その日サンヒョクはラジオ番組を終えて、ほっとしてスタジオを出たところだった。すると幾分やつれた様子のチェリンがぼんやり立っているのが見えた。
サンヒョクはしばらく考え込んだあと、社内の企画会議に臨んだ。
その足でサンヒョクは実家を訪れた。何かしないと、いてもたってもいられなかった。サンヒョクは両親を前にして言った。
サンヒョクはユジンに全く連絡しないまま、スキー場のコンサートの準備をすすめた。悲しいことに、ユジンからの連絡も途絶えていた。サンヒョクはこのコンサートに全てを賭けるつもりで、ユジンに内緒でスキー場に行くことを決めていた。今回は下見のためだったが、サンヒョクは車にヨングク、チンスク、チェリンを乗せて行くことにした。仲間うちで盛り上がれば、ユジンの心もほぐれるかもしれない。
ところが、スキー場に着くとチョンアとキム次長の口から驚くべきことが語られた。
サンヒョクが吹雪の中を無理矢理歩き出そうとするのを、ヨングクが、押さえつけた。
いつも何かトラブルを持ち込むチェリンのことだ。またろくな事がなさそうだ、、、。サンヒョクはチェリンにコーヒーを渡して、小さくため息をついた。
チェリンの顔には不安の色がいっぱいで、しかもイライラした様子だった。
「サンヒョク、あなたはいったい何をしてるの⁉️」
「❓❓」
さっぱり意味がわからないが、チェリンは機関銃のように慌てて話した。
「早くユジンと結婚しなさいよ」
「ねえ、助けてよ」
目には涙まで浮かべている。
「お前、イさんと何かあったのか?」
目を伏せてモゴモゴと誤魔化すチェリンに付き合いきれず、サンヒョクはくるりと背をむけた。
すると、チェリンは涙を流しながらサンヒョクの腕を掴んだ。
「ミニョンさんがね、、、わたしを遠ざけているの、、、原因はユジンよ、、、」
サンヒョクの顔色が変わった。
「ユジンのせいでイさんと別れたのか?」
チェリンはただただ泣くばかりだった。事態は思った以上に深刻だった。イミニョンの目に浮かんだユジンを見る表情を思い出すと、胸が苦しくなる。そして、チュンサンが忘れられないと泣いたユジン、あの人は大丈夫?と問いかけた顔を思い浮かべると、居ても立っても居られなかった。
サンヒョクはしばらく考え込んだあと、社内の企画会議に臨んだ。
この冬の目玉企画であるコンサートについて、上司に提案をしたのだ。
「平昌のスキーリゾートはどうでしょうか。」
書類に目を通していた上司はびっくりして、スターDJのユヨルは半分呆れた顔をしていた。それでも、ユヨルはサンヒョクの気持ちを汲んで、スキーリゾートで公開放送したらどんなに素晴らしいかを力説してくれた。
それでも幹部職員は腑に落ちない顔をして、
「誰がそんな案を考えたんだ?」と言った。するとサンヒョクはキッパリと
「僕のアイデアです。恋人がスキー場で働いているんです。」と言った。みんな、公私混同もすぎるサンヒョクに、ポカンとした顔をしていたが、あまりに熱弁するので、押し切られる形で会議は進んで行った。
その足でサンヒョクは実家を訪れた。何かしないと、いてもたってもいられなかった。サンヒョクは両親を前にして言った。
「どうしても早くユジンと結婚したいんです。」
最後には膝をついて母親の許しを乞うた。しかし、母チヨンの気持ちは頑なだった。サンヒョクが、一方的にいつもユジンに夢中になっていたし、ユジンのことになると自分など二の次だった。しかも、先日は婚約式をドタキャンされてしまい、大恥をかいたではないか。到底嫁としては受け入れられなかった。チヨンは怒って部屋を出て行ってしまった。
一方で父親のジヌも不安にかられた。結婚を急がなくてはならない理由とは?まさかユジンは妊娠しているのだろうか。
しかし、サンヒョクは
「ただユジンを失いたくないんです。」と繰り返すばかりであった。サンヒョクは必死だった。ユジンがミニョンを助けたのは、チュンサンに似ているからではないと、本能が告げていた。もし、ユジンが自分の元を去ったら、もう生きてはいけないと本気で思った。ユジンが他の男に抱かれることなど、考えたくもなかった。ならば、無理矢理にでも、自分の腕に閉じ込めなければ、サンヒョクの愛は執着になり、もはや執念にまでなっていた。この結婚を諦めるものか、サンヒョクは心に誓った。
サンヒョクはユジンに全く連絡しないまま、スキー場のコンサートの準備をすすめた。悲しいことに、ユジンからの連絡も途絶えていた。サンヒョクはこのコンサートに全てを賭けるつもりで、ユジンに内緒でスキー場に行くことを決めていた。今回は下見のためだったが、サンヒョクは車にヨングク、チンスク、チェリンを乗せて行くことにした。仲間うちで盛り上がれば、ユジンの心もほぐれるかもしれない。
サンヒョクが行ってきます、と両親に告げると、また母親のチヨンが不機嫌そうな顔をしていた。
「また、ユジンのところに行くのね。全く情けないわ」
そんなチヨンの話をサンヒョクは流して、父親のジヌは宥めるのだった。
一方で、チェリンはミニョンに会うことに不安しかなかった。先日のあの冷たい顔を思い出すと、心が凍えそうだった。
それぞれの思いをのせて車はスキー場に向けて出発した。
ところが、スキー場に着くとチョンアとキム次長の口から驚くべきことが語られた。
ミニョンとユジンが山頂のレストランに取り残されていて、ゴンドラは強風で一晩動かないと言うのだ。サンヒョクは狂いそうだった。二人きりで一晩を過ごすなんて許せない、今晩で永久に何かが変わってしまう気がする。
高校時代に、山荘で迷ったユジンをチュンサンが先に見つけたことで、二人が両思いになったように。
サンヒョクが吹雪の中を無理矢理歩き出そうとするのを、ヨングクが、押さえつけた。
「馬鹿野郎!死んじまうぞ。」
「うるさい、頼むから行かせてくれ!行かなきゃならないんだ。」
錯乱状態のサンヒョクをヨングクが殴って、やっと大人しくなった。そんな二人をチェリンとチンスクが不安な眼差しで見つめていた。
四人にとっても、吹雪の夜は永遠に明けないように思えるほど長いのだった。