先日、ＮＴＴのルーターが故障し、インターネットも固定電話も不通になった。ＮＴＴルーターに繋がっている無線ルーターも不通のため、テレビで映画やYouTubeを観られないし、スマートスピーカーもKindle読書もできなくなった。
（どうしようどうしようどうしよう！）
と、泣き出しそうなくらいのパニック状態に陥ってしまった。無線ルーターと固定電話に繋がったＮＴＴのルーターが故障すると、こんなにパニックになるとは思わなかった。
（ようやく平穏無事な生活が戻って来たのに！）
〈一難去ってまた一難〉という言葉が浮かんだが、すぐ打ち消した。
去った一難とは、自業自得とは言え、これまでの人生で最も重症の寝違いを経験したことだが、原因のゲーム・アプリは全問題クリアした達成感と共に削除してスッキリ。長時間のスマホ操作をやめたので、毎日の充電が、２日に１度に戻った。
さらに、ドラッグストアで２種類の鎮痛剤を買って来て、常備薬を入れておく引き出しの中に保管して、安堵。
（苦あれば楽あり、苦尽甘来とは、このことね。身体のどこにも痛みがなく、好きな映画を観たり、翻訳小説を読んだりして楽しんでいた２か月後に、苦あれば楽ありから楽あれば苦ありに変ってしまったなんて、〈楽〉の期間が短か過ぎるわ！）
私にとって〈楽〉とは特別いいこととか、特別な喜びでなくてもいい。生活を楽しめるという意味の〈楽〉である。
その朝、机の上のＮＴＴルーターの全ランプが、赤く点滅していた。いつもはオレンジ色のランプ点灯になる箇所すべての赤点滅を眼にして、ネット接続ができないことを直感。パソコンの電源をオンにしても、やはり接続不能だった。電源コンセントをいったん抜き、１０秒数えて差し込み直したが、全く駄目だった。
半月ほど前から、パソコン画面に、インターネットに接続できないというメッセージが頻繁に出るようになったが、そのたびに再起動していたら、接続可能になった。あれが故障の予兆だったのだ。
また、ずっと以前、電源コンセントをいったん抜き、１０秒数えて差し込んだら直った経験があった。
再起動もコンセント差し込み直しも駄目なので、ルーターの電源やケーブルなど１本１本抜いては、１０秒数えて差し込み直してみた。
（やっぱり駄目だわ、ああ、どうしようどうしようどうしよう！）
毎朝、パソコンの電源を入れたら、ニュース速報を読み、メール・チェックをするという習慣だった。不便とか苛立ちより、自分でも思いがけないほど精神的にバランスが崩れそうな不安感に襲われた。
スマホのネットで、接続不能やルーター故障を検索して多くの記事を読むこと１時間。
ＮＴＴのサポートに、スマホで電話した。
繋がったとたん、テープ音声で、
――ただ今、自然災害の影響で、電話が繋がりにくくなっています。――
というメッセージが流れ、選択して番号をタップした後、ショート・メッセージが送られてきて、ウェブページに誘導された。
トラブルの内容の他、機種だの回線種類だのプラン名の他、ＩＤやパスワードなど延々と入力していくと、対処法や修理日の予約などの説明画面が表示されて落胆。
しばらくして、ふたたび繰り返し、ふたたび落胆。もちろん入力情報はすべて消去したが、全く無駄な作業をしたことになる。
（自然災害って、東京か関東に大地震でも起きたの！）
何度電話してもオペレーターに繋がらず、延々と入力の無駄な作業をさせられ、つくづく憤慨したくなった。スマホで読んだニュース速報に地震や災害ニュースなど出ていなかったし、もちろんコロナ禍の意味とわかった。
プロバイダのＯＣＮのサポートに電話した。
すると、
――ただ今、自然災害の影響で電話が繋がりにくくなっています。――
と、全く同じ音声テープのメッセージが流れてきた。
何故、コロナ禍で電話が繋がりにくくなるのか、わからなかった。テレワーク急増でユーザー急増トラブル急増サポート電話急増なのかと思ったりした。
今までの経験では、どちらもサポートに電話すると、待たされる時もあるが、必ずオペレーターが出た。
（ウェブページに誘導されて修理日を予約だなんて悠長なこと言ってられないわ！ こんな精神状態で何日も過ごすなんて、耐えられない！）
ふたたびスマホのネット記事を延々と読んで行くと、ＮＴＴルーターが市販されていると知り、午後から家電量販店へ出かけた。
コロナ禍以降、スーパーの次に頻繁に足を運ぶ場所が家電量販店。コロナ禍以前は、スーパーと同じくらい、図書館へ出かけた。主にブースで映画ＤＶＤの視聴が目的だが、たまに上映会や本の閲覧も。現在はそれらが利用休止となってしまった。図書館に向かって歩く時と、館内に入った瞬間のこの上なくワクワクさせられる気分を、いつからまた味わえるのだろう。
