見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

カンボジアに見る支援のかたち(その2)

2007-06-12 14:11:38 | カンボジア
アンコールワット観光の拠点となるシュムリアップは、カンボジア最大の観光地。お洒落なバーやカフェが並び、クメール彫刻が玄関を飾る高級ホテルが林立し、大きなスーパーマーケットが建設途中で、物価は首都プノンペンを遥かに上回る。
が、それも中心の限られた一角の姿。ほんの少し離れるだけで、質素でインフラ整備が行き届かない庶民の日常生活がある。つい最近まで、内戦時代の地雷が畑のそこかしこに埋まっていたという地域だ。
               
安価で居心地の良い宿を探しながら砂埃の立つ道を歩いていると、軽快なクメール伝統楽器の音が道沿いの建物から聞こえてきた。
音に誘われて中に入ると、子どもたちが流れる汗をぬぐいながら厳しい踊りの指導を受けていた。
               
12,3歳の男女が魚籠とざるを持ち軽快なリズムで動く。農民漁民の若い男女のほのかな恋心を題材にした踊りのようだが、中年男性の指導者が男女の動きに厳しく注文をつける。が、子どもたちは、若い男女の心の機微を表現するコミカルで悩ましい動きがなかなか体得できずにいる。
               
微笑ましくて、稽古場を覗きながら思わず失笑すると、子どもたちの動きに注文をつけていたもう一人の老年の女性が気づいて笑顔で手招きした「ゆっくり参観していって」というように。

「チルドレンズ・ヴィレッジ」は、様々な事情でストリート・チルドレンとなった子どもたちの居場所だった。
毎週末に、クメール伝統舞踊の指導者が、子どもたちにアプサラ(天女の舞)をはじめとする伝統舞踊を教えている。ポルポトの時代に多くの舞踏家と指導者が抹殺され、残ったのは1割程度。その残った人たちがようやく、次の世代の舞踏家を育てることができるようになってきたという。
               
シュムリアップでは、アンコールワットのレリーフに刻まれたアプサラダンスを観光のひとつとして楽しませるレストランも少なくない。将来、優雅なアプサラやコミカルな民族踊りを職業とする子どもも出てくるだろう。
亜熱帯の暑さの中、子どもたちは流れる汗を腕で拭いながら、指導者の言葉に従って繰り返し稽古をし続けていた。
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