録画用DVDディスク

　先日、買って来たばかりの録画用Blu-rayディスクをセットして、ダビングの画面を表示させたら、
　──このディスクはダビングできません。ダビングできるディスクを入れて下さい。──
　というメッセージが表示され、
「ええっ……！」
　と、頭から血の気が引き、パニック状態になってしまった。間違ったディスクを買って来たのかと、商品のパッケージを見たが、いつもと同じである。リモコンを手にし、いったん戻してオプション・メニューにしてから、ふたたびダビングの画面を表示させると、またしても、
　──このディスクはダビングできません。ダビングできるディスクを入れて下さい。──
　と、同じメッセージ。
（どうしようどうしよう！　録画できない！　ああ、どうしよう！）
　その非情なメッセージを見つめたまま、いっそうパニック状態に。買って来たのは、容量５０Ｇが５枚１パックを２個。昨年まで５０Ｇは３枚５０００円近くだったが、約３分の２の価格なので、２パック買った。レコーダーのハードディスク容量が、すぐ不足気味になり、毎朝、予約リストを表示させては５、６本の使用容量３桁の数字を順番に、ハラハラしながら暗算する習慣がついている。
（５０Ｇのディスクが１０枚あれば、当分、バッチリだわ）
　朝の暗算の時に、ハラハラしないですむと安堵した。その翌日の午後、スーパーへ買い物に行く前に、ハードディスクに溜まった映画やドキュメンタリーなどを一時的にDVDに落として容量を空けておこうと思い、ディスクをセットしたのである。
　頭の中が熱くなるほどパニック状態のまま、ふたたび、試してみる。やはり駄目。
　購入した店に電話した。男性店員から、ディスクとレコーダーのメーカーを聞かれたので、答えた。
「ソニーのレコーダーにソニーのディスクなら、普通は問題ないはずなんですけどね」
　と、男性店員は不思議そうな口ぶり。ダビングできないデータではないかとか、製品番号を聞かれたりもした。
「そちらの店に１０回以上ディスク買いに行って、録画できないなんて今まで１度もなかったんです」
　泣きたくなるような気持ちで、そう言った。すると──。
「大量生産なので、まれにですけど欠陥がある場合もありますので……」
　と言う店員の言葉に驚き、
「ええっ、欠陥商品！」
　つい、オーバーな声と口調になってしまったら、店員が慌てたように、
「いえ、普通はそんなことないんですけど、ごくごく、まれに、やはり大量生産の商品は、どうしても……」
　と、申し訳なさそうに言うので、
「そうですか」
　納得した。店へ交換に行くことにして、電話を終えた。落胆してダビングを諦め、予約リストを表示させて、数本の使用容量の３桁の数字を暗算し、確認してから出かけた。
　帰宅して夕食後、ダビングをセットしたディスクが１枚だけだったことに気づいた。パックになっているから、１枚が駄目ということは、全部が駄目と思い込んでしまったのだ。
（１０枚全部が欠陥商品とは限らないわ……！）
　希望の光を見出した気分で、他のディスクを試してみようと思った。その前に、入れたままのディスクを未練がましく、もう１度だけのつもりでダビングのメニューを表示させたところ──。
（あ、できた！）
　いつものように、選択のメッセージ、タイトル選択、実行、決定ボタンを押すと、ダビング開始のメッセージが──。
　欠陥商品ではなかったと、うれしくなり、原因をあれこれ考えてみる。外出前に電源を切ってリセット状態になったからかも、とも思ったが、今まで電源が入ったまま、新しいディスクをセットしたことは何度もあると思い出した。原因は、不明である。
　それにしても、録画用DVDディスクの欠陥商品が、まれにあるなんて思いも寄らなかったこと。翌日、ネットで録画用DVDディスクの情報をいろいろ読んだら、録画不可能のディスクもあるし、録画はできても消えてしまうディスクもあると書いてある。
　一時的に録画した映画やドキュメンタリーなどは次々見ていくので、消えてしまったディスクは経験が……ないと思ったが、よく考えたら、ブルーレイではないレコーダーでは何本かあった。ダビングして長期間経ってしまったディスクを、ワクワクしながらセットしたら、映らない。消えていた。その時のショックと言ったらなかった。
　ネットで読んだ情報では、ブルーレイ・ディスクでも消えることがあると書いてある。一時的な録画ではなく、何度も観たい映画やオペラの保存ディスクも多い。録画したデータが絶対消えないDVDディスクを、何故、開発できないのか不思議である。