2008-03-07
3.タケルの決心
ドンドン!
「誰か、いるのか?」
ドンドン!
「少年のMフォンが、ここに入ってると連絡があった。間違いないと思うが、ふたがしまって取れない…」
うとうとと眠り込んでいたタケルは、箱を激しくたたく音と人声で目が覚めた。
あわててキョロキョロ周りを見たが、真っ暗な箱の中に、“キララ”の気配はなかった。
「ボク、ここにいます。タケルと言います。」
タケルは、思いっきり叫んだ。
「声が聞こえる。早くこのふたを開けろ!」
ビ~ンという電気音がして、カポ~ンとふたが取れた。
タケルは、まぶしい光に目を押さえながら、体格の良い男に抱えられて外に出た。
そのまま、タケルはタンカーで運ばれ、救護センターへと担ぎ込まれた。
ケガでベッドに寝ていたトオルも、知らせを聞くとタケルの姿を探し、タケルを見つけるとすぐに抱き上げて、痛いほど抱きしめた。
ミリもそばで泣いていた。
後で話を聞くと、ミリはタケルのことが心配で、警察と宇宙船の知り合いの医療技師に、タケルを見かけたら連絡するよう頼んでいたらしい。
そのあとで、その医療技師がタケルを見かけなかったと報告ついでに、また飲みに行きましょうとミリに連絡したが、つながらない。
おかしいと思った知り合いが、トオルへ連絡してもつながらないので、警察に居場所を尋ねたのが、捜査の始まるきっかけだったようだ。
ヒロがユウキ先生へ頼んで、トオルから送られて来たメールを、警察へ転送してもらったのも良い結果につながった。
また、コズミック防衛軍からも警察に、捜査についての問い合わせがあり、協力もあったので、スピード解決になったらしい。
タケルには、なぜコズミック防衛軍が事件と関係あるのか、わからなかったが、ヒロが助けてくれたことは確かだ。
タケルは、感謝の気持ちでヒロにメールを送った。
[ヒロ、ありがとう。おかげで助かった。ナイス フォローだよ。ユウキ先生にメールして、バッジのこと頼ンでおくよ。]
ヒロからの返事は、思ったより早く来た。
[ユウキ先生、スクールで起きた事件で、いっぱいだったからな。
まぁ、借りは返してもらいたいけど、そっちの事件はまだ解決したわけじゃなさそうだし…。
別にたいしたことしたわけじゃないから、バッジは期待してないけど、
まっ、これからも、よろしく!]
タケルはヒロのメールにカチッと来たが、“キララ”のこともあったので、すぐに返事した。
[ユウキ先生には、早めに連絡しとくよ。それより、女の子をヒロに紹介するよ。
その件についても、よろしく! また、メールする…]
救護センターで、殴られたトオルの身体検査の結果が出て、顔に殴られた痣がある程度で、特に問題はなかったことから、3人は警察で詳しい事情を聞かれた。
トオルとミリは、Mフォンのセキュリティを高度に設定していたので、被害は拉致され、脅されたときにトオルが殴られたこと、タケルのゲームのポイントを盗られたことだった。
“キララ”のことも正直に話したが、今も捜索中らしい。
「もし、あの段階で、我々が逮捕できなかったら、そちらの家族の誰が犠牲になっていても、おかしくはなかった。連中は酒の勢いで犯罪を重ねていたんですよ」
「宇宙ステーションの中は、安全な人間ばかりではない。子供が安易に誘いに乗って、行方不明になったケースが、最近増えてるんだ。
Mフォンがそばにあったからいいようなものの、失くしていたら、君は今頃あの狭いボックスの中で呼吸困難を起こしていただろう…」
担当の警官から、みっちり説教を受け、耳が聞こえづらくなっているタケルも、言われたことを理解しようとして、神妙な顔をして聞いた。
それから弁護士と会い、裁判に関する説明を受けた。スピード逮捕だったので、短期間での裁判で済みそうだ。
その打ち合わせが終わり、ようやくタケルの家族は部屋に戻った。身体の芯から疲れ切っていたが、今後のことをどうするか、両親と真剣に話し合わなくてはならない。
タケルの心は、決まっていた。
まず、両親に火星へ行くよう説得して、“キララ”を警察が捕まえるまで、ヒロと相談しながら捜査に協力して、それが終わったら、地球へ帰るかどうか決めよう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます