個人的にオススメなイスタンブールの観光名所を紹介する企画。まずは軍事博物館です。軍事博物館というと、ミリタリーが好きな方が行くイメージですよね。現に私も興味があり、だからこそイスタンブールに行くたびに訪れているのですが、一般の方にもオススメできる理由があります。
なので、最後までご覧頂けると嬉しいです。記事の最後に紹介する通り、軍事博物館でしか手に入らない書籍をマルシェルへ出品していますので、そちらもどうぞよろしくお願いします。
なお、開館日や入館料の情報は『地球の歩き方 イスタンブールとトルコの大地 2019~2020』から引用しています。そして、執筆にあたり私個人の記憶と各種情報サイトとのすり合わせを行いましたが、実際に訪問される際は最新かつ確実な情報をご自身にてご確認くださいますよう、お願い致します。
■軍事博物館
■目次
-メフテルの生演奏を見よう
-充実のコレクション
-おみやげが安い
-ブラスバンドの原点・メフテルの生演奏を見よう
この博物館、ミリタリー好きでない一般の観光客も訪れます。理由はメフテルの生演奏が見られるからです。太鼓の重低音、金管楽器の高音、そしてきらびやかで派手な衣装をまとった男たち。トルコの伝統音楽として保存されているメフテルは、一目見る価値があります。
「いや、メフテルなんて知らないよ…」という方、お手数ですが一旦このYoutubeの動画を観て頂ければ「これかーーーーー!」となります。
▼メフテルの生演奏
メフテルとは、オスマン帝国の軍楽を指す言葉です。戦場に軍楽隊を随行させて演奏させることで、味方へ指示を伝えたり、士気向上を図ったりします。また敵に対しては、心理的に威圧する効果も期待できます。
オスマン帝国がヨーロッパへ侵攻したとき、随行していた軍楽隊やメフテルがヨーロッパで認知され、音楽に取り入れられました。ベートーヴェンやモーツアルトの「トルコ行進曲」などは有名ですね。やがて、ヨーロッパ各国もメフテルをモデルにして軍楽隊を整備し、これが発展して現代のブラスバンドになったと言われています。
開館日の15時~16時にかけてメフテルの生演奏があります。紹介動画10分、演奏30分、写真撮影タイム10分という構成で、最後は彼らと写真を撮れるのも魅力です。このためだけに行く価値があります。
※国内外での演奏のため、休演している場合もあるようです。その点、ご承知おきください。
▼写真撮影タイム
▼5年前の格安スマホ、前面カメラの性能の限界
-充実のコレクション
問題です。
トルコ共和国の建国は1923年。
それではトルコ軍の設立はいつでしょうか。
▼首都アンカラ アタテュルク廟の衛兵交代式
アタテュルク廟…トルコ共和国初代大統領 ケマル・アタテュルク氏の霊廟
答え:紀元前209年
「なんでやねん」と言いたくなりますが、トルコ民族が打ち立てた最初の国は、紀元前209年~93年にかけて、モンゴル高原を中心に栄えた匈奴(きょうど)という考えから来ているそうです。
▼1453年 オスマン帝国によるコンスタンティノープル攻略戦のジオラマ
コンスタンティノープルは現在のイスタンブール
古代から現代まで、特にオスマン帝国(1299-1922)以降の歴史とともに、幾多の武器や兵器とその変遷を見ることができます。収蔵品は5万点を数え、そのうち展示されているのは9千点と言われています。廊下や屋外にも展示物があり、『地球の歩き方』では見学目安時間「2時間」と記載されていますが、全部をしっかり見ようとすると半日は必要でしょう。
マンガやアニメ、映画でしか見たことがないものがずらり。ロード・オブ・ザ・リングやナルニア国物語など、ファンタジーに出てきそうな刀剣の数々は、ミリタリー好きでなくてもグッと来るかと思います。展示物に対しての説明書きは、ほぼ「刀」とか「弓矢」といった具合でザックリしているので、言語の心配もあまりしなくて大丈夫です(英語とトルコ語で表記されています)。
個人的には、実用性があるか怪しい、金煌の装飾が施されたマスケット銃やライフルなどが気になり、ずっと見ていました。この他、兜や盾、軍装やテント(皇帝が戦場で過ごす天幕)、外には大砲や戦闘機なども展示されていて、展示品の幅広さにも圧倒されます。日本では目にできないものばかりです。
-おみやげが安い
そもそも入場料が安いです。
トプカプ宮殿が60トルコリラ(935円)、イスタンブール考古学博物館は30トルコリラ(468円)、そして軍事博物館は10トルコリラ(156円)です。カメラの持ち込みには別途料金が必要ですが、スマホなら無料だと言われました。※レートは2020年7月12日時点
