クルーズ船の裕子の部屋で明け方グツグツという着岸のエンジンのエンジンの音がした。位牌もガタガタと動いている。隣りの時計は四時になっていた。よく眠っている裕子だった。
上海バスで乗って並んでいる裕子と聡美。
上海通りではバスの両側には箱型の家が並んでいる。家の二階の窓から長い鉄製のパイプが張られ、それには長い竿がかかってある。
いい天気で竿にはにぎやかな服がパタパタと揺れている。
一番前のガイドが
「浅草の仲見世みたいなところです」
聡美は裕子に
「デパート行きます?」
嬉しそうにうなづく裕子。
デパートの玄関に付いた裕子だが
「私の用事ばかりじゃ迷惑かけるから、30分後にね」
といい出して二人は別れた。
自分が買い物したい時は他の人と別に行動すること、みんな同じものがほしいわけじゃないからね、人に押付けちゃだめだからね、と鞠子に言われたから。これじゃあ、どっちが親かわからないけど。
裕子はまずは書道店に行き高そうな硯を買う裕子。そして寝具店でシルクのパジャマを購入する。
そしてお手洗いお手洗い、すっかり忘れていたから見つけて入っていく裕子だが、ギョッとする。ドアには鍵が付いていないのだ。 バッグをぶら下げるフックも付いていない。
30分後に玄関で出会う裕子と聡美。デパートを出ていく二人が並んで歩きながら、
「聡美さん初めてじゃないから知ってたんでしょ。トイレ汚いのね」
聡美「びっくりでしょ」
裕子「日本のトイレはとても清潔。ありがたいありがたい」
そんなことを言いながらバスに乗り込む二人。
上海バスで金融街を行く。バスから街を眺めると建物は全てヨーロッパ調。
また別のデパート到着。入ってきた裕子と聡美。クルーズ船仲間の何人かと会う。その中の二人
「ここのシワ取りクリームいいそうですよ」
裕子は聡美を見る。
「知らない知らない」
と首を振る聡美。
「私10個、こちら30個」
「とてもいいんですよ〜。私はあとはイタリアのオリーブ油、それだけ」
シワ取りクリーム、イタリアのオリーブ油とメモを書く裕子。
「ママ、みんな同じもの買わなくていいのよ」
早速化粧品売り場に到着した裕子と聡美もシワ取りクリームを購入。また別のクルーズ船仲間の二人の女性が近づいて来た。
一人の
「クリーム買った?」
の言葉に嬉しそうに
「買った買った」
の裕子は10個のクリームを見せる。
「じゃなくて他にもあるのよ」
「他の人に聞いたんだけどクマ取りクリームもいいそうよ!」
いいながら二人はクマ取りクリーを10個見せた。顔を見つめ合う裕子と聡美。
中国服販売場ではクルーズ船の仲間たちがかけてある中国服を眺めている。裕子と聡美もいる。その中の一枚を裕子にかけてみる聡美。
「えー」
といいながらまんざらでもない裕子。更衣室で着替えている。
「ジャジャジャジャーン」
中国服を着て出てくる裕子。モデル風仕草に仲間たちがキャッキャッキャッキャッ喜んでいた。
廊下をてくてく歩いている裕子。そしてぺちゃぺちゃ自分の心と話をしている。A対Bみたいなもの。
「今日はどんな服を着る?」
「あら、勝手に船が決めるときもあるのよ」「何それ?」
「何それ? よね」
裕子はたまたま出会ったスタッフに近づいた。近づいて来た裕子ににっこり笑うスタッフだが裕子はにっこりというより心配事があった。
「私、ドレスコードがイマイチわからなくて。今日はどんな服を着るか船に決められる日もあるんですよね」
「そういう日もあります」
「そんな〜」
「特に詳しいアドバイザーがおりますからご相談いかがですか?」
裕子は大きくうなづいた。
サロンルームでは何人かの客の中央で話をしているアドバイザーがいた。
裕子を連れたスタッフがアドバイザーに近づいた。
「お客さまがドレスコードのことをお聞きしたいそうです」
「そうですか、どうぞどうぞ」
と言いながらアドバイザーは裕子の椅子を持って来た。 お辞儀して裕子もイスに座った。
前にあるボードに書きながら話すアドバイザー。
「フォーマル、インフォーマル、カジュアルがあります」
と書いてから手を止めて座っている何人かの人たちの顔を順番に見る。
「皆さまの中にはお子さまのいる方もいらっしゃいますよね」
何人かがうなづいた。裕子も隣りの女性を見つめる。彼女も同じようにうなづいた。
「お子さまがご結婚なさった時はさぞや大変でしたでしょう。そのくせ黒の留め袖でジミーにしなくちゃいけない」
またまたうなづきあう女性たち。
「今のことは横に置いておきましょう。今、大事なのはフォーマルです」
「注目!!」
やっぱりアドバイザーって人を引き付ける仕事なのね。学生時代の注目と同じかもしれない。私はこうはなれないと裕子は思っていた。
「フォーマルは甥御さま姪御さまお友だちの娘さんの結婚式がよろしいです」
ホォー、大きくうなづく裕子たち。
裕子は帰りの廊下でサロンルームで近くにいた女性たちもいた。みんな一緒なんだなと裕子はつくづく思った。
「勉強になりますね。インフォーマルは同窓会、カジュアルは父兄会の感覚で」
一人の女性がにっこりと笑った。後ろから小走りに来た別の女性が笑顔の彼女を 「聡美さん」と呼んだ。笑顔の聡美さんが振り向いた。
「あ、明日のことですか?」
「よろしくお願いします」
「こちらこそです」
お辞儀をしながら去っていく女性。
「聡美さん、うちのお嫁ちゃんと同じ名前!」
「あら、いいお嫁ちゃんですか?」
「ぼちぼち」
聡美は笑いながら
「それより明日のご予定は?」
「まだ何も」
「でしたら、ご一緒しません? 寄港デビューですよ」
「わぁ、聡美さん、是非是非。私、裕子です」
握手する二人。
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