こんばんわ、白雪姫です。
大変に手前みそで申し訳ありませんです。
ハイ。
もう一度ハイネの詩を書かせて頂きたい
と思います。
恋は
蜃気楼か現実の中に見出すものなのか
それは永遠の謎である。
海の精の歌
夕闇はしだいに青く海辺を浸し
侘し気に孤独の心を抱いて
荒涼とした岸辺に一人の男が座っている
死のように冷たい瞳をあげて
遥かな死のように冷たい天空を
それから波立つ広い海を眺める
波立つ広い海を眺める
波立つ広い海の上を
男のため息が 漂う船のように
流れていき
また悲し気に戻ってくる
そのため息の舟が錨を下ろそうとした
心はすでに閉ざされていたのだ
男が大声でうめいていたので
白いカモメは砂の巣から飛び立って
男の周囲を群がり羽ばたく
すると男は笑いながら 言葉をかける
「黒い脚の鳥たちよ
白い翼で海面を舞い
曲がったくちばしで海水を吸い
脂ぎったアザラシの肉を食らうものよ
お前達の生活は
お前たちの生活のように苦い
だが幸福な私が味わうのは甘いものだけだ
私はバラの甘い匂いを
月光に養われた
夜なきウグイスの花嫁の匂いを味わう
クリームのいっぱい入った
もっと甘い砂糖菓子を食べる
そして私は 一番甘い
慕い慕われる 甘い恋を味わっている
おお 優しい乙女よ
私は慕われて 慕われているのだ
今あの人は 家の出窓の所に立って
夕闇の通りを眺め
耳を澄まして私のことを思っている
確かにそうだ いたずらに辺りをうかがい
吐息し
吐息しながら庭へおりる
花の香りと月光の中をさまよい
花と語り 花に語り聞かせる
どんなに 愛する私が愛しいか
また 優しいか
確かにそうだ
それからベッドで 眠りの中 夢の中に
楽し気に私の懐かしい姿をちらつかす
朝でさえ モーニングのときでさえ
輝くバタートーストーの上に
私の笑う顔を見て
恋しさのあまり呑み込む
確かにそうだ」
男がこうして自慢を続けていると
冷たい皮肉な 忍び笑いをするように
カモメたちは鳴き叫ぶ
夕霧が立ち昇り
スミレ色の雲から 不気味に
黄緑色の月が顔を出す
海の波は高くざわめき
高くざわめく海底から
海の精の歌声が
ささやく風の流れのように悲し気に響く
美しい泣き叫ぶ海水の精の歌声が
とりわけ耳に聞こえるのは
銀の足をしたペレウスの妃の優しい声
水の女の精たちは吐息して歌う
「おお おバカさん おバカさん
自惚れのおバカさん
恋の悩みに苦しむ人よ
すべてあなたの望みは
はしゃぎ回る心の子供たちは居なくなったのよ
あなたの心はニオベのように
悲観にくれて石になる
あなたの頭は真っ暗になり
妄想の稲妻がきらめき
そしてあなたは苦し紛れに自慢する
おお おバカさん おバカさん
自惚れやのおバカさん
あなたはあなたの祖先のように強情ものね
神々から天の日を奪って人間に与え
そのために岩に縛られハゲタカに苦しめられたのに
オリンポスに逆らい続けてうめき
そのうめき声を私は海底で聴いて
慰めの歌を聞かせに行ってやった
あの祖先の高ぶった巨人そっくりね
おお おバカさん おバカさん
自惚れやのおバカさん
けれどあなたには まるで力などないわよ
だから
よく考えて 神々を敬い
不幸の重荷を耐え忍び いつまでもじっと
耐え忍んでいるのがいいのよ
ついにはアトラスも辛抱しきれなくなって
重たい世界を 肩から
永遠の闇に投げ出すまで」
巨体で知られ、両腕と頭で天を支える
アトラスは
支える者、耐える者、歯向かう者の意味
戦いに敗れたアトラスはゼウス神により、
世界の西の果てで天空を背負うというアトラスには
苦痛を伴う役目を負わされる事となった。
海の精の歌声は
美しい情け深い水の女たちの歌声は
高く押し寄せる波音に消されるまで響き渡った
月は雲の後に姿を没し
夜が大きな世界を広げた
だが
私はいつまでも
闇の中に座って泣いていた
The End
ハイネ詩集から
井上正威訳
おバカさんでもないわ。
自惚れやさんでもないわ。
花も鳥も動物も人間もみんな一緒に
夢見るものが流れているのよ。
ここまでのお付き合い有難うございました。
チェリオ～～～！
