「なるほどの対話」2005/8/28
河合隼雄 吉本ばなな
河合隼雄先生と吉本ばななさんの対談本です。対談なので、読みやすかったし、内容もなかなか面白かったです。その中で、心に残った文章をいくつか載せ、感想を書きます。
P187~188
河合:昔ふうの、いわゆる馬鹿げた幸福パターン。何かに乗っかってると楽だから。自分で判断できて、自分で自分をたのみにするという人は、まだ少ないんちゃうかな。しんどいからね。自分をたのみにするのは、苦しいけど楽しい。でもみんなは、「楽しい」の方だけやろうとするから、急に「苦しい」に落ち込んだりする。
吉本:「自分をたのみにする」というのは、言葉の響きのよさとは反対に、情けなーい、かっこ悪ーいことの方が多いと思う。
感想:これは、誰かのマネをするのではなく、自分で判断して、自分をたよりに人生を生きて行くってことですかね?誰かをロールモデルにするわけではなく、自分で切り開いていくわけですから、確かに苦しいですよね。
P277~278
河合:この間、アメリカ先住民ナバホの人に会いに行ったんですよ。笛吹いてるんだけど、実際はシャーマンだったという人。その人が、Honesty=謙虚であるということと、Believe in Myself=自分を信じること、このふたつがシャーマンの条件だと言っていました。これ、当たってるでしょ。
吉本:はい。
河合:謙虚であって、そして自分を信じている。このふたつがないとだめだということには大賛成で、それは我々にも通じることですね。そのBelieve in Myselfは、ちょっと振れたら傲慢になってくるからね。「謙虚」も、ちょっと振れていったら自信がない状態につながる。
吉本:そうですね。そのふたつがピタッと同じ重さでつり合ったら大丈夫なんですね。
感想:謙虚であるということ。自分を信じること。本当にこれは私にも必要だなあと感じました。
P111~112
河合:社会へ出ていくとか、だいたい社会というものが、あるのか、ないのか。それからなんで貢献せないかんのか、とか。全部、不明でしょ、ほんとのとこは。
吉本:いやなことなんだけど、やらなきゃいけないというこの感じは、いったい、どこから来てるんですか?
河合:流行り、いまの流行りですよ。
吉本:(笑)
河合:昔だったら、そんなに流行ってないと思いますよ。昔は天皇陛下のために死ぬことが流行ってたというように、時代によって流行りがあるんですよ。
吉本:なるほどねえ。
河合:時代精神に合う人生を送る巡り合わせの人がいるんですよ。そういう人は、調子がいいんですね・・・
ぼくらはだいたい時代精神に合わない人ばかりと会っているわけじゃないですか。だから以前はそういう人たちが頑張って生きてるのを見てたら、時代精神に合ってスイスイやっている人を見ると腹が立っていたんです。「あいつは表面的だ」と。でも、よく考えると、表面的ではないんですよ。それは、その人に合っているだけのことで。
吉本:たまたま時代にすんなりと一致しちゃって。
感想:なるほど・・現在うまくいっている人たちも、第二次世界大戦のときや、戦国時代に生まれていたらどうなるかわからない・・・でも、現在うまくいっていない人は、じゃあ、いつだったらうまくいくのでしょう?未来とか?
P109
河合:学校へ行っていないある方が、私のところに自作の詩を送ってこられた。そこには、学校へ通えない中学生の気持ちが、よく出ている。でも、それはぼくから言わせたら詩ではないんですよ。どう言うたらええかなあ、「こうこう、こういう感じになって学校へ行けていないのだ」という感じはよく出ているんです。そしてその人には、それを出版してほしいという気持ちがある。
ところが、それは出版するまでには至っていない。詩として出版するには、もっと命がかからないと・・・
感想:この本は20年以上前に出版されたものなので、スマホもないし、中学生だとパソコンも持っていなかったかもしれません。出版はともかく、今だったら自作の詩をネットに発信することは、割と気軽にできるのではないでしょうか?そういった点では、今はいい時代なのかもしれません。