数週間前、学校にいきなり教育長(教育委員会の一番偉い人)から電話がかかってきて
「生徒が毎日背負っている鞄の平均重量を報告しろ。あわせて、学校に置いていって良いもの、ダメなものがどのような規定になっているのかを至急報告しろ。」
という指令が下りました。
学校としては、「報告するのは良いけどそんな急に言うなよ。」です。
なんでこんな話になったのかは明確。
どこかの保護者の方が、こんなに重い荷物を背負わせるのはおかしいだろうと学校に文句を言い
SNS等でそれに賛同する声を上げた保護者が多数出たからです。
本題に入る前に「おきべん禁止」とは何かについて確認をしておきましょう。
おきべんとは
教科書やノート、ワーク等の勉強に必要な用具を持って帰らずに学校に置きっ放しにしておくことで
「おきべん禁止」とは、その名の通り、おきべんを禁止するルールのことです。
保健体育の資料集のように、使用する機会が限定的なものはこの禁止令の例外とされ
そのセーフリストは学校ごとに示されている(はず)です。
このルールの背景には
勉強とは家庭でもするものだ
→教科書等を置きっ放しにしては家庭学習ができない
→よって、持って帰らなければならない
という理屈が存在します。
これだけなら、実に理にかなった話のように見えますよね。
実際は、非合理的です。
試しに、手元の理科の教科書の質量を量ってみました。
およそ600gでした。
ノートもほぼ同じと概算すると、1教科のノートとワークでおよそ1kgです。
教科書とノートが授業を受けるために最低限度必要なものだとして
1日に6時間ある授業のうち5時間が教科書とノートが必要な授業
残りの1教科は体育のような必要の無い授業の日の準備をすると仮定しましょう。
すると、教科書ノートだけで約5kg。
それに、1Lのお茶を入れた水筒を加えたら約6kg。
さらに、筆記用具に体操服や連絡帳、授業によっては教科書ノートだけでなくワークも毎回持ってくるよう要求する教師もいますので
合計7kg程度の荷物になります。
例えば体重が40kg弱の中1女子であれば
自重の6分の1の荷物を背負って、歩いて登下校することになります。
ちなみに、うちの学区であれば
学校から最も遠い生徒で片道およそ50分、自転車通学は例外なく認められていません。
(この学区割りもアホです。誰が決めたのでしょう。ちなみに私の自宅は勤務校から徒歩20分ですが、学区外ですよ)
今年からの本校はエアコンが装備されたので、まだ良いですが
そうで無かった時代は、学校までたどり着くまでに相当なエネルギーを消費していました。
ということで、おきべん禁止令は、学校のルールの中で、合理性を欠くものの1つだと私は思っています。
以前、これ何とかなりませんかねと提案してみたのですが
「だってどうしようもないじゃん。許可したらみんなおきべんして家庭学習しなくなるよ?」
と一蹴されました。
そのとき私は、勉学等の生産的な活動には健康が前提じゃねーのかよと、心の中で悪態をつきましたが、それ以上何も口にはできませんでした。
せめて、と私が実施していることは2つ。
1つ目は、私の授業では、教科書とノートは持ってきて欲しいがそれ以外はすべて任意としました。
というか毎回使うわけでもないワークを毎回もってこいという教師は配慮不足だと思います。
2つ目は、これは今年度は担任を外れてしまったので実施していたという過去形の事なのですが
おきべんの黙認。
見かけても軽く「ちゃんと持って帰れよー」と言うだけ。
それ以上は追求しないし、ちゃんと持って帰ったかを確認することもせず、保護者連絡もしませんでした。
これは、職員室という職場のチームワークを乱す行為であり、良くないことだと自覚していました。
しかし、私にはどうしてもおきべんがそこまで罪深いことだと思えなかったのです。
だって重いじゃん。
ちなみに2つ目の施策は、他の教師に知られて、はげしく揉めたことがありました。
私がこのルールの非合理性を主張すると
「今までみんなそうやってきた」
「あなたが何と思おうと、現に存在するルールなのだから守らせるのがあなたの立場だ」
