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〈架空CMソング制作秘話〉 「10代の昂りを取り戻せ ギコチナEX」ができるまで (第9回)

2020-06-12 17:00:00 | 架空CMソング制作秘話
 こんにちは〜。

 キシリ徹のタニケンです。

 制作秘話第9回は、「10代の昂りを取り戻せ ギコチナEX」です!!!



 【着想】
 この曲は初期から中期にかけて、順番でいうと10〜20曲目くらいに作った曲だったと思います。

 いつものごとく、やなせから「精力剤の商品名ちょうだい」とLINEでメッセージが送られてきました。

 ギルティセーフの制作秘話でも書きましたが、商品名を考えるのは企業名を考えるよりかなり難しいんです。

 商品の性能や効能などを想起させることができて且つインパクトのある名前を付けなければいけないし、かといってひねりのない直接的な単語をもじったりしても面白みに欠けてしまいます。

 架空とはいえ機能性のある名前を付けたいと思う反面、架空だからこそ多少ツッコミどころがあるような名前を付けたいというジレンマにいつも頭を悩ませています。
 
 「なんでこんな存在しない商品のことで頭使わなきゃいけないんだろう…?」と思って投げ出したくなることもしばしばです。

 ただ、ギコチナEXに関しては、やなせからのメッセージをもらった瞬間から連鎖的にひらめきが生じ、あっという間にゴールにたどり着いたので、一切苦労しませんでした。ほんとにひらめきって大事ですね〜。
 
 最初に、精力剤は「精力に衰えを感じた中年が、若い頃の精力や活力を取り戻すもの」という定義づけをして、「若い頃の精力」を想起させられる商品名がいいと考えました。

 そこで「『若い頃の精力』とは具体的にどんなものか?」という疑問が浮かびました。

 ここからは少し下品な話になりますが、若い頃というのはすなわち10代あるいは童貞であった頃であり、些細なことで空想を膨らませ、下腹部も膨らませちゃうような次第です。

 彼が初めて褥(しとね)に臨んだ時の、その気持ちの昂りこそが我々の取り戻したいものではなかっただろうか…?

 そう考えた時、私の心はすでに時を遡り、あの日の夜へと旅立っていた…。






 灯りの消えたワンルーム。

 会話はどこか上滑りし、自ら呟いた言葉でさえも異国語のような響きを帯びている。

 この時に限っては視界の外の世界は欠落している。冷蔵庫の稼働音だけが現実だった。


 「私が探しているものは、間違いなくこの夜にあるはずだ…。」幽霊のようにさまよう私の意識は、そんな確信をパスポートとして、無粋なタイムトラベルを続ける。


 この夜に至る確かな予感はあった。イメージトレーニングに余念のない数日を過ごしてきた。

 しかし、いざこの時におよんで、自身の描いたビジョンの脆弱さを自覚していた。
 
 自分自身に落胆する暇も、台本を書き直す余裕もなく、夜は更けていく。

 血液が全身を、汽車のようにけたたましく駆けるのが聴こえる。

 蒸気が産む動力と、対する理性の応力で、身体は音のない軋みをあげる。

 ぎこちない指先、ぎこちない唇…。

 そう、ぎこちない…。


 「ギコチナイー…。」












 無意識の呟きで現実に引き戻された時、私はまだ、やなせのメッセージが表示されたスマホの画面を見据えたままであった。

 時間にすれば数秒ではあるが、ずっと探していたものを見つけたような気がした。

 すぐに伝えなければならない。探し続けていた、失くしていたものと相見えることができた感動に震えながら、スマホを操作した。


 〜指先で送る君へのメッセージ。


 「10代の昂りを取り戻せ ギコチナEX」


 これが、探し続けていた、私なりの「DOU .T .EY .」だった。


【楽曲解説】
 この曲については、スタジオで二人で相談しながら作りました。

 やなせが「なんとなく海賊っぽい感じの曲にしたい」と言ったので、海賊っぽいリズムパターンから作っていきました。

 イントロとAメロの雄々しい感じのリズムパターンは、大海原を見据えながら航海を予感させるようなイメージBメロのシャッフルは航海中の冒険といったイメージで叩いています。

 歌メロを作るにあたり、先に歌詞を書こうということになりましたが、やなせも私も歌詞については「Aメロで精の衰えを自覚し、Bメロで冒険や修行を通して精を復活させていく」というイメージで一致していました。

