▲ 「ナミアゲハ」の卵
6月も深まった梅雨の晴れ間の一日、東京の気温は一気に30℃近くまで上がってしまいます。梅雨が明けると向こう3カ月は連日、真夏日の気温を覚悟しなくてはなりません。街あるきには危険を感じる季節がやってきます。
その日も食糧在庫の買出しに、いつものスーパーへのテクテクコース上の小さな坂の途中にある小さな児童公園に立ち寄り、赤く塗装されたベンチでひと休みしていました。見るとネットフェンスの隣のお宅から公園側に枝を出しているミカンの木(若い「温州みかん」と思われました。)の枝のまわりで、一頭の元気で大ぶりな夏型のアゲハチョウが、落ち着きなく結構なスピードで飛びまわっていました。北のふるさとと違い、東京には実に柑橘系の樹木が路地植えにされていることが多く、歩きまわっていると、ナツミカン、ハッサク、ウンシュウミカン、ユズ、ダイダイ、レモン、カラタチ、キンカン、サンショウ、それにブッシュカンにさえも出会うことがあります。
天気のいい日には、できるだけカメラを首にぶら下げて歩くことにしているので、シャッターチャンスがあるかも知れないと近づいて行くと、人の気配にもかかわらず逃げて行こうともせずに飛びまわっています。ひょっとするとこれは何か重大な状況かも知れないと感じた瞬間、目の前の一枚の若葉にとまり、プックリと太ったお腹をつやつやの葉の面に立てて、まん丸い卵を一個だけ産み落とし、飛び去って行きました。その間わずか1秒か2秒のできごとだったので、産卵シーンそのものは撮影できませんでしたが、生まれてはじめて蝶の産卵に立ち会うことができたのです!
画像のまん中にある1mmにも満たない黄色い球状のものがその卵です。感動のシャッターを切り続けていると、また近寄ってきて私のまわりを心配そうにか、警告を叫んでか、ぐるぐると飛んでいます。ミカンの木の本体の方には他にも3~4頭のアゲハチョウが飛びまわっていました。
買出しもそこそこに帰宅して調べてみると、ミカン科の植物に産卵するのは「ナミアゲハ」(並揚羽,Papilio xuthus)、セリ科の植物に産卵するのが「キアゲハ」(黄揚羽,Papilio machaon)というのだそうです。子供のころから毎年アゲハチョウを多数見かけたり、時には捕まえたりしてはいたものの、黄色いアゲハのはっきりとした区別がつかずにいました。似たように見えますが、ナミアゲハは前翅の根もとまで黄白色の線が入り、全体的に黒い部分が太く、キアゲハは前翅のつけ根が黒ずんだ色で塗りつぶされたようになっているのだそうです。(▼両画像)
▲ 「ナミアゲハ」(並揚羽,Papilio xuthus)/資料画像
▲ 「キアゲハ」(黄揚羽,Papilio machaon)/資料画像
そういえば、6年前2007年の5月に埼玉で買ってきたサンショウの鉢で発生し、成虫となって羽ばたいて行った黄色いアゲハ(▼画像)は、その画像を翌年の年賀状にも使わせてもらいましたが、今にしてみればナミアゲハであったことがここにきてはっきりしました。なんと因縁めいた関係であったことでしょうか。
▲ 「ナミアゲハ」の幼虫 /携帯画像
それにつけ、学名というものは人がヒトにも付けている学問上の記号なのでしょうが、客観的な色彩をもってきた「キアゲハ」はいいとしても、「ナミアゲハ」の「並○○○」ということばは、寿司や鰻や天丼のように、ヒトの生活=所帯染みたお気の毒なことばを頂戴してしまったものです。
よし、これからは「ナミアゲハ」の応援をしていこうと思うのです。
なお、ナミアゲハは、日本昆虫学会による「国蝶」選定の際に、アサギマダラやアオスジアゲハなどと共に候補には選ばれましたが、結局は「オオムラサキ」が選定されたということです。
陽のあたる葉に産みつける蝶の母 蝉坊
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一鉢の葉っぱを全部平らげたらサナギになって飛んでったアゲハの画像です。
サンショウの木も死んだかな?と思っていたら、日経たずして、ボワット全体に新芽が出てきたのに感動したものです。
その鉢も拙宅のベランダの砂漠環境で、いつしか枯れ死してしまいました。
東京で生物学の復習を楽しんどります。
「キアゲハ」はともかく、「ナミアゲハ」という名前は知りませんでした。
それにしても、サンショウを埼玉で買ったのはそんなに以前のことでしたか?
ついこの間だったような気がしていますが、それというのも、小生がついこの間「物心」がついたせいでしょうか。