見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

ものを乞う人々のさまざまな事情

2007-05-13 18:03:14 | 旅の風景
古都パタンの静かな一角に、伝統的なクルタ着の老人が二人、適当な距離を置いてじっと座っていた。

目が合うと、にこりとして「やあ」と言うかのように右手を上げる。
実に愛想のいい老人たちだ。
近づくと、胸の前で手を合わせて「ナマステ」と微かに言い、そして笑顔で右手の手のひらを差し出した。
物乞いのジェスチャーに似ているが、伝統的な帽子トピをかぶり、伝統的な衣装を着て、さらに額には、神に参拝してきたことを印すティカが赤く付けられている。
路上で後を着いてくる物乞いの人たちとは雰囲気が違う。
  
もう一人の老人の方に近づいていくと、さらに満面の笑顔でナマステポーズ。「フォト、フォト」と私の手元のカメラを指して微笑む。
撮ってくれといわれると、気持ちが引くが、せっかくのリクエストだからカメラを向ける。と、白いひげの形を整え、髪につけた花の位置を確かめ、杖に片手をかけ、まさにこれぞネパール人だとばかりの万全のカメラポーズをつくった。
パシャッ!
終わると老人は「上手く撮れたか?」というように目を向け、おもむろに右手の手のひらを差し出した。なるほど、モデル代ね。

「ほとんど毎日来ていますよ。暇ですからね。訪れる観光客を観察したり、周囲の鳥を見たりして過ごしている。うまくいけば、その日のチャイ(ミルクティ)代やタバコ代がもらえるので、まあ、老人たちの暇つぶしとでもいうんでしょうか」
と解説してくれたのは、パタンの建造物補修作業に取り組む公務員のヘラカジさん。
  
お金やボールペンなど、ものを乞う人はネパールに数多いが、この老人たちは、物乞いではなく、観光客を小遣い稼ぎと暇つぶしの相手にした賢い老後の過ごし方モデルなのかもしれない。
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3 コメント

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空気が違うのかな (badboy)
2007-05-16 22:03:00
素敵な写真ですね。日本のとは違う空気に充たされているようです。
日本では沖縄が平年より8日遅く今日梅雨入りし、一方で桜前線は終点の釧路に漸く達しました。ここM市は毎日、日較差が20℃近くあり体調の維持に四苦八苦しています(^^;
このブログで貴重な体験を提供していただき、ワインのファン一同みんなで本当に楽しんでいますよ。
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地球宿から地球人へ (望三郎)
2007-05-17 07:20:14
放浪、いいですね。
放浪ができない僕は、放浪者が集まる宿を創っています。(笑)
世界各地の様々な事情を発信して下さい。地球宿でも紹介して行きます。
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伝える視点 (ワイン)
2007-05-21 02:08:33
badboyさん、望三郎さん、励ましのお言葉ありがとうございます。人に伝えること、伝わることを意識することで人と話したり風景を見る視点が変化しているように思います。読者の皆様に本当に感謝です。
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