糸乃こまりのストーリー

川柳と小説〜下町とチワワはhttps://plaza.rakuten.co.jp/daigotyokotan

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18 ドレスコード

2024-11-06 06:10:28 | 世界一周ひとり旅
ベッドで横になって「一人ぼっち」と書くと例によってグスグスと泣き始める裕子。そしてまたいつしか眠っていた。どれぐらい時間が経ったのだろうかドアでコトンという音がした。目覚めた裕子がは立ち上がりドアに近づいた。廊下から部屋に差し込まれたのはクルーズ船の新聞だった。手にした裕子は今度はベッドであぐらをかいて読みはじめた。パラパラと目にしていたが一つのコーナーに目が止まった。
 〜ドレスコード〜
 ベッドの横の小さなテーブルには裕の位牌と写真とノート。そして眼鏡、半分に折れる小さな眼鏡だが〜ドレスコード〜の下の文は少々小さかったの眼鏡は大事。こんな風に書いてあった。 
 ドレスコードとは「服装規定」の意味。 場所や時間、シーンに応じた服装の基準・ルールのことで、その場の雰囲気を壊さないため、周りの人の気分を害さないために定められる。
 高級ホテルやレストランなどではドレスコードが決められていることがあり、スーツやドレス、ワンピースなどの服装が適切とされる。
 読みながらまだハッとして段ボールに近づく。
ん!?
 のんびりとベッドであぐらをかくどころじゃない。その前に一人ぼっちと泣いてるどころじゃないんだ。裕子は段ボールを開けて中の洋服をいくつもひっぱりだす。まだ別の段ボールに近づく。そして叫ぶ。
「ない!! じゃあどこにあるの!?」
 一人も部屋の中ならおしゃべりできる。そして相手は自分だけ。とてもカワイイ生き物です。






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17 パパ

2024-11-06 06:01:53 | 世界一周ひとり旅
船内のモーニングルームで窓の外を見つめる裕子。コーヒーを運んでくれた外国人は若いスタッフだった。
「ありがとう」
という裕子にお辞儀して戻って行くスタッフ。
「あなたはどこの国の人?」
「フィリピンです」
「フィリピンではありがとうは?」
「タガログ語でサラマッポです」
 裕子にサラマッポと言ってお辞儀する。お辞儀して戻るスタッフ。ゆっくりと時間が流れていった。
 裕子が海がよく見える場所に行くと賑やかな声が聞こえた。たいていご主人が奥さんを写真に撮っている。その時二人が交わす言葉。だけど一人の人は何も言わない。心で思うだけ。裕子がキョロキョロ眺めるとイスに座っている一人の女性が見えた。裕子が近づくととてもいい笑顔を見せてくれた。裕子が何か言おうかと思った途端、彼女は立ち上がって手を振った。
「主人です」
 裕子が振り向くと男性が近づいて来た。
「主人は船中ウォーキングしてました。これから朝食、その後はジム通い」
「ジムいいですよ」         
近づいてそういうご主人に
「マッチョですか?」
と笑顔になる裕子に
「いやー、毎日ジムに行きますからいらしていただいたらお見せしますよ、マッチョ」
「やぁねぇ、余計なことを言わないの」
と言われて引っ張られて遠ざかっていく。
 去っていく二人の背中を眺める裕子。一人と二人は付き合えない。一人にはやっぱり一人がいい、そう思った裕子が飛び上がった。パパ! 忘れてた!! 
 裕子は家を出掛ける時に大きなバッグに花柄で包んだ裕の位牌を入れていたのにすっかり忘れていた。
「パパ! ごめんなさい」
 ベッドの隣りにあるテーブルに裕の位牌と小さな写真を飾った。それからノートを出して来た。そして靴を履いたままベッドに寝転んで書き始めた。1ページ目に書くのは スズキムタク 桜と梅 至福の夜 フィリピン語でサラマボ マッチョ そして最後に書いたっけ
「一人ぼっち」

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16 至福の夜

2024-11-06 05:57:56 | 世界一周ひとり旅
裕子は一度自分の部屋に戻ったがまた部屋を出た。
 廊下を歩いて一つの部屋の前で止まった。
マを小さく叩いたら何も言わずドアが空いた。 
「お邪魔します」
と入ってゆく裕子。少し経ってから廊下で裕子の声が聞こえた。  
「あっ、そこです。至福の夜〜たまりませんわ」
 廊下の壁の時計は10時30分を指していた。 
 部屋にいる裕子以外の声は聞こえなかったから一人でおしゃべりに夢中になる裕子だった。
「始めは片山さんだったのにいつの間にか裕子さんに変わっていて」
 そう言ってはクスクス笑っていたがまた急に声が変わった。
「あっ そこで〜す あぁ シアワセ」 
と叫んだ。

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15 梅と桜

2024-11-06 05:46:24 | 世界一周ひとり旅

裕子がクルーズダイニングルームの入口に 近づいたらもうスズキムタクは待っていた。二人でメインテーブルに入っていった。スズキムタクはキョロキョロ眺めて

「今日は自由席だそうですね、どこにします」

といった。

「じゃあここに」

と裕子はすぐそばのテーブルにした。

「そうしましょう」

 二人で向き合って座りかかると途端に近づいてくる二人の女性がいた。一人が

「よろしいですか?」

という。突然の言葉なので

「ハイ」

と答えてしまった裕子。言葉には出さなかったけどスズキムタクに「いい?」と目で聞いていた。スズキムタクは愛想よく「どうぞ」と答えた。空いている四人テーブルは他にもあったけどだからって断るほどもなかったからだ。

 食事しながら四人の会話はこんな風だった。近づいてきた二人はどうやら姉妹だそうで上がサクラコ下がウメコ。ウメコの方がよく喋る。見た目はあまり変わらないけれど名前のせいで下の子の方がひがんでいたのか自分を主張してきたのかずっと喋っている。裕子はそんな気がした。桜と梅じゃね。梅は花というより梅干しだ。シワシワでオバァさん。裕子がそう眺めていたら当然ウメコは言い出した。

「ご夫婦で世界一周羨ましいです」

 裕子は「えっ!」と息を止めるようにして

「違うんです。さっきお知り合いになったばかりで」

「妹は余計なことを言う子なんです。すいません」

 やっぱり桜が付いた名前だから余裕を持って生きてるなぁと裕子は思っていた。結局最後のウメコの話は梅干し。

「身体にいいの」

で終わった。 

 メインテーブルを裕子とスズキムタクは出ながら笑っていた。

「笑いが止まりませんでした」

「私は上手に話せない方なんで裕子さんにどう話したらいいか悩んでました」

「私もです。桜と梅のおかげですね」

 と言って別れた。

 メインテーブルでサクラコとウメコはまだコーヒーを飲んでいた。ウメコは

「夫婦じゃなくてよかったわ」

「ウメコ好み」

「それより持ってるかしら? 名前聞いとけばよかった」

「真っ赤な糸がつながってたら、また会えるわよ」

「ホントお姉さんは。楽天家」

 呆れ顔になる。




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