と言われました。
可能な対応は何でしょうか。
思いついた順に、いくつか書いてみます。
教科書の分冊化はどうでしょうか。
例えば、現状で「1年生理科」と一冊にまとめられているものを
5分冊くらいにしてはどうでしょうか。
先ほどの600gの教科書を5分冊にすれば、120g。
大分軽量化できます。
しかしこれにはデメリットもあります。
授業をしていて、「前やったあれを思い出せ、教科書で言うと〇〇ページだ」
と振り返りを指示することが多々あります。
これができなくなる可能性があります。
このデメリットはとても大きいので、どの教科書会社もやっていないし、今後も行なわれないと思われます。
次に私が思いついたのは、教科書の電子化です。
教科書はすべてタブレットによる電子教科書とするのです。
タブレットを800gくらいだとすれば、2kgくらいは軽くできるでしょうか。
しかしながら、全生徒に1人1台タブレットを配る財政的余力が、現在の我が国にあるとは思えませんし
子を持つ親すべてに購入させるというのも難しい気がします。
では、教科書を1人2冊配るというのはどうでしょうか。
これもやはり、タブレットを配るよりはマシでしょうけど、コストが壁になります。
この場合、授業中に先生が「ここ大事だから赤線引いとけ」と言った部分が、家庭用教科書では赤線が引かれていないという事象が発生します。
これはデメリットですが、おきべん禁止による体への負担に比べれば小さなデメリットであると私は判断します。
以上が、私が思いつく対応策です。
もっと賢いやり方があれば、ぜひ文書化して文科省なり教育委員会なりに、保護者の名において送りつけて下さい。
ちなみに、私の見解としては
先述したどの対応策も、金がかかるので今のこの国にできることとは思えず
(というかそんな金あるならエアコン入れろ)
もういっそのことおきべんを解禁するべきだと思います。
勉強に意欲のある奴は、禁止されていなくても持ち帰る。
意欲のない奴は、持って帰ってもやらないわけで、体に負担をかけるだけ害でしかない。
また、能力のある奴はワークさえあれば学習できるわけで、おきべんを禁止する必要が無い。
そして、意欲はあるが体格的に厳しい生徒については、体調等と相談しながら、持って帰るかどうかを自分で決められるようにすれば良いと思うし
2冊目は有料になるけれども、家用の教科書を買いたい生徒はもっと手軽に買えるようにすれば良いと思うのです。
教科書の流通については、謎のルールがあり
指定された書店しか扱うことができません。
多くの書店で、学習参考書がたくさん置いてあっても、教科書が売られているのって見たことないですよね?
そのような規制のせいです。
この規制を無くし、2冊目を買いたい生徒は手軽に買えるようににするべきです。
何にせよ、この件についても
ヒラ教師が声を上げても状況は動かないが、保護者がちゃんと理論武装して声を上げれば、状況は動くと言うことを実感しました。
ぜひ、保護者の皆様におかれましては、声を上げて下さい。
そうすれば、公教育は少し良くなる気がします。
180904
関連記事を投稿しました。
こちらです。
「生徒が毎日背負っている鞄の平均重量を報告しろ。あわせて、学校に置いていって良いもの、ダメなものがどのような規定になっているのかを至急報告しろ。」
という指令が下りました。
学校としては、「報告するのは良いけどそんな急に言うなよ。」です。
なんでこんな話になったのかは明確。
どこかの保護者の方が、こんなに重い荷物を背負わせるのはおかしいだろうと学校に文句を言い
SNS等でそれに賛同する声を上げた保護者が多数出たからです。
本題に入る前に「おきべん禁止」とは何かについて確認をしておきましょう。
おきべんとは
教科書やノート、ワーク等の勉強に必要な用具を持って帰らずに学校に置きっ放しにしておくことで
「おきべん禁止」とは、その名の通り、おきべんを禁止するルールのことです。
保健体育の資料集のように、使用する機会が限定的なものはこの禁止令の例外とされ
