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冬のソナタに恋をして

誰にも言えない気持ち

ユジンはどうしてもサンヒョクにイミニョンと一緒に働いていることを言えなかった。
言えば情熱を傾けている仕事を辞めろと言われるに決まっている。それ以上に自分では認めたくないけれど、ミニョンをもう少し見ていたかった。彼のそばにいると、チュンサンを感じられる。

ユジンは、ミニョンとチュンサンが、他人の空似にしては、あまりにも似すぎている、と思った。同一人物だといいのに、という願望もあって、チェリンの店に行き、恐る恐る聞いてみた。しかし、チェリンは勝ち誇ったような顔で、ミニョンはアメリカ生まれのアメリカ育ちだと断言した。チュンサンならみんなを覚えているはずだから当たり前なのだか、それでもユジンはひどく落胆した。




ユジンはどうしてもミニョンを意識してしまうので、なるべく通りいっぺんの対応をして、極力避けようとしていた。ユジンが避けようとすればするほど、ミニョンはユジンを近くに引き寄せようとした。ユジンが担当でないとポラリスと契約しないと言ったり、仕事終わりに飲みに行こうと言ったりした。こんなに努力して平静を装っているのに、あんなに無防備な笑顔で誘ってくるなんて、心の壁が崩れてしまいそうだ、ユジンは必死の抵抗を試みていた。



一方でミニョンは、ユジンの無関心で冷たい態度に興味をそそられた。本当は自分に興味があるのに、わざと距離をとっている感じがした。しかも時々、あの真剣な眼差しでじっと自分を見つめている気もする。婚約者がいるのは分かっているけれど、ユジンの気を引きたくて仕方なかった。ミニョンは女性に関心を持たれない事が一度もなかったから。

ある日、キム次長とチョンアさんの代わりに、ドラゴンバレーに2人で偶然行くことになった。待ち合わせ場所に行ったら、キム次長のかわりにミニョンがいたのだ。ユジンはどうしたら良いかわからなくて、暗い顔をして、ミニョンの車に乗り込んだ。とにかく気まずかった。しかし、ミニョンはあのとびきりの笑顔でユジンに話しかけてきた。チュンサンと違って、ミニョンはどこまでも明るく、社交的なのだ。顔は一緒でも2人は全然違う。

ミニョンは、ユジンの左手の婚約指輪が💍気になってしかたなかった。恋をしている女性特有の輝くオーラも感じられない。なぜこんなに憂鬱そうなんだろう。まさか、自分がそのオーラを奪っているとは思わなかったけれど。

そのとき、ユジンが少しだけ車の窓を開けた。冬の空気が車内に流れ込んで、ユジンの髪の毛の香りがした。懐かしい、胸の奥で何かが、ザワザワしはじめた。
「ユジンさんは何のシャンプーを使っているんですか。スミレのような香りがします。」
すると、珍しくユジンが微笑んで言った。
「昔からスミレのシャンプーが好きなんです。
名前は忘れたんですけど、香りがする真っ白なスミレがあって、そのスミレから取れる成分が入ってるんです。わたし、その白いスミレが大好きなんです。しっかりと野原に根を張って、可憐に白い花を咲かせているから。花屋の花よりもずっと強くてたくましいから好きなんです。」
白い顔を少し赤らめて話すユジンは、ちょうど白いスミレがこうべを垂れているようで美しかった。
「もしかして、むかし好きな人にそう言われたんですか」
ユジンはますます顔を赤くして、かすかにうなずいた。その目はずっと遠くを見ているようだった。

ミニョンは思った。チェリンは花屋で私を買ってと主張している鮮やかな赤いバラ🌹のようだ、でもユジンは野にひっそりと咲いていて、偶然見つけると嬉しくて自分のためだけに持って帰りたくなる一輪のスミレのようだ。自分はどちらが好みだろうか。
2人が押し黙り、窓が閉められると、車の中のスミレの香りがミニョンを包みこんだ。

ミニョンはまた話し始めた。
「ユジンさん、血液型はA型ですね。自分の感情に正直で、嘘がつけないし、肝心な事は言えないタイプでしょう?」
ユジンは妙に当たっているのにムッとして黙っていた。この人は心を読む天才だろうか。
「理事」と呼びかけると、
「イミニョンて良かったら呼んでください」とまたにこやかな微笑みを浮かべている。ユジンはドキドキしていたたまれなかった。
そしてミニョンもついユジンをかまいたくなる自分が、不思議だった。

スキー場につくと、2人は精力的に仕事をした。お互いのアイデアを話し始めると、構想がどんどん膨らんでいく。ミニョンもユジンも一緒に仕事をするのが楽しくて仕方がなかった。
ミニョンは独創的なアイデアを次々とに出して、ユジンはそれが現実的か、またお客様にとって快適かどうかを考えて具体的な案にするのが上手だった。2人は仕事では最高のパートナーだった。

ある日キム次長が言った。
「イ理事は変わりましたね。今までは自分中心の仕事の仕方をしていて、周りを困らせていたのに、この頃はみんなの意見に耳を傾けて、素直に取り入れるようになりましたね。うん、これはポラリスのチョンユジンさんのチカラだな。チョンユジンだ、チョンユジン。あはは。」
「先輩、それじゃまるで、僕が自分勝手みたいじゃないですか」
「えっ、違うのかい?」
キム次長は笑いながらヒラヒラと手を振って行ってしまった。
ミニョンの中で何かが変わっていくのを感じていた。

コメント一覧

kirakira0611
アッコさま、ありがとうございます😊
サイドストーリーは本当はもともと読んだ人を対象に、ドラマの隙間を書こうと思ったんです。でも、予想以上にドラマを知らないのに、読んでくれる方がいて、これは本作を書かなければ意味不明になる、とシフトしました。
時々今日みたいに本筋を邪魔しないほどの創作もしてますが、最近はほぼ原作です。
ただ、ドラマではあまり分からない心の動きは自分で考えて書いてます。あと、細かすぎてどうでも良いストーリーはばっさり切ってます。
たしかに韓流図式がありますね。
執着、そうですね。ユジンも執着、サンヒョクも執着な気がします。
最近はそれに疲れてしまい、韓国ドラマは観なくなりました。
しかも、ブログで書くだけでも疲れてます。
自分が思っていたのと、全然違うブログになっちゃって(笑)楽しいです。
あと、俳優さんのビハインドストーリーも混ぜたかったけど、未だ実現してません。
そんな感じです。
またよろしくお願いします。
chorus-kazeアッコ
こんばんは〜(^-^)
沢山のリアクションを頂きありがとうございました。
「冬のソナタ」のサイドストーリーとかで
これは ご自分で想像して書かれているんですか?
凄いですね〜。
このドラマで韓流にハマりましたが、これ以降色々観て
韓流ドラマの図式というか、定番の描き方がありますね。
人の感情の機微というか、思い入れなど
こういうものを、きめ細やかに描いています。
「愛情」ではなく「執着」だというのもよくあるパターンで。
でも、アルアル感が半端なくて共感してしまいますね。
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