いよいよクライマックスのアンデルセン童話がやって来ました。
アンデルセンは誰のためにこの本を書いたのか?
大人の童話だと言われる由縁を読み込んでくださいね。
[お前のその艶々とした黒い髪が欲しい。]
[もちろん、差し上げますわ。]
お母さんは自分の真っ黒な髪の毛を差し出しました。
黒い髪の毛になったおばあさんは、「し」の温室の戸を開きました。
温室の中には世界中にある木々や花々がぎっしりと生い茂っていました。
美しいヒヤシンスがガラスの蓋の下で、牡丹の花がこぼれる程に大きく花びらを開き、大事に育てられていました。
大きな樫の木や杉の木やしゅろの木もあり、小さなスミレの花もありましたし、池には水草も生えていました。
どの木や草にも世界中に住んでいる人たちの名前が付けられていました。
温室の中にいる限りは、いまだ人の命の火は灯っているのです。
お母さんはそれらの木の一つ一つに耳を寄せて心臓の音をチェックしました。
そしてついに、
ドキンドキンドッキンと自分の赤ちゃんの心臓の音を聞き分けました。
[この花だわ❗私の坊やよ❗
坊やに違いない❗]
サフラン (パエリアの香辛料に使う)
その花は萎れかかっていた青いサフランの花でした。
「触ってはダメだよ。
もう死神が帰ってくる時間だよ。死神に会ったらこう言うんだよ。
(私の赤ちゃんの花を引き抜くのなら、他の花を引き抜きますとね。)
死神を困らせるのさ。神様のお許しがなければ、どんなちっちゃな花でも、引き抜いてはけないのさ。」
突然、とても冷たく氷のような風が温室の中へサッと吹いてきました。
そうあの死神が帰ってきたのです。
目の見えないお母さんにもこの冷たい風は死神の風だととっさに感じました。
「お前はどうしてここにいるの?
どのようにしてわしよりも早くここへ来ることができたのかな?」
死神はお母さんに聞きました。
[私は会いたいのです。母親は自分の子供のためなら何でもします。]
お母さんは、小さな青いサフランの花の周りを大事そうに手で囲いました。
そして体で守るようにその花をおおいました。
[お願いいたします❗どうぞお願いいたします❗
私の坊やを助けて下さい❗死神様🍀]
死神は氷のような手をお母さんの肩に置きました。
その氷のような手の冷たさに、お母さんの体はしびれ始め、手はだらりと垂れてしまいました。
「お前はわしを誰だと思っているのだ。わしに手向かっても無駄だ。お前にはどうすることもできないのだ。」
死神は冷たい声で厳しい言葉をお母さんに投げつけました。
つづく・・・・・
死神は神様に許された神様の使いなのです。
お母さんには、それが分かっていません。