
少し前の寒いさなかのことである。電車のドアにそばに立ち、うすらぼんやりとホームを歩いている人たちを眺めていて気が付いたことがあった。
黒い・・・黒いのだ。季節柄全員がコートを着ているのだが、黒や紺など黒っぽいコートだらけで、なんとも・・・だ。
一人ぐらい明るいグレーとか、白いコートなんてのもいないのか・・・と思ったが、ぞろぞろと歩く人達の中でとうとう発見できなかった。
そこでハッと気が付いた。小生もご多聞に漏れずユニクロでよく買い物に出掛けていた。「いた」と過去形にしているのは理由がある。
もちろんユニクロで買い物をしないわけではないが、少なくとも機能性重視のもの以外は買う気にならない・・・
それは色合いや柄が圧倒的に地味なものになっているからだ。歳を取るにつれ、段々派手なものを好むようになってきた・・・というのはうそで、若いころから小生、派手めのものが好きだった。
もちろん、ヒョウ柄とかを着る趣味はないが、白いダッフルコートなどを着ていた。
以前はユニクロにもそれなりに派手めなカラーのものがあったが、近ごろのお店ではとんと見かけない。どうしてか・・・それは簡単だ。
派手めな色柄のものが売れないからだ。以前アパレルに勤務されていた方から話を聞いたことがある。曰く「ユニクロの商売はとても怖くて自分にはできない」と。
それによると、在庫として何万枚もののデッドストックを抱える商売は理解できないと。その方もかなり大きなメーカーの管理職だった人なのだが・・・
逆にいえば、そんな商売だからこそ売れ筋にシフトするのは仕方ないのかも・・・それほどに地味な色合いしか売れない時代ということになる。
そこで思い出したのは、先日ある噺家が高座で話していたこと。「こうして高座から客席を見ていると、景気の良しあしがわかる」と。
なんでも景気が悪いと客席が黒っぽくなるのだという。そして見事に今は黒っぽいというのだ。それとすべてがリンクしたように感じた。
これから桜の開花とともに、着るものもパッと明るく・・・したいと思うのだが、どうもそういう時代ではないようだ。
いや、だからこそ派手めなものを・・・と思うのだが、そもそも売っていないというのが実状・・・先日ある人にプレゼントのネクタイを見に行った。
個人的にはちょっとこれは地味かな・・・と思っていたら、デパートの店員さんが「ちょっと派手すぎますか」と。派手好きなのは承知の上で、それでも小生が地味と感じるものが「派手すぎ」という説明とは・・・それだけ売れ筋が地味ということなのか。
むむ、やはり時代はそんなことになっているんだなあ・・・景気がよくないわけだ。
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