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「生贄探し 暴走する脳」中野信子 ヤマザキマリ

2024年10月27日 | 本 レビュー

「生贄探し 暴走する脳」2021/4/22

 中野信子 ヤマザキマリ

コロナ禍の最中に書かれた本書は、どこか息苦しく、読んでいて辛くなってしまいました。で、結局「日本」という国はいいのか悪いのか、よくわからないまま読み終えてしまいました。未曾有の事態の中、誰かを悪者に仕立てあげないと気がすまないような醜さとか、なんだかヒトってめんどくさいなあと感じました。

P38~39
世界でもいじわる行動が突出している日本人
中野:「日本人は親切だ」「日本人は礼儀正しい」「日本人は真面目だ」「日本人は協調性がある」というお決まりの誉め言葉があります。


確かにそのとおりでしょう。でも日本人として日本に長く暮らしていると、手放しで喜んでよいものなのかどうか、一抹の不安もよぎります。これは一面的な見方であって、本当に美しい心からそういう振る舞いがなされているのだろうか...

冷静に考えれば、親切で礼儀正しいのは、相手に対して無礼に振舞ったことが広まって誹謗されることによる不利益を被るリスクを抑えるためであったり、真面目なのは誰かから後ろ指をさされて村八分にならないための自衛行為であったりもします。

☆感想☆
昔は村八分ってよくあったみたいですね(今も?)。他の人と歩調をあわせられない、目立ったことをする者、あるいは、よそ者とか、共同体には必要ないってことですかね?枠からはみ出さないように生きるって、なんだかとても息苦しい気がします。みんながみんな、そんなに要領よく生きられないのになあと感じました。でも、日本人のあいまいなところ、たとえばお正月には神社へお参りに行き、お葬式では、お坊さんにお経をあげてもらう。クリスマスをお祝いしたり、今だとハロウィンで盛り上がるところなど、いろいろなものを柔軟に受け入れるところは結構いいなあと思っています。

 

P186
ヤマザキ:たまに「自分は孤独を愛している」とか「群れるのは嫌いで単独行動が好き」という人もいますが、本当の孤独というのはそうした生き方のスタイルではなく、他者という鏡に自分が映し出されていないと気づいた瞬間でなければ、実感できないものだと思います。

☆感想☆
これは痛いところを突かれた感じですが、私自身、単独行動が好きになったのはそれなりに理由があってのことで、結局、世渡り下手ってことなんでしょう。持って生まれた性格もあるし、これまでも、私ってヒトという種に向いていないんではないか?と心の中で思いつつ、それは言い訳だ、甘えだ、と自分を律してきました。本当の孤独がどういうものかわからないですが、中には選んでそういう状態にしている人もいるのではないでしょうか?

 

P166
中野:仏典にこういう話がありました。王と王妃が会話していて、人を幸せにするのに自分を犠牲にすることの是非についての議論をしてたか何かで、この王と王妃がなかなか冷静で知的なふたりで、「あなたのためなら死ねるわ」とか安っぽいことは言わないの(笑)。「やはり自分にとっては自分が大事ですよね」とおたがいに言う。それを見て釈尊が、「自分にとって自分は大事、だからこそ相手も自分が大事だ」ということを尊重し合うことが大切ということを確かめ合うという。国家の指導者夫妻がこのようであれば、民も幸福ですね。

☆感想☆
自己犠牲より、まずは自分を大事にすること、そして相手も自分が大事であることを認めて尊重すること。本当にそうですよね。そして個人的に思ったのは、まず最初にすべきことは私自身を大切にすることではないか?そこからスタートしていけば、何か道筋が見えてくるかもしれないな、と思いました。