そのセーフリストは学校ごとに示されている(はず)です。
このルールの背景には
勉強とは家庭でもするものだ
→教科書等を置きっ放しにしては家庭学習ができない
→よって、持って帰らなければならない
という理屈が存在します。
これだけなら、実に理にかなった話のように見えますよね。
実際は、非合理的です。
試しに、手元の理科の教科書の質量を量ってみました。
およそ600gでした。
ノートもほぼ同じと概算すると、1教科のノートとワークでおよそ1kgです。
教科書とノートが授業を受けるために最低限度必要なものだとして
1日に6時間ある授業のうち5時間が教科書とノートが必要な授業
残りの1教科は体育のような必要の無い授業の日の準備をすると仮定しましょう。
すると、教科書ノートだけで約5kg。
それに、1Lのお茶を入れた水筒を加えたら約6kg。
さらに、筆記用具に体操服や連絡帳、授業によっては教科書ノートだけでなくワークも毎回持ってくるよう要求する教師もいますので
合計7kg程度の荷物になります。
例えば体重が40kg弱の中1女子であれば
自重の6分の1の荷物を背負って、歩いて登下校することになります。
ちなみに、うちの学区であれば
学校から最も遠い生徒で片道およそ50分、自転車通学は例外なく認められていません。
(この学区割りもアホです。誰が決めたのでしょう。ちなみに私の自宅は勤務校から徒歩20分ですが、学区外ですよ)
今年からの本校はエアコンが装備されたので、まだ良いですが
そうで無かった時代は、学校までたどり着くまでに相当なエネルギーを消費していました。
ということで、おきべん禁止令は、学校のルールの中で、合理性を欠くものの1つだと私は思っています。
以前、これ何とかなりませんかねと提案してみたのですが
「だってどうしようもないじゃん。許可したらみんなおきべんして家庭学習しなくなるよ?」
と一蹴されました。
そのとき私は、勉学等の生産的な活動には健康が前提じゃねーのかよと、心の中で悪態をつきましたが、それ以上何も口にはできませんでした。
せめて、と私が実施していることは2つ。
1つ目は、私の授業では、教科書とノートは持ってきて欲しいがそれ以外はすべて任意としました。
というか毎回使うわけでもないワークを毎回もってこいという教師は配慮不足だと思います。
2つ目は、これは今年度は担任を外れてしまったので実施していたという過去形の事なのですが
おきべんの黙認。
見かけても軽く「ちゃんと持って帰れよー」と言うだけ。
それ以上は追求しないし、ちゃんと持って帰ったかを確認することもせず、保護者連絡もしませんでした。
これは、職員室という職場のチームワークを乱す行為であり、良くないことだと自覚していました。
しかし、私にはどうしてもおきべんがそこまで罪深いことだと思えなかったのです。
だって重いじゃん。
ちなみに2つ目の施策は、他の教師に知られて、はげしく揉めたことがありました。
私がこのルールの非合理性を主張すると
「今までみんなそうやってきた」
「あなたが何と思おうと、現に存在するルールなのだから守らせるのがあなたの立場だ」
と言われました。
可能な対応は何でしょうか。
思いついた順に、いくつか書いてみます。
教科書の分冊化はどうでしょうか。
例えば、現状で「1年生理科」と一冊にまとめられているものを
5分冊くらいにしてはどうでしょうか。
先ほどの600gの教科書を5分冊にすれば、120g。
大分軽量化できます。
しかしこれにはデメリットもあります。
授業をしていて、「前やったあれを思い出せ、教科書で言うと〇〇ページだ」
と振り返りを指示することが多々あります。
これができなくなる可能性があります。
このデメリットはとても大きいので、どの教科書会社もやっていないし、今後も行なわれないと思われます。
次に私が思いついたのは、教科書の電子化です。
教科書はすべてタブレットによる電子教科書とするのです。
タブレットを800gくらいだとすれば、2kgくらいは軽くできるでしょうか。
しかしながら、全生徒に1人1台タブレットを配る財政的余力が、現在の我が国にあるとは思えませんし
