埼玉県飯能市にあり、足腰にご利益があるとされる天台宗のお寺で、正式名称は「子ノ権現天龍寺」というそうです。略してねのごん。
自転車乗りにとっては足腰のご利益もさることながら、途上にある28%とも30%とも言われる魔界レベルの激坂で知られています。
またインナーロー教団の聖典によると、子ノ権現に到達した者は光輝くリングが与えられ、その加護により奥多摩のラスボス・風張林道への道が開けるのだとか。
・・・なるほど。何度も機会があったのに風張林道に行ったことがないのは、そのリングを持ってないからですか。
風張林道なんか特に行く予定はないけど、そう言われりゃ行ってみたくなるのが人の性。さあまってろよ子ノ権現!
朝7時に家を出てまずは多摩サイで羽村まで。多摩サイというのは狭いし路面が悪いし人も多いしで、ライドの主コンテンツとしては問題だらけですが、信号がないのが最大の利点。一般道を頑張って走るより多摩サイを軽く流すほうが速く、移動ルートとしては優秀です。多摩サイに限らず、川沿いのサイクリングロードは大体そうですけど。
多摩サイの終点、羽村取水堰。ここに来るの久しぶりだなと思って調べてみたら、何と2年ぶりでした。尾根幹までの間は頻繁に走ってるんですが、それより上流はすっかりご無沙汰でしたね。
それにしても暑いです。昨日梅雨明けしたばかりで天気がよいのは結構ですが、10時前だというのに既に30度。すっかり真夏ですね。こんな日になんで自転車なんか乗ってんだかw
子ノ権現に挑む前に腹ごしらえをしなくてはなりませんので、埼玉の自転車乗り御用達のターニップにやって参りました。こうして写真を見るとおしゃれ感のある佇まいですが、店までズドン!とそびえる激坂に目を奪われ、アレを登らなきゃならんのか~と絶望的な気分に襲われておりました。
登り切るとバイクラックが複数用意してあり、なるほど自転車歓迎であることが伺えます。実際、お客さんの約半分はレーパン姿のロード乗りでした。
このお店はイタリアンということになっていますが、メニューにはカレーだのカキフライだのが並び、どっちかというと洋食屋という感じ。どうやら一番人気であるらしい焼きカレーを頼んでみました。カレーの上にチーズをかけて焼いたドリア、といったところでボリューム感があります。
繰り返しますが今日は猛暑。これ食いきれるかな~と心配になったのですが、食べてみるとあら不思議、味は濃厚なんですが食べやすく、あっさりと完食してしまいました。汗が吹き出てくるのだけはどうしようもありませんでしたが。
ターニップから子ノ権現に向かうにはヒルクライムをを一つこなさなければなりません。それがこちら、仁田山峠。奥のほうに早くも激坂感があり、見るからに邪悪そうな雰囲気満点。子ノ権現の前に消耗するのも困るし腹ごなし程度に考えていましたが、結構苦戦するかも・・・
登りはじめてすぐに10%級の坂になってしまい、これはやばいかも?と思っていましたが、少し走ると傾斜が緩んで一息入りました。ここは桜並木になっており、春先は見事な桜が見られるそうです。できれば花見がてら来たかったのですが、なかなか機会が無くてですね。
この峠、激坂と緩斜面が交互に入れ替わり、それとたまに下りが出てきます。まあ下ったからにゃまた登らなきゃいかんわけですが、ずーっと激坂が続くよりは気楽というもの。
名栗から飯能に行くだけなら南側の県道を通るほうが断然ラクで速いので、生活道路としての価値は物凄く低そうですが、それゆえに車はほとんど通らず、そのくせ路面と道路幅はまずまずなので自転車的には走りやすいルートです。
仁田山峠から東に下ると、いよいよ子ノ権現への登り口です。それではこの坂のプロフィールを見てみましょう。
距離3.9km、標高差339m、平均勾配8.4%。この数字だけ見れば、さほど恐ろしい坂には見えません。しかしこの坂は前半の勾配が緩く、登るにつれて段々ときつくなり、最後の300mには20%級の超激坂が待つという、極端なプロフィールを持ちます。
登りはじめはまだ民家もあり、傾斜もさほどではありません。この区間は頑張りすぎず、脚を溜めて最終区間に備えます。
しかし思ったより民家が多いため影が少なく、陽射しがきついです。いくら激坂と言っても子ノ権現の標高は500mそこそこ、さほど涼しいわけじゃないので猛暑日は辛いものがあります。やっぱり春先に来たほうが良かったか・・・
残り1.5kmのこの橋、ここからが本番。傾斜は厳しく、森も深くなっていきます。
このあたりでボトルの水がほとんどなくなっていることに気づいたのですが、こんな場所に自販機があるわけも無く、とはいえ引き返すわけにも行きません。まあ残り1.5kmならいけるだろ。5km/hで走っても、18分で着くんだし。
この辺りになると傾斜は常に10%以上。時おり15%を越える箇所もあり、速度は10km/hを下回ることがほとんど。当然34x30の乙女ギアに入れっぱなしです。
とはいうものの、和田峠や箱根旧道など、このくらいの坂は今までに何度も登っています。まだ大丈夫、大丈夫。
そして残り300m地点に到着しました。埼玉屈指の魔界はすぐそこ。
・・・あー、うん。こういうカーブも何度か見たことあります。でもね、普通こういうカーブって直線に入ったら傾斜が緩むんです。
しかしここは写真右奥の直線に出ても全く緩まず、20%近い傾斜が続きます。どうなってんだこりゃ。
この直線は100mにも満たないのですがとてもそうは感じられません。しかしこれで終わりではなく、この先に30%の右カーブが待っているはず。わずかに残っていた水を全部飲んで備えます。
そしてこれが・・・
いやもう何の冗談かと。壁というか、崖というか。 ここまでの激坂はあざみラインにもありませんでした。匹敵するのは俺の知る限り暗峠だけでしょう。
この壁を前にし、咄嗟にインコースは無理と判断して進路をやや外目に変更。それでも全力ダンシングでどうにか切り抜けました。
・・・いやほら、イン通ったら右側通行になっちゃいますから!ね!?ね!?
上から見てもやはり凄まじい。暗峠と異なり短いので何とか突破できましたが、これが2,30mも続くなら俺では登れなかったでしょう。
しかしまだ終わりではありません。カーブを抜けてもゴールまで100m以上あり、10%オーバーの坂が続くので油断禁物。
そしてなんとか登頂成功!ラストの300m、聞きしに勝る魔界っぷりでした。
とりあえず売店に駆け込み、麦茶を一気飲み。汗が引くのを待ってお寺の見物をすることにします。
本尊に履物を奉納する慣わしからきた、重さ2トンの鉄のわらじ。ここは足腰にご利益があるお寺だけに、旅人を守るという意味合いがあったのでしょうか。
そして本堂の裏山を少し登ると、展望台が。空気の澄んだ冬ならスカイツリーが見えるそうですが、湿気の多い夏場では無理ですね。新宿と思われるビル群はかろうじて見えたのですが。
さて、一通り見物したので戻るとしましょう。
本日最後のスポットはこちら、カフェキキ。ターニップと同様、自転車乗り御用達のお店です。こじんまりとしていますが、バイクラックが3つもあります。
せっかくきたものの、暑さと疲労で固形物を食いたいとは思えなかったのでコーラフロート。どの店でも一緒じゃないかといわれればそうなのですが、今日のところは有名なこのお店に来て見たかっただけなので。今度は昼飯時に来たいものです。
・・・しかし何か忘れているような。
あーっ!風張林道に行くためのリング(お守り)を買い忘れた!
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