石工房吉田 珈琲石臼体験所

珈琲用石臼製作 珈琲用石臼を使った珈琲の体験所 熊本県天草市下浦町

バリコーヒー専用の石臼の制作

2016-10-15 | 珈琲臼開発過程
バリコーヒーと言うのをご存知でしょうか?

インドネシア帰りのお客さんから始めて聞いたのが今年の9月
その時は話だけで「へ~~」で終わりましたが、今回は「バリコーヒー用の石臼」は出来ないかの問い合わせに挑戦しました。

話を詳しく伺うと「パウダー状にしたコーヒー豆をカップに入れ、お湯を直接そそいで上澄みを飲む」との事。

まずは頭の中でコーヒー豆を微粉末に挽いてみます。
挽く豆は一般的なローストで1回転当たり1粒の投入を繰り返していくと、最初は調子良くバリバリ挽けるが、途中から臼が回りにくくなり最後は上臼と下臼がひっついた状態で終了。

コーヒー豆は微量の油分を含むため、臼の擦り面にベットリ張り付く事は想像出来る。
しかし実際に試した事はないので、どの程度張り付くのか?今回はそのあたりの解決策が無いか試作に入りました。

最初はお茶臼の構造で制作してコーヒー豆を挽いてみるも、予想通りにベッタリ張り付きました。
で、目の部分を削り落として張り付きの対策をして試作してみましたが30点ぐらいの出来。
この段階で次の対策が浮かばずこの日は終了。
次の日も考えがまとまらず試作は休み。

ひとまず基本的な部分から考え直して行きます。
「粉が擦り面に張り付いてしまう原因」の対策を考える前に、石臼の内部から挽いた粉が何故払い出されるのか?をきちんと整理して考えます。実は石臼は斜めに置いて挽いても何の問題もなく粉が出ます。この事は水のように重力で流れ出されて来るのとは違い内部から押されて粉が払い出されている事が推測出来ます。
と言うことは、今回の試作品で粉が内部に張り付いてしまう現象の改善には「内部からの押し出す力」をさらに強くする必要がある事が多分改善につながると言う結論になります。

「内部から押し出す力」これには心当たりがありまして、最初にコーヒー石臼を試作した時も粉が挽けすぎてしまい細挽きを中挽きにする問題で苦労した事がありました。
今回はその時の対策(現状の製品は全部この時の目切りを採用していますが)をさらに強力にしたものを目切りに施しました。

ここでは同業者の関係もありましので、苦労した目切りのノウハウや画像を公開する事出来ないので非常に残念ですが、、、。

早速作業に取り掛かり、通常の茶臼サイズで一応の完成。
いざ、豆をのせて挽きはじめると最初は軽快に回り、やがて非常に重くなりました。
さらに強引に回していくと、粉がパウダー状になり少しずつ出はじめましたが、、、、、
想定外の現象が出はじめました。
何と下臼が上臼の強引な回転に引きずられて一緒に回ろうとしてガタガタ動き始めました。
原因は下臼の下に取り付けたクッション材とテーブルの摩擦力不足、、対策は単純に下臼の重量を上げる事です。

仕方がないので下臼のみ新たに厚みを1寸(3センチ)上げて作り直しました。
2つを並べて見るとその大きさの違いがわかります。
しなみに重量は 上臼 8.5kg  改善前の下臼 8.5kg 作り直した下臼 13.0kg となっています。



新たな組み合わせで最終の試験をしています。 豆(手持ちの豆)10gをのせます。




普通のコーヒー石臼と比較すると、かなり重く左手で上臼を回すのを手伝いながら1回転に1粒の割合で挽いていきます。
見事なパウダーになりますが、ご覧の通り張り付きが発生しています。


1回目10gを挽いて約2分


茶こしで検品していますが、ほぼ予定通りに挽けています。



2回目の10g 同じく約2分


これも検品していますが、途中で誤って4粒ほど穴の中に一度に入ってしまいその分がフルイに残っています。



写真では判別しにくいですが、シットリしたパウダーです。




コーヒーカップの中に直接フルイいれると、こうなります。



せっかく粉が出来たので、お湯を注いで飲んでみました。
味の雰囲気はプレスコーヒーと同じと思いますが、なにしろ味が濃いのと、微粉末がカップのそこに溜まっているので「上澄み」と言ってもストローでも使わない限りハッキリここまでとは区別がつきません。
わたしは、慣れていないので最後の最後に微粉末まで口に入れてしまい、もろにコーヒー豆の味を味わいました。

結論としては、バリコーヒー用の石臼はこれで使える製品となりました。
回すのに左手の補助等のコツは必要ですが、あの固いコーヒー豆を一発で何十グラムでも連続してパウダー状まで挽く事が出来ます。
但し粉が張り付きますから、使用後の手入れは必要になるかと思います。

最後にバリコーヒーが一般的ではないので、この石臼が売れるかはわかりませんが、石臼の基本的な部分での非常に良い勉強になりました。

後日ホームページに掲載します。


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