見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

難解さを易しく解く技 「リチャード三世」

2006-09-08 23:16:37 | 文化・映画・演劇・音楽
山崎清介脚本・演出による「リチャード三世」を観ました。
シンプルな舞台装置と想像力をかき立てる大胆な演出が魅力的な舞台でした。

叙情豊かに英国史を演じたのは、「子供から大人まで楽しめるシェイクスピア」をコンセプトに、シェイクスピア戯曲を公演している演劇集団「子供のためのシェイクスピアカンパニー」。
「長く難解と思われがちなシェイクスピア作品も、枝葉を刈り取り話の筋をしっかりみせれば子供たちにも必ずわかる」と演出の山崎清介は語っていますが、大人にとっても十二分に楽しめる創りになっていました。

手抜きのない真剣な演技と遊び心のある演出にどんどん惹きこまれ、わざとらしさのない笑い処では、観覧席からは子供たちの喜ぶ声が聞こえてきました。


「リチャード三世」は、大学時代の英国文学の講義テキストでした。古典英語特有の単語とシェイクスピアの独自の難解な表現に悩まされたことが、印象深く記憶に焼きついています。「A horse! a horse! my kingdom for a horse」の有名な台詞を含め、物語の全容とリチャードの気持ちに近づくことができず、以来、シェイクスピアの原文には近づかないようになりました。

研究結果や事業報告を、専門用語を散りばめながら難解な言葉回しで説明することは、実は簡単です。
難解な用語やカタカナ英語で聴衆を煙に撒けば、話の価値が上がると考えているかのような講師もいます。
一般市民や素人の方々を対象に、いかにわかり易い話ができるかに、その人の能力と人柄が現れます。

「中学生を目の前にしていると思って説明してみてください」と職員に頼むことが時々ありますが、誰を対象に話すのかの相手意識と、相手の思考についての想像力が、一般市民を対象にした語り手には必要だと改めて感じた「リチャード三世」でした。

英国史上稀に見る大悪人として名高いリチャード三世を、孤独で哀れむべき人物として描いた演出と演技は、最近の演劇の中でも心に残る逸品でした。




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