「人間には
行方不明の時間が必要です。
なぜかはわからないけど」
(『行方不明の時間』茨木のり子)
この赤紫色の植物は、「バーベナ・ボナリエンシス」という名前で、この地では5~6月ごろ、あちらこちらの道ばたに咲いている。先っちょが3つに分かれており、筆者はこの地に来て最初に見かけた時、その形状に強い印象を受けた。
筆者らは3人ひと組で、殺虫剤散布の仕事もしている。トレポンという薬を溶かした大きなポリタンクを軽トラに積んで、各家庭を回っているのだ。ある日、撒いた霧状の薬が風に流され、畑仕事をしていたその家の老婦人にかかってしまった。注意していたのだが。
その老人、顔をしかめて「…コロナの殺菌をしてくれたね、有難う」と。
申し訳ないと謝った時、ふと、庭先にバーベナ・ボナリエンシスが咲いているのを目にし、「あの植物、売ってもらえませんかね」と口にした。その時、この花が雑草だとは知らなかったのだ。
3本欲しい旨を伝えたら、夫人は「じゃ1千円」というので、それでは、と1,500円払った。夫人は無表情で受け取っていた。
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