 Bメロは、私が思いつきで

「マムシの生き血をすすり」
「クリオネを踊り食い」
「イタリアの生娘に思いを馳せ」
「バベルの塔よ、さあ、行かん。」

と発言し、すぐに決定しました。

 Bメロについては全体のコード進行についても気に入っていますが、「さあ行かん」あとのBm9のバッキングがイントロ・Aメロと同じパターンなのが航海の厳しさを想像させるような荒々しさでとても良いですね。


〜制限時間内に作ろう!!〜

 Bメロができたところでスタジオの利用時間が残り30分程度だったため、Aメロは持ち帰って考えることにして、時間内で曲の終わり方を決めてしまうことにしました。

 最後の「ギコチナEX!!!」の部分は決まっていたのですが、Bメロからの繋げ方が決まらずかなり苦戦しました。

 残り時間わずかとなり諦めてかけていましたが、私がなんとなく「ギコチナミン配合〜」と呟いたところ、一瞬の後、二人とも示し合わせたように「ギコチナEX!!!!!」と叫びました。
 
そのあと「できた!!!!!」「100点じゃん!!!!」と二人で大はしゃぎしながら帰りました。あの感動は今でも忘れられないですね〜。

 Aメロは次にスタジオ入るまでにやなせが歌詞を書いてきましたが、アルパカ毛むくじゃランドの時と同様に「タニケンのBメロの歌詞に見劣りしない歌詞書くのめちゃくちゃプレッシャーだったわ…」と語っていました。

 私の思いつきをそこまで重宝する人間はやなせくらいなものだなとつくづく思います。

 作曲過程の話ばかりになってしまいましたが、この曲についてはリファレンスと言える曲があまりありません。

 強いていうならと前置きしてやなせは、「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」のサントラをよく聴いていたから、Aメロなどは表の地上のテーマに近いところがあると語っていました。

 実際この楽曲も若干ファンタジー要素があるのでマッチしているかもしれませんね。

 このブログを書くにあたって毎回やなせとリファレンスを洗い出していますが、ゼルダとかドンキーコングとかゴエモンとか、レトロゲームのBGMから受けた影響の多さに気づかされます。



【その他 裏話】
 デザインについて

 
 この広告は、やなせが実際の新聞広告を参考にしながら作りました。ところどころ破茶滅茶なことが書いていますが、なかなかリアルな広告っぽく出来ていますね!

 返品ポリシーに「角度が20度未満であること」って書いてあるけど、どこの角度のことなんだろう…。

 そのほかコピーや、配合成分などの大部分は私がアイデアを出しました。「三大欲求を2つしか思い出せない方」とか今思うとイカれてるな…。

 配合成分については、ひたすらエロにまつわる単語を挙げた上で、高校〜大学で専攻していた化学の知識を無駄に使ってダジャレを考えました。
 
 「フルボキシオチン」と「ソコナシン」は我ながらよくできているな〜。「フルボキシル基」は実際にありますし、ソコナシンはきっとアミノ酸かなんかだろうな〜。

 からくりナイスキャッチ!で明かされるギコチナEX誕生の秘密
 からくりナイスキャッチ!第4回株式会社現代秘薬の広報担当 片桐真澄さんがゲストとしてお越しくださいました。



 現代秘薬およびギコチナEXについて、当番組では以下のように紹介されています。
  
「当初は不老不死の薬を開発する会社として設立。1940年、洞窟探検を行っている最中に、偶然にもギコチナミンを発見。そこから生み出された精力剤『ギコチナEX』は、今では世界中で年間8億本を売り上げる社の看板商品となりました。」

 なんだかオカルトな雰囲気が漂う会社ですね…。株式会社なのかよ。


 不老不死の研究をしていた組織が平然と精力剤を販売したり新聞広告出してるの不思議ですね。


 冒険中の極限状態で発見されたギコチナミン。その精製方法は想像を絶するものでした…。やなせが少し引いているのが印象的な放送回です。

 しかし、やはり年間8億本売れているギコチナEX。その効果は精力増強にとどまらず多岐に渡ります。真偽は疑わしいですが…。


 この回は全編にわたって生々しく、胡散臭いのでなんとも言えないですね。信じるか信じないかはあなた次第といったところでしょうか。


 この回も私は途中で退席していますが、現代秘薬に興味をお持ちの方、三大欲求が2つしか思い出せない方は是非聴いてみてください〜。


 今回は以上です〜。
 
 また見てくれよな!!!!!!!



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