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今日の遠征で降り立ったのは北陸新幹線の安中榛名駅です。
北陸新幹線の開業と同時に設置され、新幹線とともに目覚ましい発展を遂げ・・・
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・・・一時はコンビニが進出するまでに至ったらしいのですが。
今は駅近辺に店らしいものは何もなく、何もない草原の中にスタイリッシュな新幹線駅がポツンと佇んでいます。道路は広くてきれいなのですが、それ以外何もないのでかえって物悲しさが漂います。
なんでこんなところに駅ができたのか、それはだいたい碓氷峠のせいと言えます。
北陸新幹線の開業以前、高崎と長野を結ぶ信越本線は軽井沢の手前で碓氷峠を通過していました。
この碓氷峠の線路は普通の電車では登ることのできない急勾配で、峠手前の横川駅で電気機関車を連結して押してもらうことでようやく登っていました。
しかし速度こそ命である新幹線でこんな悠長なことをするわけにはいきません。碓氷峠が急勾配で登れないならば迂回ルートを取ればよいのです。
こうして北陸新幹線は高崎から北西の山岳に入り、そこでジワジワ標高を上げていくことで軽井沢までの登りをクリアしたのでした、めでたしめでたし。
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しかしそれではすまされないのが新幹線に迂回されてしまった群馬県内の市町村です。
新幹線建設に協力した挙句、在来線の碓氷峠区間は廃線になってしまい、何一ついいことが無い。せめて駅ぐらい作れ!というそれはそれでもっともな要望があり、生まれたのが安中榛名駅なのです。
そんな経緯ですから、駅の前に何もないのも当然です。
新幹線駅のくせに秘境駅などといじられていましたが、最近はその立場ですらも北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅に奪われつつあり、どうにも立つ瀬がない駅と言えるでしょう。
今日のお題は、その碓氷峠です。
といっても、いきなり碓氷峠に行っても面白くありません。
まずは南下して妙義山に向かうことにしました。
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安中榛名駅から南下していくと、妙義山の魁偉な姿が見えてきます。この辺りの山々は岩でごつごつしたシルエットが特徴的。
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普通のヒルクライムでは山に向かって登っていくものですが、妙義山では山の周囲をぐるっと回るルートになっており、山をゆっくり眺めながら走ることができます。
とはいえ勾配はなかなか急で楽はできないのですが。
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妙義ふるさと美術館の駐車場からは、真正面に山を見据えることができます。
ここからではちょっと遠いのですが、山の中腹辺りは紅葉真っ盛り。登山をするにはいい日でしょうね。
さて。ここからさらに南下して、下仁田を経由して妙義荒船林道に向かいます。
妙義荒船林道は妙義山の南側から時計回りで軽井沢の南側に抜ける林道です。途中に何があるわけじゃないのですが、交通量が少なく快適なサイクリングができます。
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しかしそこの手前にある登りはのんびりとは程遠いものでした。記憶にある限り最大斜度は18%、それもかなり長いこと続き脚がガンガン削られます。
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しかしその坂をどうにか登り切れば、開けた高原の光景が待っています。
途中に補給できる個所は無さそうだと思っていたのですが、神津牧場に食堂があったので、そこでカレーを食べてさらに奥地へ進みます。
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八風山辺りに出ると一気に視界が開け、浅間山と軽井沢が一望できるポイントがありました。ひとしきり眺望を堪能してから軽井沢を抜け、今日の本題である碓氷峠の下りに突入します。
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碓氷峠の緩やかな坂を下っていくと、程なくして見頃を迎えた紅葉があちこちで見られるようになりました。
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紅葉スポットとしてはあまり目立たない碓氷峠ですが、なまじの名所より鮮やかな色彩で迎えてくれます。斜面が南向きなので陽光に照らされる場所が広く、赤も黄色も輝いて見えます。
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そして碓氷峠のもう一つの見どころは鉄道遺産。
廃線となった横川~軽井沢間の線路は道路の近くを並走していたので、今でもあちこちで名残を見ることができます。
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鉄道というのは自動車に比べて傾斜に弱いので、峠を越えるにはトンネルが必要になります。
しかしここ碓氷峠は軽井沢まで登り切った後に下りがありません。そのためトンネルを掘ることができず、無理を承知で山を登るルートを取るしかありませんでした。
その結果、横川~軽井沢間の難所が観光名所となり、峠の釜めしが人気駅弁となり、そして新幹線に見捨てられました。
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めがね橋とも呼ばれる碓氷第三橋梁は、ここの鉄道遺産の中で最大のもの。下から見上げるレンガ造りの橋は100年の風格があります。
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ここはさすがに人が多く、車やバイクがひっきりなしに通るので撮影も一苦労。これ1枚撮るのに10分くらいタイミングを測る羽目になりました。
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さて、碓氷峠と言えば峠の釜めし。
駅弁としては全国屈指の知名度を誇るので、別にここに来なくても手に入りますが、それでもこれを食わないと収まりが悪いというものです。
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