見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

現役の市庁舎が観光収入になる北欧の都市

2007-07-27 22:34:55 | 旅の風景
ストックホルム市の大きな観光ポイントが「市庁舎」である。「旧市庁舎」ではない、現役の市庁舎。しかも、ガイド付見学に約1110円(60kr)を払う。滞在数日だけのストックホルム市財政に協力するのも…という躊躇もあったが、「ストックホルムに来たら、市庁舎は見る価値がある」と言う在住32年の高見さんの勧めに応じ、足を運んでみた。

見学ツアー時間45分。なるほどの「観光名所」だった。1923年に13年の月日と当時1800万kr(約3億円)をかけて完成した庁舎は、著名な建築家のこだわるイタリアルネッサンスのイメージを駆使した個性的なインテリアが満載、見応えたっぷりの豪華な庁舎だった。

毎年ノーベル賞受賞者のレセプションパーティを開催するという大ホールをはじめ、作家製作の家具とテキスタイルの置かれた議会場、1800万枚の金箔とガラスのモザイクで描かれた黄金の広間、1600年代のフランス製タペストリーが掛けられた結婚式ルーム…。古さを強調し、アンバランスの美を強調するために、古びたレンガや故意に壊したレンガを用い、異なる文様の柱を並べるなど、語るに尽くせない芸術家の遊び心たっぷりの芸術的試みが尽くされた建造物だ。しかも、現役の庁舎である。

毎日10回も設定されている見学料収入は市の大きな財源になっているに違いない。私が参加したひとつのスターでも英語とスウェーデン語で50人以上の参加者がいた。英語を含め、一日に8つの言語でガイドするように配慮されている。残念ながらアジア言語は中国語だったが。

当然だが「通常の市政業務を行っているので、ガイドから外れずルートに従って歩くように」との指示があり、職員の日常業務の場に近づくことはできなかった。これほどの重厚で豪華な庁舎の中で、市職員がどのように仕事をしているのかに興味があったのだが、前出の高見さんによると「多くの職員は市内各所の出先で住民対応の仕事をしているので、本庁舎にいる職員はわずかですよ」ということではあった。
それにしても、何世代も経て活用できる庁舎。商業的な動機に左右されず都市計画の専門家たちが何世紀もかけて造ってきた街にふさわしい庁舎に、北欧のリーダーとしての国家の強かさを見た。

*この後、北欧各地で庁舎のガイドツアーが開催されていることを知った。有料で見学する価値ある現役庁舎がそれほど多いということに驚く。
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