プノンペン市内は、トゥクトゥクとシクロであふれている。庶民はちょっとした買い物や通勤にシクロを使うが、観光客相手にしたトゥクトゥクの方が売り上げは期待できる。
<シクロ>
チャンドラさんは、6年前にドライバーライセンスを取得し、1日3ドルで小さなトゥクトゥクを借りた。
「家がとても貧しかったので、学校を卒業した後は修行僧の道しかなかった」内戦が繰り返された末誕生したポルポト政権の残虐な行為が横行する時期だった。
「でも修行僧はボクにとってとても退屈だった。プノンペンのお寺ではサンスクリット語と英語を教えてくれたので、市内ガイドするトゥクトゥクのドライバーになろうと思ったんです」
物静かな彼が客引き競争の激しいトゥクトゥクで成功しているようには見えない。出会った時ですら、他のドライバーが見放した私に声をかけたのだから。
「稼ぎは一日7ドルから15ドル。お客さんがつかまらない日もあります。小さな娘が二人いるので生活は苦しい。庶民の生活に興味があるのなら、うちを見に来ませんか」と言うチャンドラさんの笑顔に誘われて、中心部から30分ほど走った郊外にある彼の家に行った。
彼が言うように、周囲の家の中で最も質素なトタン造りの家だった。カンボジアの灼熱の太陽に焼かれて家の中はサウナだ。それでも土地代と合わせて4000ドル。結婚した翌年、全財産を叩いて建てた。
が、水道を引く資金まで回らず、大きな水かめを3つ買った。毎朝、水をもらうために近所の家の間を往復数十回する。飲み水にもシャワーにも用いるが、衛生面は決していいとは言えない。
「子どものためにも水道を引くことが今の目標。でも、今は毎日の生活だけで精一杯」チャンドラさんは5歳のスラッカーちゃんを抱きしめて大きなため息をつく。彼女は、やせて小さく3歳ほどにしか見えない。
「スラッカーが妻のお腹にいる時、貧乏で食べるものがほとんどなかったせいだと思う」
チャンドラさんのお父さんはポルポト派と闘う政府軍兵士。彼が1歳の時に戦闘で命を落とした。
「父が死んでから一層貧しくなり、母は餓死しました」と、チャンドラさんは淡々と語る。貧しい家庭の子どもの多くが修行僧になると聞いたことがある。
餓死と戦死で両親を失ったからこそ、自分のこの家族を大切にしたい。チャンドラさんは自分たちの食費を削ってでも、スラッカーちゃんを質のいい私立学校へ入れたいと思っている。
「この仕事?合っていないかもしれない。夢は、外国人相手のレストランかバーを経営すること。今もできればレストランで働きたいのだけど、学歴がないので雇ってもらえないんです。子どもにはそういう思いをさせたくない」
癖のない英語で淡々と話すチャンドラさんは、プノンペンの2日間専属ドライバーを引き受けてくれることになった。
<シクロ>
チャンドラさんは、6年前にドライバーライセンスを取得し、1日3ドルで小さなトゥクトゥクを借りた。
「家がとても貧しかったので、学校を卒業した後は修行僧の道しかなかった」内戦が繰り返された末誕生したポルポト政権の残虐な行為が横行する時期だった。
「でも修行僧はボクにとってとても退屈だった。プノンペンのお寺ではサンスクリット語と英語を教えてくれたので、市内ガイドするトゥクトゥクのドライバーになろうと思ったんです」
物静かな彼が客引き競争の激しいトゥクトゥクで成功しているようには見えない。出会った時ですら、他のドライバーが見放した私に声をかけたのだから。
「稼ぎは一日7ドルから15ドル。お客さんがつかまらない日もあります。小さな娘が二人いるので生活は苦しい。庶民の生活に興味があるのなら、うちを見に来ませんか」と言うチャンドラさんの笑顔に誘われて、中心部から30分ほど走った郊外にある彼の家に行った。
彼が言うように、周囲の家の中で最も質素なトタン造りの家だった。カンボジアの灼熱の太陽に焼かれて家の中はサウナだ。それでも土地代と合わせて4000ドル。結婚した翌年、全財産を叩いて建てた。
が、水道を引く資金まで回らず、大きな水かめを3つ買った。毎朝、水をもらうために近所の家の間を往復数十回する。飲み水にもシャワーにも用いるが、衛生面は決していいとは言えない。
「子どものためにも水道を引くことが今の目標。でも、今は毎日の生活だけで精一杯」チャンドラさんは5歳のスラッカーちゃんを抱きしめて大きなため息をつく。彼女は、やせて小さく3歳ほどにしか見えない。
「スラッカーが妻のお腹にいる時、貧乏で食べるものがほとんどなかったせいだと思う」
チャンドラさんのお父さんはポルポト派と闘う政府軍兵士。彼が1歳の時に戦闘で命を落とした。
「父が死んでから一層貧しくなり、母は餓死しました」と、チャンドラさんは淡々と語る。貧しい家庭の子どもの多くが修行僧になると聞いたことがある。
餓死と戦死で両親を失ったからこそ、自分のこの家族を大切にしたい。チャンドラさんは自分たちの食費を削ってでも、スラッカーちゃんを質のいい私立学校へ入れたいと思っている。
「この仕事?合っていないかもしれない。夢は、外国人相手のレストランかバーを経営すること。今もできればレストランで働きたいのだけど、学歴がないので雇ってもらえないんです。子どもにはそういう思いをさせたくない」
癖のない英語で淡々と話すチャンドラさんは、プノンペンの2日間専属ドライバーを引き受けてくれることになった。
本当に、戦争って、人を荒廃させる。人生を変える。死にたくないという恐怖心を利用して人を支配する、人間の残酷さ。そんな世界を変えていくものは何なのだろう・・。
そして、どんなに残酷で恐ろしいことがあっても、生きた人間には明日がくる、その厳しさ。チャンドラさんの人生に、祝福あれ!