70年代中期のイーノの実験音楽のためのオブスキュアレコードでは、なんとマイケルナイマンのデビュー作”Decay Music”やペンギンカフェオーケストラなども含まれていた事も今回初めて知った。
マイケルナイマンは今でこそ映画音楽家、現代音楽家、演奏家、執筆者などなど広範囲に渡って大変有名で巨匠の域に入っているが、その彼のデビュー作がイーノのオブスキュアからのレコーディングだったとはこれには驚いた。
特に映画”ピアノレッスン”の音楽の世界的大ヒットは一般的にも彼を有名にしたもので、私も彼を知ったのはこのサウンドトラックからだ。あまり現代曲的だとは思わないが、情緒的でノリが良くスケールも大きい、映画とのからみも素晴らしくとてもいいアルバムだ。
しかし多くの顔をもつ彼は作曲においてもいくつかの顔がある様で、80年代の映画監督ピーターグリーナウエイの一連の作品でのサウンドトラックやソングブックに代表される歌曲などはグリーナウエイの映画の雰囲気と同質に感じられる一種のクセの強さがどうにも自分には肌に合わず今迄私は避けて来た。
今回30数年ぶりにオブスキュアレコードを思い出すと共に、Gブライヤーズのタイタニックと一緒に興味を持ってこの”ディケイミュージック”を注文してみた。
この曲はやはりグリーナウエイの”1-100”という映画のため作曲されたが使われる事無くこのオブスキュアレコードで初録音された様だ。
この曲は80年代以降の一連の彼の曲とは随分と異なるもので、印象としては1、3曲目はイーノの環境音楽であるアンビエント2やAペルトの”アリーナ”エリックサティーなどと共通する静かなピアノの反復曲、2曲目は雰囲気が異なりガムランを少々陰湿にした感じの現代曲。どちらもミニマル的で揺れ幅の少ない静かな現代音楽といった感じだ。
ミニマルミュージック(反復音楽)という音楽的概念はどうやら”68年頃このMナイマンが初めて持ち込んだようだが、ルーツはアンディウオーホルの一連のシルクスクリーンによる作品あたりからだろうと思うが、同時期にすでにかなり荒あらしい表現ながらやはりウオーホルのプロデュースによって録音されたヴェルヴェットアンダーグラウンドのデヴュー作にもこの反復は利用されている。また現代曲ではスティーブライヒやおそらくFグラスなどもこのころから反復を実験し始めていた。
一方、ブライアンイーノは70年代初期グラムミュージックの波に乗りブライアンフェリーなどと共にロキシーミュージックを結成、2枚の出色のポップロックを録音したが、Bフェリーとの軋轢でロキシーを脱退、”73年頃「Here Come The Warm Jets」、「Taking Tiger Mountain 」の2枚のソロアルバムを発表したが、私にはこの2枚のアルバムはイーノに取っての暗中模索的作品の様に感じられる。どうやらこのころウオーホルやヴェルヴェット、ミニマル、に接近していた様だ。同時期に”FRIPP & ENO/NO PUSSYFOOTING”を録音しているがこちらはかなり実験的な音楽でアンビエント(環境音楽)の芽吹きとも言える作品だがエレトリックなフェーズサウンドが少々キツい。
75年になると”ANOTHER GREEN WORLD”、”EVENING STAR”の2枚の良質なアルバムを発表。
アナザーグリーンワールドはイーノらしいポップ感を伴った前期イーノの代表作とも言えるアルバムで私も大好きな作品だ。またイヴニングスターはノープッシーフッティングを発展し、完成させた作品で、情景を伴った後のアンビエント元となった作品。
同時に自身の”ディスクリートミュージック”を初めとする10枚のオブスキュアーレコードでミニマル、現代音楽など実験音楽やEサティーなどを吸収し、後の環境音楽の金字塔アンビエント1ー”ミュージックフォーエアポート”を発表することになる。
ミュージックフォーエアポートは空港の環境のために描かれたた作品だが、特に確たるイメージ持たず、自然環境などどのような環境においても見事に調和し得る環境音楽として最初にして最高傑作といえる作品だ。
この曲はもはや”ロック”という分野ではくくれれるものではなく、私は現代音楽であると思っている。
また、ウーホルがベルヴェットアンダーグラウンドのプロデュース時に”連続した反復は人をある種の催眠効果におとし得る”言っていたが、その効果を最大限に表現しミニマル的な潜在意識下に響かせる完成された作品だと思う。
音楽業界的においても環境音楽と言う新分野を確立した最初の作品でもある。(しかし最近の環境音楽~ヒーリングミュージックとやらは一体なんなのか?あっても無くてもいい様などうでもいい様な音楽ばかりで、そんな曲に限って作曲者は私は~の啓示を受けて作曲しました。なんてのばっかりだ。)
ちなみにイーノ本人はアンビエント4”オンランド”が最もお気に入りの様だ。ドローンサウンドというのか、”ボワワ~ン”といった音がずっとつずく感じの曲でイーノはアンビエント1~3迄をさらに発展させ曲というよりは、空間の中での音像と言ったものを表現したかったのだろうと思う。
以前はロック少年であった私の音楽感の変貌も、アンビエント1からの影響が大きかった様に思う。
中世ヨーロッパの声楽、Aペルトをはじめとする現代音楽、大きなくくりではクラッシクもこのアンビエント1”ミュージックフォーエアポート”がルーツだったのではないか?
この曲は私にとってそれだけ特別な存在だ。
今回ネットの同時注文でこのミュージックフォオーエアポートのDVDも注文した。もう10年も前に録音されたものの様だが何とライヴ! Bang On A Canというバンド?が意外な程忠実に演奏している。
画面の方は環境ビデオとしてまーこんな感じでしょうね、といったもの。おまけにイーノやライヒなどのインタヴューがあったけど字幕が無いので訳分かりませ~ン。でしたが20%offで¥2661はお買い得。
もうひとつおまけにMナイマンのピアノレッスンのサントラは、ブックオフなどでよく250円位で売ってます。
おすすめです。