第1章 経営理念・行動規範のつくり方
(9)あなたの企業の「経営理念」から「短期経営計画」までを作成してみよう 第2回
③ 「目的地(ビジョン)」を数字に落とし込んだものが「経営目標(ターゲット)」
次は「経営目標(ターゲット)」を作成します。すでにあなたは、経営者としての最終到達地の会社の状態やお客様や社員の様子「目的地(ビジョン)」としてイメージすることができています。次は、それに到達するために達成しなければならない経営数字に置き変えてください。
通常、井上経営研究所では『長寿幸せ企業版PDCA事業計画書」1を使用します。下の図はこの『長寿幸せ企業版PDCA事業計画書」のシート「⑥長寿幸せ企業データ」の一部です。事前入力画面で経営者の現在および最終到達年度の年齢、会社の事業年度、過去の数値などを記入しています。この例では、経営者は現在40歳で、会社は第10期期中です。最終到達年度は30年後の経営者70歳、会計期は第40期となっています。
さて、これに入力するのは、売上高、営業利益、事業数、本業比率、従業員数、従業員平均年齢、研究開発費額、自己資本額、総資本額などの「経営目標(ターゲット)」で、自動算出されるのは、自己資本比率、売上高営業利益率、一人あたり営業利益高、売上対研究開発比率、総資本営業利益率です。 最初に、過去の数値第9期以前を決算書から転記しておきます。このあと入力していくのは、今から30年後、最終到達年度第40期の「経営目標(ターゲット)」、この図で言えば図の右端の第40期です。
④ 「長期戦略」
第(4)節で「経営目標(ターゲット)」をどのようにして達成するか、やりかたをはっきりさせるのが「戦略(ストラテジー)」で「経営戦略」とはあらかじめ、経営目標地点までどのような道(ルート)を通って、いつもでに到達するのかを決めることだとお話しました。
ここから30年間を逆算していくのですが、大きく10年ごとくらいに「長期戦略」を設定します。30年ですから途中に21年目から30年目の「第Ⅲ期長期戦略」と11年目から20年目の「第Ⅱ期長期戦略」そして1年目から10年目の「第Ⅰ期長期戦略」が必要だということになります。
では、30年後の目標地点と20年後、10年後の経営目標数値を入力してください。20年目、10年目は大まかなマイルストーンを設置する程度のほうが賢明です。「第Ⅰ期長期戦略」も後半に差しかかれば、経営環境も変化し、経営者も大きく成長しています。大切なのは、「目的地(ビジョン)」を現実のものとするために最終到達年度の「経営目標(ターゲット)」を達成することです。
⑤ 中期経営戦略と短期経営戦略
次は、現在から10年後の「経営目標(ターゲット)」を見据えて3年後にはどのような「経営目標(ターゲット)」を達成する必要があるのかを検討していきます。その際重要なのは、現在のPLやBSからみて実現可能性のある「経営目標(ターゲット)」であるかということです。「一か八か・・」や「なんとかなる・・」の発想は厳に慎んでください。
この3年後の「経営目標(ターゲット)」に「この道を通って、1年目にはここまで行って、2年目にはあそこまで行って・・」と、到達する道と期限を決めるのが中期経営戦略です。この内、1年目が短期経営戦略ということになります。 このあとは、その短期経営戦略に従って部下がこの戦略を基にどのような方法で戦略地点まで行くのかを決めるが戦術です。
ここで最終到達年度まで30年であれば3年ごと10個のマイルストーンを作るというお話をしたのを思い出してください。しかし、部下である従業員たちは30個ではなく、常に指示された次の1個のマイルストーンへなんとしてもたどり着く方法を考えて実行するのが使命です。
小規模零細企業の場合は経営者も戦術構築に参加しても構いませんが、頭ごなしに反対せずに、できるだけ従業員の案件を採用して、アドバイスを加える程度に持っていきたいものです。こうすれば、従業員たち自身が作った戦術ですから、工夫努力を惜しまないはずです。
しかし、彼らが必死になればなるほど、彼らにはそのマイルストーンしか目に入っていません。
そんな時、企業に「行動規範(モラルコード)」があり、その中で不徳や不法行為が強く諌められておれば、度々マスコミを賑わすような企業の不祥事が起き経営危機に陥ることはありません。
経営者を含む全従業員が、戦略や戦術の構築や実行の前に「行動規範(モラルコード)」を確認することを習慣とする必要があります。
1 井上雅司が開発した『長寿幸せ企業』を目指す経営者のための企業理念から月次計画まで一貫した事業計画書。
「使命(ミッション)」や「目的地(ビジョン)」、「行動規範(モラルコード)」の作成から、長・中・短期の経営戦略を基にした長・中・短期の経営計画を作成できる。「PDCA月次計画書」シートでは月次決算(月次試算表)完了後には前年、および計画と実績を対比して、その原因を探り、対策や行動に結び付けられる。【連動式財務三表】シートでは過去だけでなく、未来のキャッシュフローも算定できる。
次回は、(10)あなたの企業の「経営理念」から「短期経営計画」までを作成してみよう 第3回 中小零細企業の「行動規範(モラルコード)」 です。
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
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