京照日記

アンティーク店の京照が「着物に対する熱い思い」と、お客さんとの会話で気が付いたことを発信しています。

ゆけゆけ、甘之介。初お目見えどす。

2013年10月08日 18時55分05秒 | ヒラメキのヒント
リンちゃん、こんばんわ。

あんまり、暑いのと、なんかしんどい世の中なんで、おもしろいこと、しまひょ。

そうどす。

「ゆけゆけ、甘之介」①どす。

秋の声をきいても、じんわりと吹き出す汗は、夏のそれと同等だった。

日差しが高い。

もう、半時で、昼餉の頃。

奥から、衣擦れの音を引いて、かなり年代をへた襖を、そおろと、開けるものが、あった。

あの歩から、たぶん奥女中のミヤとさっし、甘之介は縁側の板の上で、身づくろいをする。

甘之介は、このミヤには、頭があがらない。

正論が大好きなミヤなので、一つ一つに反論するのが、おっくうなだけ。

そのミヤが説教するまでもなく、昼餉の支度と、供の辛之臣の来城をつげた。

めずらしいこともあるものだ。

甘之介は、懐手から、右手をだして、ぞろっとした顔をなでた。

旅立ちのまえに、ミヤに手配させ、顔をあたることにしよう。

そう考えると、すこし身も心も軽くなり、浮き立つ足取りをミヤに気取られまいと、咳払いなどして、身構えた。

あまり広くはない山城ではあるが、きれい好きのミヤのおかげで、すみずみまで、手入れがいきとどいている。

母上がミヤに教え込んだようだな。

父上も母上も、もうこの世になく、今は、良くも悪くも甘之介が当主である。

それゆえ猫が15匹も城内に飼われており、口さがない者に、「猫屋敷」と呼ばれてたりする。

「困ったことだ」。甘之介はひとりごちて、奥台所に繋がる、北の小部屋の襖に手をかけた。

「若。ご無沙汰でござる。」この大男は、幼馴染の塩麹辛之臣である。

まったく、人の心の機微が読めず、おまけに「甘いもの」が苦手である。

なにが楽しみで生きているのか、甘之介には、まったく理解ができない男である。

あー、しんど。

これから、リンちゃんのお女中と、うちが大男の辛之臣が、名古屋に「あんこトースト」を食べに旅立つんどす。

疲れたから、この辺で。

あ、明日は試食会どすけど、大雨やったら、中止どす。

手ぶらで来ておくれやす。

ほなな。

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