具体的な例を挙げてみましょう。
先日の伊豆ライドは獲得標高が2254mに達しましたが、このコースをSTRAVAで作った時の獲得標高は1950m程度にとどまります。
STRAVAのコース設定での獲得標高はおおむね信用できるもので、普通であればここまでの差はつきません。もちろん誤差はありますが、むしろ実走の方が低くなることがほとんどです。
先日の伊豆ライドでここまで獲得標高が高くなったのは例外的と言えます。原因はやはり一日中吹き続けた強風でしょう。
ではなぜ風が吹くと獲得標高が高くなるのか?を考察してみました。
サイコンはどうやって標高を算出しているのか。GPSで測定していると思いがちですが実はそうではありません。高度が上がると気圧が下がるという原理を利用し、気圧計が用いられています。
しかし気圧計による高度測定には風に弱いという弱点があります。
サイコンに強い風が当たると、サイコン内部に空気が押し込まれて気圧が上がる。するとサイコンは標高が下がったと誤認する、というわけです。
自転車は走ることで前から風が当たりますので、それによる気圧の変化も当然あります。しかしこれは標高の計算式に速度を織り込んでおけば済む話で、サイコンメーカーはそうしてるはずです。
しかしそこに向かい風が吹けばどうなるか。自転車の速度以上の風が前から吹き付けるので、サイコン内の気圧はより一層高くなる。その結果、サイコンは標高が下がったと誤認し、平坦な道であっても斜度がマイナスになります。追い風であればその逆で、標高が上がったと勘違いして斜度が高くなります。
平坦な道を走ってるときに、こんな風にサイコンを手で覆ってみるとこの現象が確認できます。
手で風が遮られるため、速度の割に風が当たらず気圧が低くなる→標高が上がったと誤認する→平坦なのに斜度が+になる、となるはずです。
風でサイコンの標高が小刻みに変動し、それが積もり積もって発生する。これが風が強い日に獲得標高が高くなる現象です。
多少風が強い程度であれば誤差の範囲にとどまるのですが、先日の伊豆ライドは大の大人が吹っ飛ばされそうになるくらいの爆風だったため300mもの大差がついてしまいました。
このように気圧計による標高計測は気象条件に影響を受けるのですが、普通の強風程度であればその誤差は小さいし、そもそも多少標高が狂ったところで大して困らないので問題ないのでしょう。
気圧計による標高測定はサイコンだけでなく、登山用GPSやドローンでも採用されています。GPSでも標高は測れるのに、わざわざコストをかけて気圧計を積み込んでいるわけで、それだけGPSによる標高計測は気圧計以上に信用できないと各メーカーが判断していることになります。
ではなぜGPSの標高は信用できないのか?かなり長くなりそうですが、こちらもまた今度書いてみたいと思います。
☆参考資料
GPSと気圧センサーを用いた高精度標高計測技術
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