試合成立狙い「故意の三振」 高校野球秋田大会 (朝日新聞) - goo ニュース
ちょいと古いネタで四暗刻。
しかも、よせばいいのに甲子園出場が決まっちゃったから、余計に議論がややこしくなってきている。
これを見て、高校時代のあの「事件」を思いださずにはいられない。
そう、30歳以上の読者諸兄なら覚えておいでの事件で、世間に一石を投じたニュースにもなったのだが、1992年夏の甲子園、星陵高校対明徳義塾の試合における、いわゆるゴジラ松井5連続敬遠事件。
松井にさえ打たれなければ勝てると踏んだ明徳義塾の徹底した作戦は、ゴジラ松井のホームランを期待して集まった客から相当な怒りを買い、試合中であるにも関わらず、スタンドから物が投げ込まれるという、高校野球としてはあるまじき光景が繰り広げられたのを、昨日のように思いだす。星陵高校出身で、当時スタンドで応援していた「元」知人の話では、スタンドの雰囲気たるや、それはもう言葉では言い表せないほど殺伐としたものだったらしい。まさしく「女子供はすっこんでろ」という世界である。
この事件も、この試合と同様に「高校生らしくない」「正々堂々勝負しろや」と、そりゃもう明徳義塾に対して非難囂々だったのだが、あくまで「勝利至上主義」に徹すれば、松井との勝負を避けるのは冷徹な判断であろうし、今回の事件と違うのは、ルールにはなんら抵触しない作戦だからである。どんな球を投げても打ってくる松井。チームの勝利を考えれば、じゃあ松井と勝負しなければいいじゃないか…ということは、高校野球の錦の御旗であるところの「一生懸命のプレー」にもとる行為ではあるが、あくまで「勝利」を考えれば、それについてはなんら批判されることではないだろう。かといって、じゃあまともに勝負にいって打たれて負ければ悔しくないのか…というところは、実際に相手としてプレーしなければわからないだろうこれど。
今回の事件、「作戦上」は、なんら批判されるべき筋合いのものではない。
手を抜く…といえば相手には失礼に当たるだろうが、これ以上点を取っても仕方がないなら、ここまで来た以上、目標である甲子園への切符を手にしたい。そのためには、とっとと終わらせて決勝戦に備える…という判断、ましてや雨でコールドになるか、それともノーゲームになるかでは天国と地獄の差があるわけで、申し訳ないけれどここはさっさと終わらせてもらうよ…とは、まあ普通に考えますわな。プロ野球だったら。
ところが、である。
マナーとかフェアプレーの精神…などと持ち出す前に、実はこのプレイには野球規則上の違反の可能性があるのである。
公認野球規則4.15には、「没収試合になるケース」として、以下の通り書かれている。
つまり、この事件はまるまる試合を長引かせ、または短くするために、明らかに策を用いた場合。という条文に該当する。
相手監督も「正々堂々と最後までやってほしかった」と指摘するのなら、審判団にアピールすれば、即座に12対1が9対0にひっくり返っていた可能性すら大いにあったのである。審判団が没収試合の規則をきちんと理解していないと通じない事柄ではあるのだが、マナーとかフェアプレー云々を持ち出す前に、ボビーみたいに野球規則を持ち出して審判団に詰め寄っていれば、もしかしたら試合がひっくり返っていたのだから、「正々堂々と最後まで戦って欲しかった」という答えは、規則を知っていればとんちんかんな受け答え…と言わざるをえまい。
もっとも、相手秋田高校は秋田高校で、てめえはてめえで遅延行為を働いていたらしいから、審判団に詰め寄っていれば、まずこのことが咎められるのはいうまでもなく、結局かようなコメントしか残せなかったのだろう。
「策士策におぼれる」なんていうのは、一番みっともない醜態なわけで…。
秋田市のこまちスタジアムで22日あった第88回全国高校野球選手権秋田大会準決勝の本荘―秋田戦で、本荘に故意に三振するなどフェアプレーに反する行為があったとして、県高野連は本荘に対し23日の決勝開始までに始末書を求めることにした。
