未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第14章 善と悪 ③

2021-06-04 17:10:35 | 未来記

2008-03-07

3.タケルの決心

 

ドンドン!

 

「誰か、いるのか?」

 

ドンドン!

 

「少年のMフォンが、ここに入ってると連絡があった。間違いないと思うが、ふたがしまって取れない…」

 

うとうとと眠り込んでいたタケルは、箱を激しくたたく音と人声で目が覚めた。

 

あわててキョロキョロ周りを見たが、真っ暗な箱の中に、“キララ”の気配はなかった。

 

「ボク、ここにいます。タケルと言います。」

 

タケルは、思いっきり叫んだ。

 

 

「声が聞こえる。早くこのふたを開けろ!」

 

ビ~ンという電気音がして、カポ~ンとふたが取れた。

 

タケルは、まぶしい光に目を押さえながら、体格の良い男に抱えられて外に出た。

 

そのまま、タケルはタンカーで運ばれ、救護センターへと担ぎ込まれた。

 

ケガでベッドに寝ていたトオルも、知らせを聞くとタケルの姿を探し、タケルを見つけるとすぐに抱き上げて、痛いほど抱きしめた。

 

ミリもそばで泣いていた。

 

後で話を聞くと、ミリはタケルのことが心配で、警察と宇宙船の知り合いの医療技師に、タケルを見かけたら連絡するよう頼んでいたらしい。

 

そのあとで、その医療技師がタケルを見かけなかったと報告ついでに、また飲みに行きましょうとミリに連絡したが、つながらない。

 

おかしいと思った知り合いが、トオルへ連絡してもつながらないので、警察に居場所を尋ねたのが、捜査の始まるきっかけだったようだ。

 

ヒロがユウキ先生へ頼んで、トオルから送られて来たメールを、警察へ転送してもらったのも良い結果につながった。

 

 

また、コズミック防衛軍からも警察に、捜査についての問い合わせがあり、協力もあったので、スピード解決になったらしい。

 

タケルには、なぜコズミック防衛軍が事件と関係あるのか、わからなかったが、ヒロが助けてくれたことは確かだ。

 

タケルは、感謝の気持ちでヒロにメールを送った。

 

[ヒロ、ありがとう。おかげで助かった。ナイス フォローだよ。ユウキ先生にメールして、バッジのこと頼ンでおくよ。]

 

ヒロからの返事は、思ったより早く来た。

 

[ユウキ先生、スクールで起きた事件で、いっぱいだったからな。

 

まぁ、借りは返してもらいたいけど、そっちの事件はまだ解決したわけじゃなさそうだし…。

 

別にたいしたことしたわけじゃないから、バッジは期待してないけど、

 

まっ、これからも、よろしく!]

 

タケルはヒロのメールにカチッと来たが、“キララ”のこともあったので、すぐに返事した。

 

[ユウキ先生には、早めに連絡しとくよ。それより、女の子をヒロに紹介するよ。

 

その件についても、よろしく! また、メールする…]

 

救護センターで、殴られたトオルの身体検査の結果が出て、顔に殴られた痣がある程度で、特に問題はなかったことから、3人は警察で詳しい事情を聞かれた。

 

トオルとミリは、Mフォンのセキュリティを高度に設定していたので、被害は拉致され、脅されたときにトオルが殴られたこと、タケルのゲームのポイントを盗られたことだった。

 

“キララ”のことも正直に話したが、今も捜索中らしい。

 

「もし、あの段階で、我々が逮捕できなかったら、そちらの家族の誰が犠牲になっていても、おかしくはなかった。連中は酒の勢いで犯罪を重ねていたんですよ」

 

「宇宙ステーションの中は、安全な人間ばかりではない。子供が安易に誘いに乗って、行方不明になったケースが、最近増えてるんだ。

 

Mフォンがそばにあったからいいようなものの、失くしていたら、君は今頃あの狭いボックスの中で呼吸困難を起こしていただろう…」

 

担当の警官から、みっちり説教を受け、耳が聞こえづらくなっているタケルも、言われたことを理解しようとして、神妙な顔をして聞いた。

 

それから弁護士と会い、裁判に関する説明を受けた。スピード逮捕だったので、短期間での裁判で済みそうだ。

 

その打ち合わせが終わり、ようやくタケルの家族は部屋に戻った。身体の芯から疲れ切っていたが、今後のことをどうするか、両親と真剣に話し合わなくてはならない。

 

タケルの心は、決まっていた。

 

まず、両親に火星へ行くよう説得して、“キララ”を警察が捕まえるまで、ヒロと相談しながら捜査に協力して、それが終わったら、地球へ帰るかどうか決めよう。


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