(笑)なんて言ったら怒られますね。
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Unknown (原麻めぐみ)
2006-04-19 17:19:57
すごーい、TAMAさん、素晴らしいっ!!
緊張感がバシバシ伝わって来ましたよ。
私も遠い昔、「文学部も出てるし~♪」と軽い気持ちで日本語教師の勉強をしようと考えたことがありましたが、ちょっとやってこれは無理だ、と悟りました(^^;
ネイティブの日本人だから意識することなく使っているものがいーっぱいあるんですよね。
それにしても、生徒さんも素晴らしい。
お疲れ様でしたー!ゆっくり充電して下さいね♪
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Unknown (虹のパパ黒山羊@出張中)
2006-04-19 18:51:32
ふっと思ったのですが…
日本語の中で、ロマンス語系の人が「聞き取れない音」ってありますかぁ?
英語の「RとLの違い」とか ハングルの「パッチム語尾に付く無音なんだけど発音(?)しないと絶対に聞き取ってもらえない大事な音)」とか フランス語の鼻濁音だとか 日本語を母語とした人には聞き取れない音ばかりなので、その逆もあるのかと思って…
--
フランス語を学ぼうとしたインドネシア人、じつは知らなかったのですがインドネシア語には「V」の音が無く、しかもインドネシアで「F」と耳から聞いて覚えていたもので大変な苦労をしていました。
(フランス語は本当にVの音が多いです。なにせ英語で「You have なになに」「You go どこどこ」という一番基本の文型に「Vous avez なになに」と2つもVが出てきます。かのインドネシア人は「フサヘ」としか発音できず、かなり苦労していました)

日本語の発音は子音+母音が基本だから、たいていの言語の人はすぐに聞き取りできるようになるのかなぁ?

--
おまけ
私も「フランス語だけでフランス語」を習いました。授業中はカタカナ禁止で、嘘でもテキトーでも良いからとにかくフランス語でつづれ!との厳命でした。もう毎日毎日ノートが真っ赤になりましただよ。
あと先生がネイティブでしたので、ほんとうに美しいパリ訛の鼻濁音を仕込まれました。(のちにスイス訛やモロッコ訛が混ざっちゃったけど)鼻濁音が聞き分けられるのに約3ヶ月・で、聞き分けができるようになると自分の発音を自分で矯正できるようになりましたねぇ。
鼻濁音をきれいに発音できるようになると「長襦袢・赤襦袢・長ズボン」が思いっきりフランス語に聞こえますです。
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Unknown (MIN)
2006-04-20 02:15:51
エキサイティングな二週間お疲れ様でしたー!
TAMAさんと生徒さんの頑張った様子がビシバシ伝わってきました!!!
読みながら「そうそう、そうなのよー」と、一年前を思い出してしまいましたわ。
導入の順序などもとても参考になりました。
TAMAさん、これで終わりにするには勿体ないかも。

ちなみに私は英語で教えていたので、とにかく「使える」英語資料を集めるのに苦労しました。(自分じゃ作れないし…汗)
1時間の個人授業のために、ネット徘徊して資料を集め、授業用のテキストを作成するのに数時間。
そこまでしても、「"は"と"が"」の違いなど理解してもらえない事もあったっけ……。(遠い目)

言葉の勉強って、教える方も習う方も終点って無いんだなぁってつくづく思います。
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