問題の行為は7回表、雨が降り続く中であった。高校野球では、7回が終了すれば雨天でコールドが成立し、そこまでの得点の多いチームが勝者になる場面だった。
県高野連によると、12―1でリードしていた本荘の尾留川徹監督が、1死二塁の攻撃で、打者を呼んで空振りを指示した。打者は三振し、走者も無気力走塁でわざとアウトになった、としている。試合はそのまま7回裏で本荘が12―1のコールド勝ち。
これらの行為を審議するため、高野連は緊急常任理事会を開催。「雨天で試合が中止されることを恐れた故意の行為」「最後まで全力を尽くすべき理念に反する」「相手チームに失礼」などと判断。斉藤尚史部長を呼び、これらの審議結果を伝えた。始末書の提出は、校長、部長、監督の連名で求める。
試合後のインタビューに、尾留川監督は「選手に、空振りしてこいと指示した。マナー的にはどうかと思ったが、早く終わらせて試合を成立させたかった」と答えた。
秋田の佐藤幸彦監督は「最後まで一生懸命やろうとしていたのに、負けた以上の屈辱だ。悔しい」と話した。
(2006年07月22日22時21分 朝日新聞社)
ちょいと古いネタで四暗刻。
しかも、よせばいいのに甲子園出場が決まっちゃったから、余計に議論がややこしくなってきている。
これを見て、高校時代のあの「事件」を思いださずにはいられない。
そう、30歳以上の読者諸兄なら覚えておいでの事件で、世間に一石を投じたニュースにもなったのだが、1992年夏の甲子園、星陵高校対明徳義塾の試合における、いわゆるゴジラ松井5連続敬遠事件。
松井にさえ打たれなければ勝てると踏んだ明徳義塾の徹底した作戦は、ゴジラ松井のホームランを期待して集まった客から相当な怒りを買い、試合中であるにも関わらず、スタンドから物が投げ込まれるという、高校野球としてはあるまじき光景が繰り広げられたのを、昨日のように思いだす。星陵高校出身で、当時スタンドで応援していた「元」知人の話では、スタンドの雰囲気たるや、それはもう言葉では言い表せないほど殺伐としたものだったらしい。まさしく「女子供はすっこんでろ」という世界である。
この事件も、この試合と同様に「高校生らしくない」「正々堂々勝負しろや」と、そりゃもう明徳義塾に対して非難囂々だったのだが、あくまで「勝利至上主義」に徹すれば、松井との勝負を避けるのは冷徹な判断であろうし、今回の事件と違うのは、ルールにはなんら抵触しない作戦だからである。どんな球を投げても打ってくる松井。チームの勝利を考えれば、じゃあ松井と勝負しなければいいじゃないか…ということは、高校野球の錦の御旗であるところの「一生懸命のプレー」にもとる行為ではあるが、あくまで「勝利」を考えれば、それについてはなんら批判されることではないだろう。かといって、じゃあまともに勝負にいって打たれて負ければ悔しくないのか…というところは、実際に相手としてプレーしなければわからないだろうこれど。
今回の事件、「作戦上」は、なんら批判されるべき筋合いのものではない。
手を抜く…といえば相手には失礼に当たるだろうが、これ以上点を取っても仕方がないなら、ここまで来た以上、目標である甲子園への切符を手にしたい。そのためには、とっとと終わらせて決勝戦に備える…という判断、ましてや雨でコールドになるか、それともノーゲームになるかでは天国と地獄の差があるわけで、申し訳ないけれどここはさっさと終わらせてもらうよ…とは、まあ普通に考えますわな。プロ野球だったら。
ところが、である。
マナーとかフェアプレーの精神…などと持ち出す前に、実はこのプレイには野球規則上の違反の可能性があるのである。
公認野球規則4.15には、「没収試合になるケース」として、以下の通り書かれている。
・一方のチームが次のことを行なった場合には、フォーフィッテッドゲームとして相手チームに勝ちが与えられる。
球審が試合開始時刻にプレイを宣告してから、5分を経過してもなお競技場に出ないか、あるいは競技場に出ても試合を行なうことを拒否した場合。ただし、遅延が不可避であると球審が認めた場合は、この限りではない。