子を持つ親すべてに購入させるというのも難しい気がします。
では、教科書を1人2冊配るというのはどうでしょうか。
これもやはり、タブレットを配るよりはマシでしょうけど、コストが壁になります。
この場合、授業中に先生が「ここ大事だから赤線引いとけ」と言った部分が、家庭用教科書では赤線が引かれていないという事象が発生します。
これはデメリットですが、おきべん禁止による体への負担に比べれば小さなデメリットであると私は判断します。
以上が、私が思いつく対応策です。
もっと賢いやり方があれば、ぜひ文書化して文科省なり教育委員会なりに、保護者の名において送りつけて下さい。
ちなみに、私の見解としては
先述したどの対応策も、金がかかるので今のこの国にできることとは思えず
(というかそんな金あるならエアコン入れろ)
もういっそのことおきべんを解禁するべきだと思います。
勉強に意欲のある奴は、禁止されていなくても持ち帰る。
意欲のない奴は、持って帰ってもやらないわけで、体に負担をかけるだけ害でしかない。
また、能力のある奴はワークさえあれば学習できるわけで、おきべんを禁止する必要が無い。
そして、意欲はあるが体格的に厳しい生徒については、体調等と相談しながら、持って帰るかどうかを自分で決められるようにすれば良いと思うし
2冊目は有料になるけれども、家用の教科書を買いたい生徒はもっと手軽に買えるようにすれば良いと思うのです。
教科書の流通については、謎のルールがあり
指定された書店しか扱うことができません。
多くの書店で、学習参考書がたくさん置いてあっても、教科書が売られているのって見たことないですよね?
そのような規制のせいです。
この規制を無くし、2冊目を買いたい生徒は手軽に買えるようににするべきです。
何にせよ、この件についても
ヒラ教師が声を上げても状況は動かないが、保護者がちゃんと理論武装して声を上げれば、状況は動くと言うことを実感しました。
ぜひ、保護者の皆様におかれましては、声を上げて下さい。
そうすれば、公教育は少し良くなる気がします。
180904
関連記事を投稿しました。
こちらです。
「教科書の何ページまで戻って」という時は、ノート(ルーズリーフ)の片隅にメモしておいて自宅で確認していました。
教科書の何ページまで戻って...支持された時は出来ないので、ルーズリーフの隅っこに書いといて、家で復習していました。
教科書を分解しちゃったので、専用の袋に纏めていれておいて、他の教科と混ざっちわないようにしていました。
ワンゲル部なら重いカバンもいいでしょうが、そうで無い場合はそれなりに工夫しても悪くないと思います。
因みにですが、クラスの半数の子がやっていたので、先生はもう何も言わなかったし、私達も「だから成績が芳しくないんだ」とは言わせませんでしたよ。
自分で分冊化ですか……
これは私が遭遇したことないケースです。
とても難しいですね。
「工夫」として認めるか
「教科書の損壊」として指導対象とするか
多分それだけで職員会議になりそうです。
>>因みにですが、クラスの半数の子がやっていたので、先生はもう何も言わなかったし、私達も「だから成績が芳しくないんだ」とは言わせませんでしたよ。
それは高校だから通じたことだと思います。
中学校ではそれは難しいなぁ、と思います。
重量問題観点
もう一つ、見方を増やしてみて下さい。
翌日の準備を前日夜に行い、
忘れ物が内容に登校をする。
備える能力を養う観点です。
恥ずかしい…。
そのような教育効果は、確かにあると思います。
しかしそれは健康が前提かと。
ですから、追加したこの記事
https://blog.goo.ne.jp/kikuchi5920/e/6a69de34ebe0e6860d44e9232e163057
でも書いたように、分冊化等の対応が必要だと思います。
今日はこれっていう、一教科持って帰れば十分。
そもそも、あんな重い物を持って移動するだけでも体力は奪われますからね
それなのに部活頑張れ、勉強頑張れ、これは無理な話です。