▼私が訪れたときは、さらに安く7.5TLでしたが、日本円で考えると同じくらい。
痛恨の撮り忘れをしているのですが、物販コーナーがあります。品数は充実しているとは言い難いものの、メフテルのCDやトルコ共和国初代大統領アタテュルク氏のグッズ、展示に関連する書籍など、ここならではの商品があります。
▼メフテルのCD
▼トルコ共和国初代大統領 ケマル・アタテュルクの肖像
そして驚いたのは、軍事のぐの字もない「イスタンブールに来た」みたいな観光客向けのマグネットや、トルコっぽい柄の小物入れなど、市中のおみやげ屋さんに置いてありそうな商品があることです。
これらも安い値段で売っていたので「とりあえずなにかお土産を買わなければならない」という場合は、試しに覗いてみるとよいかと思います。記憶が正しければ現金(トルコリラ)のみの対応だったと思うので、現金を余分に持っていったほうが吉です。
メフテルの生演奏から見応えある充実のコレクション、そしておみやげ購入まで…ガイドブックのイチオシではありませんが、個人的には大いにオススメの観光名所。軍事博物館をぜひご検討頂けますと嬉しいです。
▼実際に買ったおみやげ。親戚へのバラマキ用に購入しました。
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最後にお知らせです。
軍事博物館でしか手に入らない書籍をマルシェルへ出品します。軍事博物館の軍服コレクション、特に近代から現代までの変遷をまとめた書籍です。
『HARBİYE AKUSERİ MÜZESİ ÜNİFORMA KATALOĞU』
(軍事博物館 軍服カタログ)
■紹介
1683年の第二次ウィーン包囲の失敗以降、西洋諸国に対して劣勢となったオスマン帝国は、やがて「瀕死の病人」と呼ばれるほど国力が衰えます。19世紀、皇帝マフムト2世の時代に入ると、西洋の技術や様式を取り入れて近代化を目指す動きが始まり、軍も例外ではありませんでした。例えば先述のメフテルも、近代化の一環で廃止されています。
近代化は軍服にもおよび、それまでの伝統の影響を受けつつも装飾が次第に西洋風になり、20世紀からは諸外国と同じく機能的なデザインへと変化していきました。こうした変遷を収蔵品から抽出し、まとめ上げたのがこの一冊です。
具体的には、アブデュルハミト2世が即位した1876年から現代までを収録しています。軍服の変遷に焦点を当てた書籍自体、兵器や武器のそれと比較して多くはないので、まず存在自体が貴重と言えるでしょう。
▼収蔵品の紹介の一節
また、日本もオスマン帝国と同じく、19世紀から近代化を始めた国です。同じく西洋をモデルにしているだけあって、日本の明治時代から第二次大戦までの軍服を比較すると、日本とオスマン帝国(1923年以降はトルコ共和国)の共通点や相違点を見出だせます。日本史を知っているからこその観点で、より深く考察することが出来るのも本書の魅力です。
160ページ中、前半35ページが解説、後半は収蔵品の写真付き紹介となっています。ミリタリーが好きな方、歴史が好きな方はもちろん、被服や絵画の参考にされたい方にもご検討頂けるのではないでしょうか。なお、解説などはすべてトルコ語です。
1点ものですので、ぜひお早めのご検討をお願い致します。
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閑話休題
1.軍事博物館のトルコ語名
『地球の歩き方』で紹介されているトルコ語名称は「Askeri Müzesi(アスケリ・ミュゼシ)」ですが、建っている地名のHarbiye(ハルビイェ)を付けて「Harbiye Askeri Müzesi」と言われることも多いようです。タクシー運転手に何回も「Harbiyeだよね?」と聞かれ、教えてもらうまで意味が全くわからなかった思い出があります。確かに紹介した本ではHARBİYE と付いていますね。
2.おみやげが安すぎて
先ほど紹介した物販コーナー。あまりの安さに、アメリカ人のお客さんが値札を指して「これはUSドル?」と係員に尋ねました。「トルコリラです。」と返されると「チーパー」と一言。ちなみに、当時トルコリラが安かった理由は、安全保障をめぐるアメリカとの関係悪化も一因。ここは軍の施設、係員はもちろん軍人。目が怖かったです。
3.安全地帯
2015年、2017年と訪れて変化したのは、手荷物検査が厳重になったこと。軍の施設ということもあり、X線検査や金属探知機を使ったセキュリティーが2ヶ所ありました。その時、うかつにも荷造り用にハサミを持っていて、預けるように言われました。安心して見学できます。