試合を長引かせ、または短くするために、明らかに策を用いた場合。
球審が一時停止または試合の打ち切りを宣告しないにもかかわらず、試合の続行を拒否した場合。
一時停止された試合を再開するために、球審がプレイを宣告してから、1分以内に競技を再開しなかった場合。
審判員が警告を発したにもかかわらず、故意に、また執拗に反則行為をくり返した場合。
審判員の命令で試合から除かれたプレイヤーを、適宜な時間内に、退場させなかった場合。
ダブルヘッダーの第二試合のさい、第一試合終了後20分以内に、競技場に現われなかった場合。
つまり、この事件はまるまる試合を長引かせ、または短くするために、明らかに策を用いた場合。という条文に該当する。
相手監督も「正々堂々と最後までやってほしかった」と指摘するのなら、審判団にアピールすれば、即座に12対1が9対0にひっくり返っていた可能性すら大いにあったのである。審判団が没収試合の規則をきちんと理解していないと通じない事柄ではあるのだが、マナーとかフェアプレー云々を持ち出す前に、ボビーみたいに野球規則を持ち出して審判団に詰め寄っていれば、もしかしたら試合がひっくり返っていたのだから、「正々堂々と最後まで戦って欲しかった」という答えは、規則を知っていればとんちんかんな受け答え…と言わざるをえまい。
もっとも、相手秋田高校は秋田高校で、てめえはてめえで遅延行為を働いていたらしいから、審判団に詰め寄っていれば、まずこのことが咎められるのはいうまでもなく、結局かようなコメントしか残せなかったのだろう。
「策士策におぼれる」なんていうのは、一番みっともない醜態なわけで…。
>試合を長引かせ、または短くするために、明らかに策を用いた場合。という条文に該当する。
故意に空振りをする行為が「明らかに策を用いた」
に該当するかどうかは議論の分かれるところだと
思うのですが、「該当する」とされるはなぜか、
教えていただけるでしょうか。
「短くするために、明らかに策を用いた場合。」
というのは、
「走塁をしない」とか「アウトになるため故意に
前の走者を追い越す」等だと考えてました。
コメントありがとうございます。
ご質問の件ですが、当日は雨で、試合が成立するか否かという微妙なコンディションでした。
結局7回降雨コールドということで試合が成立しましたが、故意に試合を成立させんがためにとった行為とするならば、没収試合のルールに抵触するに余りあると判断しました。7回で試合が成立するのなら、ノーゲームにされるよりはとっとと試合を終わらせてくれた方がいいに決まってます。とするならば、無用な攻撃で試合を長引かせてノーゲームに持ち込まれるよりは、このまま何もせずに逃げ切りたい…という考えに至るのは想像に難くありません。無用な走者を出して試合を長引かせ、降雨ノーゲームになってしまったら、それこそ目も当てられませんから。
これが天気がまったくのピーカンで、みっちり9回までやれる展開なら、こうした行為を働いても多分ばれなかったとは思うのですが、功を急くあまりに、あからさまなプレーをしてしまいましたね。
故に、この場合でも、十分規則に抵触する根拠がある…という結論に至りました。
通りすがりのコメントありがとうございます。
実は私は野球経験者というわけではございませんので、ルールの解釈には疎いところがあるのですが…。
高校野球連盟の特別規則、「正式試合の成立」には、このように明記されています。
http://www.jhbf.or.jp/rule/specialrule/11.html
この場合の試合成立の理由は、おそらく得点差…ということになるのでしょうが、解釈上は「7回を終了しないと試合が成立しない」と書かれているわけで、この場合は…、降雨コールドなのか、7回7点差の得点差コールドなのかは…、正式にソースを見ていないのでなんとも判然としませんが、この場合は試合が成立するとすれば、得点差コールドなのでしょうね。
御陰様でちょこっと高校野球の規則に詳しくなりました。
ご指摘ありがとうございました。