山羊のいる風景

下伊那郡豊丘村。

縁あって、オーガニックな生活を追求する自由人たちの家に来た。



数年前、村の政策で住民全員が村の中心部に移動した山間の地域がある。
畑も田んぼも放置されて雑草の海になっているが、
クリもカキもクルミの実もたっぷり実る里山の生活の名残りがそこかしこにある。

手作り味噌・醤油の大樽や、重い鉄の暖炉や、大きな鉄の風呂釜を運び、
いつでも誰でも泊まれるための大量の布団と食器を積み上げ、
猫と犬と山羊を連れて空き家に入った。



養蚕農家特有の広い蚕室を二階に置く構造。
トイレは外。



「桃源郷のような場でしょ」と新しい住処に満足気なセイコさん。
家のすぐ横には、子どもたちが喜ぶ浅瀬の広い渓流が流れる。
山間とはいえ、朝から夕方までしっかり太陽が差し込むだけの広い空が見える。



住み慣れた土地を離れた人々は、どれほど迷ったことだろう。
行政サービスを受けられるかどうかの選択の末の決断だったのかもしれない。
そして今、残された家で、新しい生活を始めようとしている人たちがいる。