（不要不急の外出じゃないもンね）
出かけるたびに呟くその言葉を、その日も繰り返し、マスクをして自宅を後にした。
家電量販店の店内に入ると、デパートと同じくらいワクワクする。時期が来たら買い換える新製品が多くあって、それらを見て回るだけでもデパートのウィンドウ・ショッピングの時のようにワクワク気分になり、不安定な精神状態が少し落ち着いた。
３０代半ばに見える男性店員に、ルーターの故障前の状態から説明した。
ＮＴＴルーターが市販されているとネット記事で読んだと話したが、初めての設置の時ではなく現在使用中の場合は他の製品に買い換えることはできないと説明された。
使用しているＮＴＴルーターは購入品ではなく、借りている製品で、毎月、基本料の他に、〈ひかり電話対応機器使用料〉を支払っている。以前は、〈モデム使用料〉となっていた。モデムとルーターが一緒になっている機器ということらしかった。
「多分、ルーターの劣化による故障だから、新しいルーターと交換することになると思いますよ」
店員が、そう言った。
「ＮＴＴもＯＣＮも、何度電話してもオペレーターに繋がらなくて、ただ今、自然災害の影響で電話が繋がりにくくなっています、っていうテープ音声のメッセージが流れるの。最初は大地震が起きたのかと思っちゃったわ」
「自然災害ってコロナ禍のことです」
「やっぱりね」
「オペレーターを減らしてるんですよ。多いと密になってリスクだから。オペレーターの人数が少ないから、なかなか繋がらないんです」
「じゃ、諦めないで何度も電話していれば繋がるのね」
「繋がりますよ。音声メッセージの時、何番を選択してますか？」
「２番か３番のインターネットの接続に関するトラブルとか何とか。そうするとショート・メッセージが送られてきて、ウェブページが表示されて、延々と入力して、最後に修理の日の予約のページになるの」
「オペレーターと話したほうが、ルーターの交換、早いです。ネットの接続に関するトラブルを選択しないで、それよりずっと後の、その他を選択すると、オペレーターと話せますから」
「あら、そうだったの！ その他を選択するのね！」
知らなかった、教えてもらって良かったと、店員さんにつくづく感謝した。
（どうしようどうしようどうしよう！）
と、泣き出しそうなくらいのパニック状態に陥ってしまった。無線ルーターと固定電話に繋がったＮＴＴのルーターが故障すると、こんなにパニックになるとは思わなかった。
（ようやく平穏無事な生活が戻って来たのに！）
〈一難去ってまた一難〉という言葉が浮かんだが、すぐ打ち消した。
去った一難とは、自業自得とは言え、これまでの人生で最も重症の寝違いを経験したことだが、原因のゲーム・アプリは全問題クリアした達成感と共に削除してスッキリ。長時間のスマホ操作をやめたので、毎日の充電が、２日に１度に戻った。
さらに、ドラッグストアで２種類の鎮痛剤を買って来て、常備薬を入れておく引き出しの中に保管して、安堵。
（苦あれば楽あり、苦尽甘来とは、このことね。身体のどこにも痛みがなく、好きな映画を観たり、翻訳小説を読んだりして楽しんでいた２か月後に、苦あれば楽ありから楽あれば苦ありに変ってしまったなんて、〈楽〉の期間が短か過ぎるわ！）
私にとって〈楽〉とは特別いいこととか、特別な喜びでなくてもいい。生活を楽しめるという意味の〈楽〉である。
その朝、机の上のＮＴＴルーターの全ランプが、赤く点滅していた。いつもはオレンジ色のランプ点灯になる箇所すべての赤点滅を眼にして、ネット接続ができないことを直感。パソコンの電源をオンにしても、やはり接続不能だった。電源コンセントをいったん抜き、１０秒数えて差し込み直したが、全く駄目だった。
半月ほど前から、パソコン画面に、インターネットに接続できないというメッセージが頻繁に出るようになったが、そのたびに再起動していたら、接続可能になった。あれが故障の予兆だったのだ。
また、ずっと以前、電源コンセントをいったん抜き、１０秒数えて差し込んだら直った経験があった。
再起動もコンセント差し込み直しも駄目なので、ルーターの電源やケーブルなど１本１本抜いては、１０秒数えて差し込み直してみた。
（やっぱり駄目だわ、ああ、どうしようどうしようどうしよう！）
毎朝、パソコンの電源を入れたら、ニュース速報を読み、メール・チェックをするという習慣だった。不便とか苛立ちより、自分でも思いがけないほど精神的にバランスが崩れそうな不安感に襲われた。
