里海邸|大洗海岸。東京都心より90分、大海原が広がる静かな別邸へ

「素朴を上質に」海の別邸は、隠遁時間。~波と光色。湯と縁側。陶と食。磯と木の食卓。|里海邸 金波楼本邸 公式ブログ

原点回帰

2010年11月13日 | 里海邸の日記
上の画像は、明治26年に作成された金波楼を紹介するポスターです。

現在のパンフレットのようなものでしょうか。

ポスターに描かれた建物は、当時流行していた擬洋風建築の初代金波楼の本邸と、3つの別邸です。


この建物の特徴は、

昔ながらの土間玄関、
腰掛けられる高さの式台と畳の取次、
海側に設けたベランダのある客室、
波打ち際ににあずまや風の桟敷席が、食事席として用意されている

などです。


ポスターには、板敷の渡り廊下を歩いて料理を運ぶ宿の人の姿も描かれています。
食事処は潮騒に包まれて、さぞ風情があったでしょうね。


この建物は、日本家屋の寛ぎとともに、海の風情やエネルギーを全身に浴びることのできる空間となっておりました。


ポスターには「海水浴」と書かれていますが、この当時の海水浴は温泉療養と近い形態でしたので、現在のようなレジャーの雰囲気ではなかったようです。しかも波の激しいところが海水浴好適地ということですから、昔から当館近傍は荒波だったのですね。


こうした自然を大胆に取り込む建物構造が原因なのか、激しい海辺の環境に耐えられず、どうやら壊れてしまい、数年後の絵を見ると建物がすっかり変わってしまいました。2代目の建物からは、桟敷席もベランダもなくなってしまいました。


現在新しく建てている旅館は、初代の旅館建築が目指していた空間を120年振りに、平成の時代にアレンジして再現しようとするものです。

これまで3回にわたる建築経験を生かし、もう一度、創業時の建て方にチャレンジします。

再び、日本家屋の寛ぎとともに、海の風情やエネルギーを全身に浴びることのできる空間を目指します。



歓楽型旅行の時代を経て、
自然の中で保養する宿が1世紀ぶりに帰ってきます。