第6章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ
(2)「時務学」 「ヒト」に関する知識と技術
②人に信頼されるような徳のある人をそれにふさわしい役職につける
多くの会社に訪問させて頂いていますが、社員は概して高学歴で、ひとりひとりの能力は高く、熱意もないわけではないのに、なぜかバラバラでうまく機能していない会社があります。
一方で、ひとりひとりの能力は特に高糸は言えないのに、うまく機能している会社があります。そんな会社では、社員さんが全員同じ方向に向かって、知恵を出しあっています。その結果、衆知が集まって大きな力になり会社が発展しているように思います。
「一匹の狼(ライオンとも言われますが、この方が合っているように思いますが・・)に率いられた羊の群れは、一日にの羊に率いられた狼の群れに勝る」という皆さんも聞きたことのある言葉がありますが、私はこれは戦争におけるリーダー論であって、『長寿幸せ企業』を目指す会社経営には適さないものだと思っています。
会社経営で言えば、狼は常に獲物(売上)を狩ることの出来る、強いリーダーと言うところでしょう。一方、羊のリーダーはグループをまとめるのが得意ですね。
私も二十余年にわたる経営で多くの場合、売上を一番あげられる従業員を常に引き上げてきました。その多くは営業成績がトップクラスで、はっきりと主張し、部下を鼓舞するのが得意な人ばかりでした。外部環境もよく、売上が伸びているときはグループのまとまりなどに問題ないのですが、売上が停滞や下降しだすと、部下の能力を軽んじて独りよがりの強権的なまとめ方や命令が出てくるようになり、グループはバラバラになり、退職者も出るようになることも何度かありました。
もちろん、経営者である私の任命に問題があったのですが、当時の私には、経営理念はかっこよさが一番でとりあえず飾り物でしかなく、経営理念からすべての経営判断をするという知識も技術もなかったのですから何年たっても経営の知恵や技能が身についているはずがありませんでした。
『経営理念』とは、
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企業が何のために存在するのかを明確にする「使命(ミッション)」
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現経営者が経営人生の最終到達地としてめだす目的地がどういう状態であるかを文章で描く「目的地(ビジョン)」
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②を達成するためにおおまかな必要な数字を「経営目標(ターゲット)」
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①から③の計画・実行・判断を支える「行動規範(モラルコード)」や「信条(クリード)」
以上をひっくるめたもので、これから正常企業から優良企業、さらに『長寿幸せ企業』を目指す上ですべての判断や行動の大本になるものだと言いましたが、経営戦略や戦術も例外ではありません。
当然、人事戦略もその戦術もあなたの経営理念に沿ったものでなければなりません。就業規則はもちろんのこと、採用方法も賃金規定や人事評価方法や昇格も例外ではありません。
私のホームページの「井上経営研究所とは2」にあるように「照一隅」が私の「使命(ミッション)」です。
中小零細企業の
「再建・再生」(再建プログラム)、
「廃業・清算からの再起」〈廃業プログラム)、
「開業・創業の経営危機からの脱出」(起業支援プログラム)
をお手伝いさせて頂く事により、一人でも多くの悩める人々が心からの笑顔を取り戻せるように少しでもお役に立てる。それに留まらず、これらの企業が「長寿幸せ企業」となり、「長寿幸せ企業」であり続けることをお手伝いする(俯瞰塾)により、これらの企業を通じて、経営者だけでなく、その家族、従業員、取引先、お客様など関わりのある人々の一人でも多くが末永く「幸せ」を実感できることに少しでも貢献することです。
そのために、関与先の皆様には『長寿幸せ企業』に近づくための人間学と時務学を学んでいただくために多くの書籍を紹介し、知識と技術を学び、それを行動実践して知恵と技能として身につけることをお勧めしています。「ヒト」についても多くの書籍を紹介させていただいていますが、そのひとつ
四書五経の書経から
「徳懋(さか)ンナルハ官ヲ懋ンニシ、功懋ンナルハ賞ヲ懋ンニス」
という金言が紹介されています。
「人に信頼されるような徳のある人はそれにふさわしい役職につける、功績のあった人には給与の面、名誉の面で報いる。」
という意味です。
書経の時代から三千年近く連綿と続いている箴言ですので、販売や実務の才能があり、会社の利益に貢献した人には昇給や賞与、あるいは表彰などでそれに応えるべきであって、仕事ができる人だからと言って役職を与えたことが大きな失敗に繋がった事例がたくさんあったということでしょう。
部下や同僚から信頼され、この人の言う事なら信用できるというような徳性の高いひとを役職につけるのが『長寿幸せ企業』を目指す経営者にとっては正道です。
ということは、採用においても徳性が高いという資質は重要な評価材料になるはずですから、その段階から応募者の徳性に留意し、自社の「使命(ミッション)」や行動規範などの経営理念(哲学)にまったく合わない人や徳性の低い人は、その人が自社の利益に貢献できる非常に優秀な人であっても採用を見送るべきです。
先に紹介したザッポスは一次面接で採用担当が標準的な面接をした後に、二次面接で人事部がザッポスの企業文化に合うかどうかのみを探る面接を実施するそうです。更に企業文化や「目的地(ビジョン)」などの研修を徹底的に行い、採用後4週間の研修修了までにやめる人全員に2000ドルを支払うそうです。そのくらいをしなければ自社の経営理念(哲学)にほころびが生じると考えているからです。
『幸せ企業』をめざすには、経営者はもちろんすべての従業員に「負うべき義務や責任」と「得るべき自由や権利」があるはずです。義務や責任を果たせるからこそ、『幸せ企業』の従業員は誰でも生活環境に応じて働ける自由を持ち、「幸せになる」権利を持てなければなりません。
3渡邉五郎三郎著 『南洲翁遺訓の人間学』 致知出版社 p60~
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。
次回は 第6章 健全企業の経営実学「時務学」を学ぶ の 第3回「時務学」:「ヒト」に関する知識と技術
その③ 能力的、身体的に劣っていても、「徳性」が高く、一所懸命に働く人は誰でも「幸せになる」権利を持っている会社
を予定しています。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
1.「経営救急クリニック」
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