スマホのネットで、接続不能やルーター故障を検索して多くの記事を読むこと１時間。
ＮＴＴのサポートに、スマホで電話した。
繋がったとたん、テープ音声で、
――ただ今、自然災害の影響で、電話が繋がりにくくなっています。――
というメッセージが流れ、選択して番号をタップした後、ショート・メッセージが送られてきて、ウェブページに誘導された。
トラブルの内容の他、機種だの回線種類だのプラン名の他、ＩＤやパスワードなど延々と入力していくと、対処法や修理日の予約などの説明画面が表示されて落胆。
しばらくして、ふたたび繰り返し、ふたたび落胆。もちろん入力情報はすべて消去したが、全く無駄な作業をしたことになる。
（自然災害って、東京か関東に大地震でも起きたの！）
何度電話してもオペレーターに繋がらず、延々と入力の無駄な作業をさせられ、つくづく憤慨したくなった。スマホで読んだニュース速報に地震や災害ニュースなど出ていなかったし、もちろんコロナ禍の意味とわかった。
プロバイダのＯＣＮのサポートに電話した。
すると、
――ただ今、自然災害の影響で電話が繋がりにくくなっています。――
と、全く同じ音声テープのメッセージが流れてきた。
何故、コロナ禍で電話が繋がりにくくなるのか、わからなかった。テレワーク急増でユーザー急増トラブル急増サポート電話急増なのかと思ったりした。
今までの経験では、どちらもサポートに電話すると、待たされる時もあるが、必ずオペレーターが出た。
（ウェブページに誘導されて修理日を予約だなんて悠長なこと言ってられないわ！ こんな精神状態で何日も過ごすなんて、耐えられない！）
ふたたびスマホのネット記事を延々と読んで行くと、ＮＴＴルーターが市販されていると知り、午後から家電量販店へ出かけた。
コロナ禍以降、スーパーの次に頻繁に足を運ぶ場所が家電量販店。コロナ禍以前は、スーパーと同じくらい、図書館へ出かけた。主にブースで映画ＤＶＤの視聴が目的だが、たまに上映会や本の閲覧も。現在はそれらが利用休止となってしまった。図書館に向かって歩く時と、館内に入った瞬間のこの上なくワクワクさせられる気分を、いつからまた味わえるのだろう。
（不要不急の外出じゃないもンね）
出かけるたびに呟くその言葉を、その日も繰り返し、マスクをして自宅を後にした。
家電量販店の店内に入ると、デパートと同じくらいワクワクする。時期が来たら買い換える新製品が多くあって、それらを見て回るだけでもデパートのウィンドウ・ショッピングの時のようにワクワク気分になり、不安定な精神状態が少し落ち着いた。
３０代半ばに見える男性店員に、ルーターの故障前の状態から説明した。
ＮＴＴルーターが市販されているとネット記事で読んだと話したが、初めての設置の時ではなく現在使用中の場合は他の製品に買い換えることはできないと説明された。
使用しているＮＴＴルーターは購入品ではなく、借りている製品で、毎月、基本料の他に、〈ひかり電話対応機器使用料〉を支払っている。以前は、〈モデム使用料〉となっていた。モデムとルーターが一緒になっている機器ということらしかった。
「多分、ルーターの劣化による故障だから、新しいルーターと交換することになると思いますよ」
店員が、そう言った。
「ＮＴＴもＯＣＮも、何度電話してもオペレーターに繋がらなくて、ただ今、自然災害の影響で電話が繋がりにくくなっています、っていうテープ音声のメッセージが流れるの。最初は大地震が起きたのかと思っちゃったわ」
「自然災害ってコロナ禍のことです」
「やっぱりね」
「オペレーターを減らしてるんですよ。多いと密になってリスクだから。オペレーターの人数が少ないから、なかなか繋がらないんです」
「じゃ、諦めないで何度も電話していれば繋がるのね」
「繋がりますよ。音声メッセージの時、何番を選択してますか？」
「２番か３番のインターネットの接続に関するトラブルとか何とか。そうするとショート・メッセージが送られてきて、ウェブページが表示されて、延々と入力して、最後に修理の日の予約のページになるの」
「オペレーターと話したほうが、ルーターの交換、早いです。ネットの接続に関するトラブルを選択しないで、それよりずっと後の、その他を選択すると、オペレーターと話せますから」
「あら、そうだったの！ その他を選択するのね！」
知らなかった、教えてもらって良かったと、店員さんにつくづく感謝した。
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