一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

ある誘い

2009年11月21日 | 最近のできごと
 誘いといっても、デートではない。電話をかけてきた相手は、私より年上世代の女性の友人。友人というより、親しい知人と言えるかもしれない。数年前、ある会合で知り合って、食事を共にしながらお喋りしたことが3回ほど。電話で話したことは、もっと多い。
 今年は1度も会っていなくて、電話も久しぶりだった。
 携帯ではなく固定電話にかかってきたのだが、少しお喋りした後、ある講演に誘われたのである。それは、彼女が崇拝し、信頼している、ある女性主宰者の講演である。
「それ、新興宗教でしょう?」
 私がそう聞くと、
「う~ん、新興宗教……と言えばそうかもしれないけど、何か拝んだりするわけじゃないし」
 と、彼女は答えた。そこで、私は、
「でも、新興宗教みたいなものなんでしょう?」
 と、言い方を少し変えて聞くと、彼女はそうねと答えた後で、どんなに、その主宰者の話に救われたかを語った。
 数年前、食事を共にした時、その講演に初めて誘われた。彼女は女性主宰者の著書を持って来ていた。その時、私は、
「それって、新興宗教?」
 直感から、思ったことを口にした。すると、彼女は、
「新興宗教とは違うわ。この女性の本を読んだり、講演を聞いたりするだけだから」
 と、否定したのである。
「ふうん……」
 私は意識的に、彼女が手にしている本に、興味も関心も示さなかった。その女性主宰者の団体に、興味がないと伝えたかったのだ。その本のタイトルの、幸福、という文字が眼に触れた。幸福は自分で努力して手に入れるもの、他人に説いてもらったり教えられて手に入れるものではないのではと思ったが、彼女には言わなかった。
 私が興味も関心も示さないとわかって、彼女は本を引っ込めたし、女性主宰者の講演にしつこく誘うようなこともなかった。
 彼女は比較的苦労した家庭で育ち、体調が絶えず不調で通院歴も長く、仕事は夜の飲食店でのサービス業だったが、心身共に不安定な人生を送ってきて、心療内科医からその女性主宰者の存在を教えられ、講演で話を聞いたり、著書を読んだりして救われたのだと言う。
 それはそれで意味のあること、彼女にとっては有意義で幸運なことだと思うと、私は言った。決して批判するとか否定するとかもしなかった。ただ、通院していた医院の主治医から、そういう主宰者を紹介されることもあるのかしらと驚いたが、そういう治療方法もあるのかもしれないと思った。
 私はその女性主宰者の著書を読んでいないし、講演も聞いていないので、よく、わからないが、人間が生まれる前のことから死後のことまでなどを説くらしい。
 数年前、その女性主宰者の講演に私が興味も関心も示さなかったことを、彼女は忘れてしまったのか、または気が変わって行くかもしれないと思ったのか、電話で誘われた時、そのことを何となく聞きそびれてしまった。
「もし、行く気になったら連絡してね。一緒に行きましょう」
 彼女は明るい口調で言った。
「ええ、わかったわ。その時は連絡します」
「もし、講演に行く気にならなくても、たまには、どこかでお食事しましょうよ」
「いいわ。楽しみにしてます」
 そんなやり取りの後、電話を終えた。
 その電話で伝えられていた当日までに、私は連絡しなかった。
 当日、彼女から、携帯電話に電話がかかった。彼女は携帯もパソコンもメールをしないので、連絡手段は電話だけである。
 その時、私は朝の家事をしていて、すぐ電話に出られなかったので、不在着信だった。
 1時間後に、私がかけたら、彼女が不在着信。
 そして、その後、彼女からかかってきた時、私はパソコン操作中で、すぐ電話に出なかったので、不在着信になった。
 多分、彼女は今後、その女性主宰者の講演に私を誘うことはないような気がする。
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