見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

青空の下のランチ

2008-09-01 22:34:43 | 生き方・生活
忘れた頃に電子メールをやりとりする友人の、ふとした言葉に刺激されることがある。
長い間顔を会わせていない友人との再会は、懐かしさと恥ずかしさと期待と不安が入り混じって緊張する。

ずっとご無沙汰だった友人と9年ぶりにランチをすることになった。
育児と家事に追われて忙しい人だが、タイミングが合ったのだ。
彼女は結婚と同時に退職してできた自由な時間を、
仕事の立ち上げ期で苦労している私に分けてくれたことがあった。

苦しい時間を共有した人たちとは独特の絆意識が生まれるのかもしれない。

ランチの美味しい店の候補を彼女はいくつか挙げてくれた。
いずれも、この地域では有名なホテルだったり料亭だったりした。
「できれば…」と私は、自分のランチの予算を伝えてみる。
今、人が快適に生活できる収入の最低額、に挑戦しているところ。
「快適」の線引きは難しく、かなり曖昧に取捨選択しているのではあるが。

彼女はすぐに理解してくれて、
中心部にできたカジュアルなレストランを提案してくれた。
昼に、集合ビルの表で待ち合わせることになった。

そして約束の時間、
待ち合わせ場所に車で現れた彼女は、9年前と変わらない優しい笑顔で
「ちょっと思いついたことがあるので、車に乗ってください」と言った。

彼女の「思いついたこと」は、青空の下のランチだった。

人気のあるサンドイッチ専門店でランチパックを予約注文、
シートと飲み物数種類を持参して、外の芝生で食べる。
「飲み物は何杯もおかわりできるし、外は気持ちがいいので」



楽しい提案だった。
二人の息子を送り出して準備するだけでも大変だっただろうに、
到着した市民公園の芝生の上にシートを広げると
ミニおにぎり、デザートゼリー、梅漬け、大きな保温ポット、ふっくらとしたサンドイッチが次々と並べられた。そして、お手拭も。

湿度が高いためか、ヤブ蚊が飛んできた。
彼女はすかさず、虫除けスプレーと痒み止めを持参したバッグから取り出した。

「そろそろ、家族キャンプデビューをしようと思っているんです」と彼女。

様々な気遣いと配慮は、子育ての経験から培われたものかもしれない。
が、そもそも気配りと緻密さに富む仕事をしていた9年前の彼女を思い出した。



彼女と私に近づく蚊は何匹かいたが、北海道の魔の「ヌカカ」を体験している私にとって、蚊はもはや敵ではなくなっていた。
それより、近づく鳩や、公園を散歩する人たちを遠目に見ながら、秋を感じさせる爽やかな風と青空の中でとるランチは、彼女との空白の9年を感じさせないときを演出してくれていた。



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2 コメント

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こころ温まる (ittoku)
2008-09-04 21:40:57
なんとも、こころ温まるお話で、
読んでいる私まで、ほんわかしてきました。
素敵な友人方をたくさん持っていらっしゃって、
良いですね。
素直に「予算」を伝えられる関係。
本音の生き方が出来るのは、
本音で生きている方々だけでしょう。

ちょっと、変な日本語?
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我儘 (wine)
2008-09-05 11:23:53
本音は我儘として伝わることも少なくないので、相手との関係性のなかでどう言い出すかは難しいときもありますね。自民党総裁選に名前の挙がった人たちも、本音を言える友人がいることで、プレッシャーに耐えているのでしょうけれど。
ittokuさんは、本音を言えるご友人が多いのではないですか。
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