京都の闇に魅せられて(新館)

京都妖怪探訪(264):御所・猿ヶ辻





 京都・平安京の中心だった場所と言えば、天皇の居た御所です。
 その京都御所の中にも、魔所と呼ばれるスポットが存在します。
 今回本シリーズでは、そんな御所内のスポットのひとつを紹介します。

 それが、京都御所の北東の角に位置する「猿ヶ辻」です。

 御所のこの場所には、3つの奇妙な点が見られます。
 まず、北東の角と塀とがそこだけ内側に凹んでいます。
 2番目に、塀の屋根瓦の下に、烏帽子をかぶって御幣を担いだ猿の彫刻が刻まれています。
 そして、その猿の彫刻に金網が被せられています。

 これはどういうことか?
 この猿は、御所の鬼門(一般に最も不吉とされている北東の方角)を守護するために置かれたと伝えられています。
 また、「この猿が夜中に動いていたずらをするために金網を被せた」などという噂も昔からあるそうです。

 京都の中心ともいうべき御所の中に存在するそんな怪しげな場所を、『京都妖怪探訪』シリーズでも是非ともとりあげなければならない。
 もう思い立って、今回取り上げました。



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 まずはいつもの通り、アクセスの話からしましょう。
 アクセス方法はいろいろとありますが、京都市営地下鉄「今出川」駅もしくは、京都市営バス「烏丸今出川」停留所からが、最もわかりやすいし、アクセスもしやすいと思います。
 写真は、烏丸今出川から今出川通りを少し東へ進んだ、同志社大学の付近です。






 烏丸今出川から少し東へ進みますと、今出川通りに面した御所の北門「今出川御門」の前に出ます。
 以下の写真は今出川御門と、そのほぼ向かい側にある同志社女子大の門前です。









 もしくは、烏丸今出川の交差点から、烏丸通りを少し南へと歩いたところにある「乾御門」から入れば、御所の北側付近に出ます。
 写真は内側から見た「乾御門」と、その付近にある「一条邸跡」です。









 ちょうど紅葉の時期に訪れましたので、御所北側付近には紅葉が。












 幕末には、この猿が辻では歴史的な暗殺事件も起こっています。
 文久3年(1863年)5月20日の深夜、尊攘派の公卿・姉小路公知(あねがこうじ・きんとも)が襲撃され、その時の負傷が元で死亡したという事件です。
 その名も「猿ヶ辻の変」。
 この事件も、猿ヶ辻が魔所と呼ばれる一因になったとか。


 さらに、猿の彫刻が置かれる前にはこの辺りは「つくばいの辻」とか呼ばれたとも伝えられています。
 夜中にこの場所を通りますと、急に足元がふらついて地面に這いつくばってしまうという怪現象が起きていたからだそうですが。
 この場所には昔から、そういう怪しい噂や伝承などがあったそうです。



 さて、ここが御所の北東の角「猿ヶ辻」です。





 一見すると奇妙な光景ですね。
 ここだけ塀がへこんでいます。
 また、よく見ると下の方にカメラみたいな装置が設置されていますが、この装置より内側に入ろうとすると警報装置が作動し、警備員か皇宮警察が出動してくるそうなので、くれぐれもご注意ください。
 何故へこんでいるのかと言いますと、これが「鬼門除け」だからです。
 建物などの鬼門(北東の角)をへこませることによって、「鬼門は無い」ということにするのです。

 このような「鬼門除け」は、御所のような古い建物や施設だけでなく、現代に造られた施設や建物などでも行われています。
 本シリーズの第201回「妖怪絵師・葛城トオル、現代京都の鬼門を語る」でも、現代でも行われている「鬼門除け」の実例を紹介しています。


 この場所の屋根瓦の下を見ますと、ありました。
 烏帽子を被り、御幣を持った猿の彫刻が。






 何故、猿か?
 古来より猿には、魔に対抗する不思議な力があると考えられていたようです。
 有名なところでは、『桃太郎』の家来の猿、『西遊記』の主人公・孫悟空や、インドの叙事詩『ラーマーヤナ』などに登場するハヌマーンなどがあり、いずれも鬼・悪魔や妖怪などの邪悪な者たちと戦う存在として描かれています。
 また、語呂の上でも「猿」とは「去る(→悪いものが去る)」とか、「まさる(勝る=魔、去る)」という言葉に結びつくと考えられているそうです。
 ちなみに私は、この猿に「マサルくん」というニックネームをつけています。


 金網を被せられているのは、「この猿が夜中に動き出していたずらをするのを防ぐため」だと言われていますが。
 しかし、「実は鳩等の鳥が止まって糞をまき散らしたりするのを防ぐために過ぎない」と言う人も居ます。
 後者の説の方が現実的っぽいですが……でも、そう言い切ってしまいますと、夢もロマンもないでしょうね(苦笑)。
 

 ところで。
 鬼門を守るための猿の彫刻があるのは、ここ御所・猿ヶ辻だけではありません。
 御所の鬼門(北東)の方向を、さらに外へ外へとたどって行きますと、あと2つそういう猿の彫刻が置かれている場所があるそうです。
 ひとつは「幸神社」。
 もうひとつは、比叡山の別院である神仏習合の寺「赤山禅院」です。
 ちなみに私は、それぞれに「マサルくん2号」「マサルくん3号」というニックネームを勝手につけておりますが。
 シリーズ次回と次々回には、それらのスポットも紹介していきたいと思います。



 今回の最後に、御所の風景をいくつか。












 それでは、今回はここまで。
 また次回。





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*京都御所へのアクセスはこちらを参照。



*宮内庁・京都御所のHP
http://sankan.kunaicho.go.jp/guide/kyoto.html




*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm




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